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理学・作業・言語聴覚療法室(リハビリ)

取り組み・特徴

1.急性期・早期リハビリテーションはなぜ大切?

当院は急性期総合病院であり、病気やけがの治療開始とともにすみやかにリハビリテーションを実施しています。急性期では、身体の動かしづらさ、痛み、気分のしんどさ、慣れない環境など、さまざまな要因によって、活動が制限されやすい状況になります。安静にする必要がなくなっても、生活が不活発な状態がつづくと身体やこころにさまざまな悪影響が出てきます。


たとえば、筋肉や体力が衰えるだけでなく、骨がもろくなり、心臓の機能や呼吸の機能も低下してしまいます。また、認知機能とよばれる記憶力も低下します。そればかりか、気持ちの落ち込みなど精神面にも悪影響を及ぼします。これらは、「廃用症候群」あるいは「生活不活発病」と呼ばれています。ですから、医師の指示のもと、なるべく早期から、活発に生活ができるように、理学療法・作業療法・言語聴覚療法を受けていただくことが重要と考えています。とはいえ、理学療法、作業療法、言語療法を早期から行う場合、入院直後は病気の状態が不安定な場合があります。医師や看護師など他職種と体の状態について情報交換し、ガイドラインなど科学的な根拠をもとに、健康を悪化させないように「リスク管理」を行い、活発な生活を取り戻せるように努めています。

 

2.様々な疾患に対する理学療法・作業療法・言語聴覚療法

理学療法・作業療法・言語聴覚療法は、さまざまな病気を患われた方に行われています。では、具体的にどのようなことが行われているのでしょう?その一部を紹介したいと思います。

 

①心臓リハビリテーションはなぜ大切?

心臓リハビリテーションとは、心筋梗塞・狭心症・慢性心不全、開心術後・大血管疾患、閉塞性動脈硬化症の患者さんに、運動を含めた生活習慣の見直しと改善をはかり、病気に対する正しい知識を得ることで再発を予防し、生活の質を上げるためのプログラムです。そのために、医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、理学療法士などの医療スタッフがチームを組み、患者さんの治療をサポートします。
 

心臓リハビリテーションでは、循環器疾患をお持ちの患者さんに運動の実施および指導を行っていますが、運動をすることだけが心臓リハビリテーションではありません。スムーズな社会復帰や疾患の再発および悪化を予防するため、運動療法のほか、食事療法や禁煙を含む生活習慣の改善にも取り組んでいきます。


その中で、理学療法士が行っている主なものが運動療法です。運動療法は、身体全体またはその一部を動かして、症状の軽減や機能の回復を目指す治療法で、持久力訓練(主運動)、筋力トレーニング、関節可動域訓練(ストレッチ)などが含まれており、以下のような効果が証明されています。

  • *心肺機能がよくなり、体力が改善します。
  • *筋力・体力がつくと、身体活動時にかかる心臓の負担が減ります。
  • *血栓ができにくくなり、冠動脈の再狭窄やバイパス閉塞を予防します。
  • *動脈硬化の進行をさまたげ、原因となる危険因子を改善します。
  • *自律神経が安定し、ストレスも解消します。
  • *不整脈が減ります。

では、どのような運動がよいのでしょうか?
運動の頻度は1回30~60分、週3~5回程度が理想的です。
運動の強さは、自分の能力の5~7割程度、つまり、やや息が切れ、軽く汗ばむ程度、「楽である」~「ややきつい」と感じる程度がよいとされています。

次に、さらに詳しい運動療法の進め方をご紹介させていただきます。

 

準備運動
運動を行う前に血圧・脈拍などを確認し、体調が万全かどうか評価します。その後に十分な準備運動(軽い運動やストレッチなど)を行い、急な運動における事故を予防します。

 

 

 

いよいよ運動を開始します。

 

 

持久力訓練(主運動)

歩行、軽いジョギング、自転車、水泳、エアロビクスなどのように、全身をリズミカルに動かす運動がよいとされています。これらの運動は、身体が酸素を取り込みながら行うことができるので「有酸素運動」(エアロビック・エクササイズ)と呼ばれています。逆に、重量挙げ、懸垂(けんすい)、腕立て伏せ、短距離全力疾走などは、酸素を取り込まずに行われるので「無酸素運動」と呼ばれ、心臓に負担をかけるので好ましくありません。

 

 

筋力トレーニング(レジスタンストレーニング)

筋力が低下している患者さんには筋力トレーニングを行うことで、運動能力の改善、より少ない生理・心理学的負担で身体活動をできるようになります。また、冠危険因子の改善に効果的であるといわれています。筋力トレーニングは、上肢は最大筋力の30~40%、下肢は50~60%の負荷で8~12回を1~2セット行うようにします。頻度は週に2~3回で改善がみられます。

 

呼吸筋トレーニング

呼吸筋トレーニングにより、吸気筋力の改善・持久力の改善に効果があるといわれています。必要な場合にトレーニングを導入するようにいたします。

 

バランス訓練や動作訓練

バランスが低下している患者さんにとって、バランスに対する訓練を行うことは、転倒予防になります。日常生活動作訓練も含め、必要な場合に行います。

 

整理体操

ゆっくりとした運動やストレッチなどの整理体操を行い、運動後の低血圧やめまいなどの事故を予防します。終了後に再度、血圧・脈拍等確認します。

 

<大切なこと>
  • ・具体的な運動処方(運動頻度・強さなど)は個人の条件によって異なりますので、医師の指示や理学療法士にご相談ください。
  • ・過度の運動は危険です。運動は正しく自分に合った方法で行うことが大切です。
  • ・長期間にわたって継続するようにしましょう。
  • ・運動療法は、理学療法士にご相談ください。

 

②がんのリハビリテーションはなぜ大切?

がんのリハビリテーションの目的
医療の進歩とともに、がんを患っても、治療により健康でいられる期間が長くなってきました。一方で、治療により体の体力が低下したり、不安な気持ちが続いたり、仕事を続けられなくなったり、生きる目的を失ってしまうなど、生活する能力や生活の質が低下してしまう場合が多いことがわかってきました。このような問題に対して、がんを患った方に対するリハビリテーションが注目されてきています。がんのリハビリテーションの目的は、生活する能力を維持し、生活の質の改善をはかるためにいろいろな職種がチームとして行うことです。では、私たちの部署ではどのような取り組みが行われているのでしょうか。その一部を紹介させていただきます。

 

理学療法士の役割

がんの治療には手術や化学療法、放射線治療などがあります。特に化学療法や放射線治療後には、身体の機能が低下したり、倦怠感や、気持ちの落ち込みや、不安が強くなったりすることがあります。理学療法士による運動トレーニングは、これら治療による副作用を軽減させ、身体機能を維持することに効果が示されています。

大切な点は、体が弱ってしまってから運動をしていては遅すぎるということです。体が弱くなってしまう前、つまり治療中やそれ以前からしっかりと体の状態を把握し、可能な範囲でしっかりと運動を行う事が大切です。なぜなら、一度落ちてしまった体力を回復させるには、かなりの努力と時間が必要だからです。

血液がんを患われ、化学療法や造血幹細胞移植をうける患者さんは、感染症を引きおこさないように、クリーンルームで過ごされる場合があります。そのような場合でも、エルゴメーターと呼ばれる自転車のような機械で、体に合わせた適切な有酸素運動や、筋力トレーニングの指導を行わせていただいています。

 

作業療法士の役割

がんの治療過程では、身体の機能の低下だけでなく、精神面の問題や生活のしづらさが現れることが分かっています。そのような場合には作業療法の出番です。

気持ちの落ち込みや不安は、生活を不活発にさせ、生活の質を低下させてしまうため、音楽や、呼吸法などのリラクゼーションが推奨されています。作業療法では、いろいろな手芸や工作、芸術活動を用いて、楽しみながら入院生活の活発化をはかっています。また薬の副作用で手の力が落ちてしまった場合には、手指の機能を高める練習を行うことや、退院後の生活を見越して、生活しやすい環境を整えたり、生活する方法の練習も行います。

 

③認知症のリハビリテーションはなぜ大切?

認知症のリハビリテーションとは

どなたでも年齢を重ねると、もの覚えが悪くなったり、人の名前が思い出せなくなったりします。しかし認知症は「老化によるもの忘れ」ではなく、何らかの病気によって脳の神経細胞が壊れるために起こる症状や状態です。認知症の原因はさまざまですが、最も多いのはアルツハイマー型認知症、次にレビー小体型認知症、血管性認知症です。また、認知症ではなくても、MCI(軽度認知障がい)と呼ばれる方も増えてきています。 日本における65歳以上の認知症有病率は2025年には5人に1人、2040年には4人に1人と推計されています。

また、病院という慣れない環境や、治療は認知症を有する方にとって、不安や混乱を招きやすく、それがBPSDという行動・心理症状(妄想・徘徊・抑うつ・興奮・暴力など)を引き起こし、治療を円滑に行えなくなっていまいます。このように、認知症を有する方は増加することが予測され、病院での入院生活が困難になる場合が多くなってきます。では、認知症やそれに伴うBPSDを予防していくためにはどうしたらよいでしょうか?

 

理学療法士の役割

認知症の予防には運動の習慣が大切でガイドラインでも推奨されています。また体の能力に変化を及ぼしますので、理学療法では適切な運動を処方させて頂き、転倒や体力の低下など二次的な障がいを予防していきます。

 

作業療法士の役割

認知症の症状であるBPSDには、なるべく入院前となるべく変わらない環境や生活リズムが大切です。作業療法では、入院前の生活やどんな活動を行っておられたかをお聞きし、体の状態にあわせて作業ができるようにします。具体的には、身の回りのことをうまく行えるよう、環境を整備したり、音楽やカラオケなどなど趣味の活動を支援したり、家事なども行います。このようにBPSDや記憶力の改善には音楽や馴染みのある大切な活動などの有効性が示唆されています。

 

言語療法士の役割

言語療法では、いろいろなテストを使って記憶力を調べたり、脳の働きを高める訓練を行ったりします。また認知症は飲み込む能力にも影響を及ぼすためその評価や訓練も行います。

 

認知症とケア

近年、認知症は「関わり方」によって症状が改善することが明らかになっており、パーソン・センタード・ケアやユマニチュードなどといった方法が提案されています。いずれも、その人らしさや、尊厳を大切にした「愛」のある関わりが大切であり、当法人の「愛の医療と福祉の実現」という理念とも一致しています。

認知症のリハビリテーションにはご家族様を含め、地域の方々の認知症に対する正しい理解や社会的なサポートが欠かせません。私達は、看護師などいろいろな専門職や、ご家族様と協力しながら、愛のあるリハビリテーションを実施していきたいと考えています。

 

④呼吸リハビリテーションはなぜ大切?

呼吸リハビリテーションの目的

呼吸は人間にとって非常に大事なものです。食べ物を1日とらなかったとしても、すぐさま大事には至りませんが、呼吸が数分できないだけでも、体に大きな影響を及ぼします。呼吸は鼻や口から取り入れた酸素を、肺を通して体の中に取り込み、逆に体の中の二酸化炭素を吐き出すことで「ガス交換」を行っています。酸素は体のエネルギーを作り出すために非常に大切です。では、呼吸リハビリテーションではどのようなことが行われているのでしょうか?

さまざまな病気によって呼吸することが、うまくできないと少し体を動かしただけでも、息切れがして十分な運動ができなくなってしまいます。そうすると、生活が不活発になり、ますます筋肉や体力が衰えるため、さらに生活が不活発になるという「悪循環」が生じます。そこで、呼吸リハビリテーションによって「息苦しさ」を解消し、不安や気持ちの落ち込みを防止し、活発で質の高い生活を取り戻すことが大切になってきます。

呼吸リハビリテーションは、いろいろな職種がチームで取り組みます。なぜなら、もちろん病気自体の治療や、お薬を使うことが大切ですが、それらと運動を組み合わせるとより効果があったり、栄養のことも考える必要があったり、「こころ」の問題も関係していたり、社会の制度を利用することも合わせて必要だったりするからです。また、近年では呼吸する力が低下しないように予防することや、病気が悪くならないように患者様自身が病気や体の知識をつけてもらって自主的に取り組んでもらうことも大切だと言われてきています。つまり、私達のパートナーであるみなさまもそのチームの一員というわけです。

 

理学療法士の役割

では、理学療法ではどのようなことが行われるのでしょうか。その一部分をご紹介します。

 

―― 胸郭を柔らかくします

息を上手にするためには、胸郭と言われる部分がうまく膨らむことが大切です。風船が硬いとうまく空気が入ってくれないようなものです。理学療法は、手でその動きを補助したり、首や胸の周りの筋肉や関節を柔らかくしたりすることによって呼吸をしやすくします。

 

―― 呼吸の仕方を指導します

皆さんは呼吸の仕方を意識したことはあるでしょうか?このような「呼吸の仕方」によって上手に体の中に酸素を取り込むことができます。例えば、肺の空気の通り道が狭くなってしまうご病気の場合は、口をすぼめて吐くことで効率よく息ができるようになります。また、腹式呼吸が良い場合もあります。また、動きにあわせてタイミングよく息を吐くことなども大切です。このように状態にあわせた適切な呼吸法を指導します。

 

―― 痰を吐き出しやすくする

痰があると、空気の通り道のじゃまをし、うまく「ガス交換」ができない場合があります。理学療法士は痰を吐き出しやすくするためにみじかく息を吐き出す「ハフィング」を行ったり、痰が吐き出しやすい姿勢を整えることを行います。

 

―― 筋力を鍛える方法を指導します

息苦しい状態が続くと、生活が不活発になり筋力が低下します。筋力が低下すると、動くためにより多くの「酸素」が必要になるという悪循環におちいります。そのため筋力を鍛えることは非常に大切です。呼吸の苦しくならない筋力訓練を指導します。

 

―― 適切な運動を指導します

息苦しい状態の時に、運動をするのは非常に難しいと思われるかもしれません。しかし、運動は「ガス交換」の効率を高めて生活を活発にしてくれる他にも、気持ちの落ち込みも減らし自信を高めてくれます。その場合、つらい運動をするわけではありません。「楽」「ちょっとしんどい」程度の運動が適切です。適切な運動の量を指導するのが理学療法士の得意なところです。

 

―― 起きたり、座ったり、立ったりを練習します

ご自身の力で呼吸ができない場合、「人工呼吸器」と呼ばれる機械が助けてくれます。このように機械が呼吸を助けてくれている間も、理学療法が必要です。なぜなら、寝ている姿勢や動かないことは、さらに呼吸する力を衰えさせ、痰を吐き出す力が減ってしまうからです。理学療法士は、体の状態に合わせて、医師や看護師、薬剤師、臨床工学技士などと協力し、座ったり、立ったり、自転車を漕いだりする練習を行います。人工呼吸器の助けが必要なくなってからも、すぐさま活動ができるように、治療の極めて速い段階から関わっています。

 

作業療法士の役割

では、作業療法は呼吸リハビリテーションでどのような役割を担うのでしょうか?

生活の行う作業の種類によって、必要なエネルギーは違います。座って行う活動よりも、立って歩くことが必要な作業のほうが、息切れがしやすいわけです。また、手を頭の上に上げたり、体を屈めたり、手を連続して曲げ伸ばしする作業でも息切れがしやすいと言われています。具体的には洗濯物や、掃除機がけなどの作業がそうです。作業療法では、どのような生活行為が難しくなり、どうすれば楽に上手に行えるようになるのかを一緒に見つけていきます。なぜなら、なるべく重要な活動をしっかりと行うことが体の能力を維持に非常に重要だからです。それと同時に、気持ちの落ち込みと体の衰えは相関関係にあることが示唆されています。息がくるしくなるとご自身にとって大切な活動ができなくなり、自信を失ってしまいます。そうするとますます動く機会が減ってしまう悪循環に陥ります。

このように、作業療法ではその方にとって重要な意味のある生活行為を経験してもらい、生活の方法を再学習してもらったり、自信を高めてもらったり、新たな楽しみを見つけてもらうことで、生活を活発にすることを目指します。作業療法士が関わることで、呼吸状態や生活の能力や死亡率が低下することも報告されています。

 

言語療法士の役割

言語療法士はどのように、関係しているのでしょうか?呼吸がうまくできない原因の一つには「誤嚥性肺炎」があります。飲み込んだ食べ物が上手に胃にはいらず、肺の方に入ってしまうことが原因の1つです。ですから誤嚥性肺炎を防ぐためには、食べ物が上手に飲み込めるかどうかが大切になってきす。

では、食べ物を上手に飲み込むためにはどうすればよいのでしょうか?

うまく食べられない原因にも様々です。まずは、その原因をしっかり調べることが大切です。例えば、食べるスピードや、一口量が原因の場合もあります。また、食べる環境が騒がしく気がそれて集中できないことも誤嚥の原因になります。入れ歯がうまく合ってないことで、しっかり噛めずムセてしまうこともあります。飲み込む筋肉や神経の反射が起こりにくいことで、気管に食べ物が入ってしまう場合もあります。そのような場合には、食事形態を変えたり、飲み物や食べ物にトロミをつけたり、食べる姿勢を変えたりすることで、安全に食事がとれるようにします。

また、呼吸状態が良くない時期には、食べること自体が負担になってしまいます。食べる量を調整し、高カロリー食品を利用し、短時間かつ少量で必要な栄養がとれるように工夫します。

 

⑤脳血管疾患のリハビリテーションはなぜ大切?

脳血管疾患のリハビリテーションの目的

脳は非常に複雑な器官です。脳は人間の生命維持、運動や感覚、言葉や判断したり記憶したりすることなどに関わっており、脳卒中などにより、脳にダメージを受けるとその場所によって、様々な問題が生じます。例えば、運動に関係する場所がダメージを受けると手足が動かしづらくなります。また言葉に関係する場所がダメージを受けると、言葉を理解したり話したりすることが困難になります。また口や喉の動きが悪くなり、食事をとる力が落ちてしまう場合もあります。では、このような脳の障がいに対してどのように理学療法、作業療法、言語聴覚療法は行われていくのでしょうか?

 

早期離床とリハビリテーション

脳卒中ガイドラインでは、なるべく早くからリハビリテーションを行うことが、機能回復や二次的な障がいを防ぐために重要だと言われています。しかも、その訓練量はなるべく多いほうがよいことが示唆されています。近年、脳がどのように働いているのかが、科学の進歩とともに明らかになってきました。脳の神経細胞が訓練や活動量によって「変化」することがわかってきたからです。 しかし、病気になってからすぐに活動や訓練をすると非常に難しいように思われます。そのため医師や看護師を含むさまざまな職種との連携を私達は非常に重要と考えています。なぜなら、病気が悪化しないかどうかを早くから見極めることができれば、より早期から訓練ができるからです。しかも、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が訓練した内容を、看護師が病棟の生活に活かすことができれば、より活動量を増え、機能が回復し、生活する能力が改善しやすいからです。

 

理学療法士の役割

理学療法では、早期から基本的な動作ができるように支援しています。具体的には、麻痺のある手足の動きを促したり、電気刺激を行い神経や筋肉が弱らないように配慮したり、装具などを活用して歩行練習などを行ったりします。

 

作業療法士の役割

作業療法では、生活で行うさまざまな活動を早期から行えるように支援しています。手足の麻痺や高次脳機能障がいによって、生活する能力が低下してしまいます。そのため、より安全に行える方法を練習したり、生活がしやすいように手すりを付けたり、車椅子の調整を行ったりします。また自助具といわれる道具を導入したりします。麻痺のある手を回復するためには、目的のある活動を繰り返す行う方法が推奨されており、難易度にあった作業を行っています。

 

言語聴覚士の役割

脳の言語領域が障がいされると、言葉がうまく使えなくなる状態になり、これを「失語症」といいます。「話す」「聞く」「読む」「書く」ことが難しくなります。言葉がまったくわからない外国へ放り出されたような状態と言えます。症状を評価し、個々に合わせた訓練プログラムを立案し、コミュニケーション能力の向上をはかります。

また、顔や舌の筋肉を動かすための神経が障がいされると、言葉がひずんだり、うまく発音がしづらくなります。このような状態を「構音障がい」といいます。このような場合には、口腔・顔面の体操をしたり、苦手な音を発音する練習を行います。また脳には注意力や記憶力、判断力のように複雑な情報を処理する能力があり、その機能がうまく働かない状態を高次脳機能障がいといいます。日常生活でも、障がい物に気が付かない、予定をこなせないなどの症状がでることがあり、安全に生活することを邪魔します。言語聴覚療法ではそれらの状態を調べ、訓練をすることも行っています。

 

脳卒中とこころの問題

また、脳にダメージを受けた後は体だけでなく、こころにも変化を与えます。これは「脳卒中後のうつ;PSD」といいますが、気持ちが落ち込むほうが多いと言われています。また、手足が動きにくい人ほどその傾向にあることが示唆されています。このように気持ちが落ち込むと生活する能力が低下してしまうので、こころの問題にも注意する必要があります。このような問題にはお薬も重要ですが、理学療法士による運動や、作業療法士による趣味活動の援助がガイドラインで推奨されており、これらにも積極的に取り組んでいます。

 

ミラーセラピーについて 

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⑥整形外科のリハビリテーションはなぜ大切?

整形疾患のリハビリテーションの目的

 

日本では高齢化が進んでいます。介護が必要になる要因には、転倒・骨折や関節疾患、脊髄損傷などの運動器疾患が2~3割を占めており、脳血管疾患や認知症よりも多いのです。ということは、骨折を予防し、関節の具合が悪くならないようにすることが、健康的な生活を続けるために大切なのです。このように運動器の障がいにより移動する機能が低下した状態を「ロコモティブシンドローム」と呼ばれています。

骨折の原因には骨粗鬆症といって骨がもろくなってしまうことと、転倒してしまうことなどがあります。骨折する前から、これらを予防することが大切です。骨を強くするためには、栄養も大切です。そして、適切な運動の習慣をつけ、活発な日常生活を送ることが、足の筋肉や骨を強くし、バランス能力が保たれるため大切です。

当院では骨や関節の疾患に対してもリハビリテーションを行っています。

 

理学療法士の役割

理学療法士は、関節や骨の形状、筋肉の場所など人間が動く時のバイオメカニクスに精通しています。手で身体や関節の動きを確かめて、上手く動きを誘導したり、問題点を評価したりすることが得意です。また、患部を温めたり、冷やしたりして痛みをとる物理的な治療法も用います。また、より痛みが少なく、安全で、効率的な動きを引き出すために、適切な動作の練習を指導させていただきます。いずれも、回復の状態にあわせて実施していきます。

 

作業療法士の役割

関節が曲がりにくいと、お布団で寝たり、お風呂に入ったりすることが難しくなります。また、足を骨折された場合、金属の関節に置き換える手術をされる場合もあります。そうすると、関節が外れてしまう可能性があるため、今まで生活していた方法を変える必要が出てきます。そのように日常の生活行為に介入するのが作業療法士です。必要があれば、関節を曲げずに物が取れる「リーチャー」という道具や、足を曲げずに靴下が履ける「ソックスエイド」と呼ばれる道具などを提案し、より安全に生活が送れるようにします。このように作業療法士は、痛みなくできるという経験を積んでもらい、生活を活発にしていきます。
 

また、大腿骨頚部骨折では、理学療法や作業療法は、歩行獲得を早め、術後6ヶ月の生存率を高めたという研究や、運動機能や生活の質を高めるという報告がなされており、入院中だけでなく退院後のリハビリテーションともに有効であるという科学的根拠が示されています。退院後も継続したリハビリテーションを受けていただくために、他職種連携もしっかりと行っています。

 

⑦痛みとリハビリテーションとの関係

慢性痛について

痛みというと、頭痛や歯の痛み、腰の痛みなどが思いつくと思います。痛みには薬を使うことが大切ですが、リハビリテーションとどのような関係があるのでしょう? 

痛みにはいろいろな分類がありますが、急性痛と慢性痛に分けられます。急性痛はケガや炎症などによって痛みの原因分質がでるために痛いのですが、慢性痛は原因がなくても痛みが残る場合を言います。原因が無い場合の痛みとはいったい何でしょう? 人間には、痛みを軽減させる回路が備わっていることが明らかになってきました。そして気持ちが落ち込んでしまうと、その働きが弱まり痛みを感じやすくなってしまいます。また、痛みのせいで身体を動かさないと、その動きに関係している脳の領域は変化し、より痛みを感じやすくなってしまいます。そのようにして、「動くと痛いのでじっとしている方がマシだ」と考えてしまうと、よけいに体が弱くなり、気持ちが落ち込み、脳が変化し、痛みが改善されないというわけです。もちろん、痛みを我慢して無理に動くのはいけません。そうではなく、「痛みなく動ける」という経験を積み重ねていくことが大切なのです。痛み無く動けることで自信がつき、生活が活発になっていきます。そうすると、体の力がつき、さらに自信が付いてきます。そうすると、脳の神経も活発になり、痛みにも良い影響を及ぼすというわけです。ただし、薬で適切にコントロールしていくことや、安静にしておかないと行けない痛みもあるので注意が必要です。

理学療法では、体の筋肉を鍛えたり、軟らかくしたり、温めたり、冷やしたりすることで痛みなく動けるように運動を調節していきます。作業療法では、痛みの起きない方法で生活ができるようにすることで、生活する自信を高めたり、活動する意欲を高めていくことで、痛みの軽減につなげていきます。このように、リハビリテーションを通じて、痛みとの向き合い方を変えていただくことが、健康的な生活を取り戻すことに大切なのです。

 

⑧転倒を防ごう!

介護が必要になる要因には、転倒・骨折や関節疾患、脊髄損傷などの運動器疾患が2~3割を占めており、要介護状態にならないためには、転倒を予防することが大切です。しかし、人間は生きている以上、ケガをするリスクは0にはできません。しかし、適切な取り組みを行えば、その可能性を20~30%低下させることが明らかになっています。転倒に関連する要素には以下のものがあります。

  • ①年齢
    特に80歳を超えると転倒のリスクが高くなるので、環境や体の機能に注意が必要です。
  • ②転倒歴
    過去1年間で転倒したことがあると、その後1年間で転倒するリスクが2.8倍になります。
  • ③視力
    新聞の字が読めないと転倒リスクは2倍、4m先の人の顔を判別できないと1.6倍に増えます。
  • ④薬剤の副作用
    睡眠薬 抗不安薬 抗うつ薬、降圧剤を服用している場合は注意が必要です。
  • ⑤認知、心理機能
    認知症がある人、うつのある人は転倒しやすくなると言われています。
  • ⑥筋力
    足の筋肉が弱いほど転倒しやすくなります。
  • ⑦関節の曲がりやすさ
    股関節、膝関節、足関節が硬いとバランスが悪くなり転倒しやすくなります。
  • ⑧環境
    転倒の3~5割を占めています。段差や滑りやすい床、手すりの有無に注意が必要です。スリッパよりも靴の方が転倒リスクも低下します。

理学療法によって足の力を鍛えて、関節をしなやかにし、バランスを高める訓練をすることで、転倒の可能性をへらすことができます。また、記憶力や注意力といった能力も転倒には影響をしています。言語療法では、それら脳の働きを適切に評価し、訓練をすることで転倒のリスクを減らすことができます。

環境は、転倒の30~50%に関与していると言われています。床や照明を適切な状態に修正したり、障がい物や段差を解消したりすることで予防ができます。作業療法では、どのような環境であれば安全に活動ができるのか、作業を行い評価をしたり、環境を整えることで転倒のリスクを減らしています。また、気持ちの落ち込みも転倒リスクを高めるのです。作業を行うことで通じて気持ちを元気にすることも行っています。

このように生活環境を整えることが、転倒予防にはとても大切なのです。当院では、退院される前にスタッフがご自宅に伺い、環境や生活のアドバイスを行う「退院前訪問」も積極的に行っています。また、入院中の療養生活においても、ベッド柵や歩行器などを工夫し転倒しにくい環境を整えてきます。作業療法士が環境調整を行うことで、転倒のリスクが軽減するという研究も報告されています。

 

3.改善活動(QC活動)

QC(Quality Control)サークル活動は、職場の第一線で働く人々が継続的に製品・サービス・仕事などの質の管理・改善を行うことです。よりよいリハビリテーションを実施するために、毎年テーマを決め、サークル活動を行っています。

 

平成29年度 カルテ業務の効率化とワークライフバランスの改善

カルテ業務の効率を向上させることで、カルテ記載内容を充実させながらも仕事にかかる時間を減らすことに挑戦しました。

 

平成28年度 看護とリハ専門職の連携強化

看護部がみて、患者さんのADL向上や転倒のリスクを軽減させるための有益な情報伝達の方法について改善に取り組みました。

 

平成27年度 入院時訪問指導のシステムの確立

回復期リハビリテーション病棟において、患者さん個別の生活環境や習慣、価値観に応じた効果的な訓練ができるように、入院時訪問のシステムを確立させる取り組みを行いました。

 

平成26年度 リハビリテーションの見える化

リハビリテーションを受けられる患者さんが、リハビリを行う意義や方法について理解していただきやすいように、パンフレットや掲示板の改良を行いました。

 

平成25年度 自主トレーニングのパンフレット作成

ご自宅に退院されてからも、効果的な自主トレーニングができるように、パンフレットを作成する取り組みを行いました。

 

平成24年度 十分な訓練量を確保するための代診システムの構築

担当セラピストが休みの日でも、他のセラピストが代わりに訓練を行うための、効率的なシステムを開発し、患者さんが受けられる訓練量の向上に挑戦しました。

 

4.教育・安全

キャリアパス

当院を含め、当法人の全てのリハ関連職を対象とした教育システムを運用中です。スタッフが主体的に参加でき、平等で有意義な教育機会を経験できるようなシステムを目指しています。新人教育カリキュラム、法人リハ部門研究・研修グループ、法人本部主導の社会人研修などによって、積極的にキャリアアップに取り組める環境を作りたいと考えています。

 

新人教育

当院を含め、当法人では、4つの病院、3つの介護老人保健施設、3つの介護老人福祉施設で、平成28年4月現在、121名のPT、70名のOT、30名のSTが働いています。 新卒のスタッフに対し、約2ヵ月のカリキュラムを組んで法人施設合同の新人研修を実施しています。

 

法人リハ部門 研究(勉強会)グループ

法人リハ部門として、施設・職種横断的な研究・勉強会グループを立ち上げ、専門分野の知識・技術の習得をめざします。 平成28年3月現在、10グループが存在し、グループごとに活動をすすめ、年3回の全体研修で数グループずつ活動成果を発表します。 研究(勉強会)グループへの参加は経験2年目からとし、活動可能であれば複数グループへの参加も可能です。参加するグループの選択は自由(個人責任)としています。

 

安全

それぞれのセラピストが関わった事象を、電子媒体を活用し、部署全体で共有できるシステムを利用しています。それをもとに毎月、セラピスト全員でカンファレンスを実施し、安全な理学療法・作業療法・言語聴覚療法の実施につなげています。分析にはRCA分析を採用しており、事象の真因を分析することで、業務改善に部署全体で努めています。また日頃からセラピストのリスクセンスを向上させることが、安全な理学療法・作業療法・言語聴覚療法の実施には重要です。そのための取り組みとしてeラーニングや、シミュレーションを通した勉強会の開催を行っています。

事例検討会、伝達講習

理学療法室、作業療法室、言語聴覚療法室それぞれ月1回、事例検討会を実施しています。また、学会や講習会の伝達講習も積極的に実施しています。さらに、それぞれの専門職合同での事例検討会も実施しています。セラピスト1人だけでは得られない、幅広い視点を共有したり、異なる専門職の共働や相乗効果が得られるように努力しています。

 

5.地域・他職種連携

・地域連携パス
・多職種カンファレンスの実施
・委員会への参加

院内の各種ワーキングチームや委員会にも参加し、リハビリテーション専門職として、役割の一端を担っています。

安全対策ワーキングチーム

部署内医療安全に関する対策を検討、各スタッフへの周知、院内各部パトロールなどに参加しています。

 

感染管理ワーキングチーム

部署内感染管理に関する対策を検討、各スタッフへの周知を実施しています。

 

がん診療運営委員会

がん診療運営における総合的な対策の検討に参加しています。

 

緩和ワーキングチーム

緩和医療に関する諸事情について検討。対象者への回診に同行し、疼痛緩和やポジショニング、運動などについて助言しています。

 

褥瘡委員会

褥瘡管理に関する諸事項を検討。褥瘡発生者対象の回診に同行し、エアマットや車椅子クッション選定、ポジショニングなどについて助言しています。

 

NSTワーキングチーム

栄養管理に関する諸事項を検討。回診に同行し、摂食状況を言語聴覚士の立場から他スタッフに伝達しています。

 

嚥下ワーキングチーム

嚥下管理に関する諸事項を検討。現在、誤嚥性肺炎予防のため口腔ケアマニュアルを作成しています。

 

呼吸器ワーキングチーム

呼吸器管理に関する諸事項を検討。人工呼吸器装着者対象の回診に同行し、体位変換やポジショニングなどについて助言しています。

 

排尿ケア委員会

排尿ケアとは、下部尿路機能障害を有する患者さんに対して、病棟でのケアや他職種チームの介入による下部尿路機能の回復のための包括的排尿ケアのことです。排泄に関わる動作や生活習慣について助言しています。

 

認知症ケア委員会

認知症のある患者さんの生活が制限されないように配慮し、より早く住み慣れたお住まいに帰れるように関わっています。

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