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理学・作業・言語聴覚療法室(リハビリ)

作業療法士の役割

作業療法士Occupational Therapist(OT)は、その人にとって意味のある作業(生活行為)ができるようにすることで健康で心穏やかな生活を送れるようにする専門家です。しかし作業といわれても、なかなかピンとこないのではないでしょうか?まず、OTの簡単な歴史を紹介したいと思います。

<作業療法の歴史>

 古代ギリシャの時代より、人間がさまざまな「作業」を行うことが治療になることが発見されて、利用されてきました。作業療法の源流となったのが、18世紀のフランスで精神科の医師であるピネルが行った、「道徳療法」という治療法です。彼は、鎖で繋がれていた精神科の患者さんの鎖を解き放ち、「作業」をさせました。音楽を聞いたり、演奏したり、農作業をしたり、物をつくったりさせたのです。そうすると精神症状が落ちついていきました。そのような作業を用いた人道的な治療が作業療法の原型になりました。

 その後、第一次、第二次世界対戦で身体に障がいを負った兵士の治療のために作業がもちいられるようになりました。このように精神の問題だけでなく身体の問題にも作業療法が用いられるようになりました。

 このように作業をすると患者さんが健康になることを発見していた、アメリカの精神科医、整形外科の看護師、芸術家、建築家、ソーシャルワーカー、元結核患者さんが集まり、作業をすることを治療にする専門家である「作業療法士」という専門職を作ることになりました。では、作業(Occupation)とは何で、どうして効果があるのでしょう?

 

作業と健康との関係

作業とは私たちが毎日の生活で行っているいろいろな活動(生活行為)のことで、諸説ありますが、大まかに「身の回りのこと」「働いたり、何かを生み出したりすること」「楽しむこと」「休むこと」から構成されています。

  • 身の回りのこと
    食事、身だしなみ、着替え、排泄、お風呂に入ることなど
  • 働いたり何かを生み出したりすること
    調理、洗濯、買い物、仕事、ボランティア活動など
  • 楽しむこと
    温泉、音楽、カラオケなどいわゆる趣味のこと
  • 休むこと
    睡眠、ぼんやりすること、瞑想、マッサージなど

健康で心安らかな生活のためには入院中であってもこれら作業が「よい具合」で行えている必要があります。作業が健康に及ぼす影響は、私たちの体に置き換えてみると良く分かります。

「身の回りのこと」をすることは大切ですが、週7日、朝から夜まで身の回りのことだけをしていると、なんのために生きているのかな?と気持ちが落ち込んでくるはずです。ですから自分の能力を発揮して、誰かの役にたっているいう感覚を生み出すために「働いたり、何かを生み出すこと」も必要です。しかし、週7日働いてばかりだと、うつになり、過労死してしまいます。かならず「休むこと」が必要です。かといって、「休むこと」が多すぎると、筋肉や体のあちらこちらが衰えてきてしまいます。

働いて休んでの繰り返しの生活もつらいものがあります。ときどき「楽しむこと」が必要です。

このように、私たちの24時間365日続いている、生活の中の作業(生活行為)が「よい具合」に行えていることが、私たちの健康やこころに重要な要素であることがおわかりいただけると思います。それができていない状態を「作業機能障がい」と呼ばれています。このように作業機能障がいと健康には関係があることが明らかになっています。

 

作業が私たちの生活を活発にしています

みなさんが外に出かけ、身体を動かす目的はなんでしょうか?たとえば「買い物」という作業を考えてみましょう。買い物という作業のおかげで、スーパーまで歩くという「運動」になります。また何を買おうかとワクワクすれば「楽しみ」となります。この材料で何をつくろうかしら?と考えれば「頭のトレーニング」になっています。包丁で皮をむき、切ることで握る力や指先の感覚が衰えずに済みます。そして買い物にでかけることで、友人と会話をして楽しんだりすることにもなります。また「買い物に出かけないといけない」という役割があるおかげで、朝に身支度をし、決まった時間に起きる習慣がでます。外に出かけることで、体内時計が修正されて、夜眠りやすくなります。夜眠りやすくなれば免疫力も高まり、転倒しづらくなり、気持ちも落ち込みにくくなります。作業があるおかげで、私たちの生活は習慣化されて、体の健康状態にもよい影響を与えています。しかし、年齢を重ねたり身体を動かしづらくなると、ますますこのような作業を行う機会が失われてしまうのです。このように、私たちの生活を組み立てて活発にしてくれる要素には「作業」が大きく関わっています。

 

作業と学習との関係

小学校や中学校などでも教科書を覚えるだけでなく、実際に工作や音楽、動物や植物の飼育、体操、料理などさまざまな作業が教育に用いられています。作業をすることで、技能が高まりますし、それに関する知識も身につけることができます。また、自分はこれくらいできるという自信や、自分はこういうのが得意だということ発見することに繋がります。作業をすることは実際に生活していく力を付けるために大切な要素の一つと言えます。

 

大切な作業は人によって違う

作業とは私たちが、「できるようになりたいこと」、「できる必要があること」、「できることが期待されていること」です。そして、それはひとりひとり違います。例えば、「楽しむこと」であっても、人によっては、コンサートにいくことかもしれませんし、日曜大工をすることかもしれません。しかも、やり方もひとりひとり異なります。食事でも、こたつに座って召し上がられる方、テーブルで椅子に座って召し上がられる方もいるでしょう。こたつに座って召し上がられる方は、床にすわって食べる練習をする必要があります。このように作業療法では習慣や価値観、興味のあること、生活環境のような個別性を大切にして行っています。

 

なぜ作業ができなくなるのか

作業ができない原因も様々です。体が動かないだけでなく、気持ちが落ち込んでしまったり、それを行う「意味」を失ってしまったり、できる環境がなかったりしてもうまく作業ができません。あるいは、他のことが忙しすぎて、行う時間がない、他の人に「そんなことやってなんの意味があるの?やっちゃだめ」と認められていないことが原因の場合もあります。このように原因を考えながら、意味のある活動ができるようにしています。

 

作業療法が行うこと

体や脳の働きを良くするために作業を用います

麻痺した手を回復させるためには、目的のある活動を難易度に合わせて繰り返し練習する方法が推奨されています。また認知症のある方には、もともと大切にしていた活動をすると記憶力が改善するという報告もあります。このように作業を行うことで身体や脳の機能回復をはかっています。

 

作業を行う技能を高めるために作業を用います

例えば、野球やサッカーのスポーツでも、筋トレや柔軟体操は非常に重要ですが、それだけでは技能は高まりません。技能を高めるためには繰り返しできるようになりたい作業を練習する必要があります。作業療法では身の回りのことや、家事や仕事に関係する作業を繰り返し練習し、安全に効率よく行う技能を高めます。

また、自宅に帰ってどのくらい上手に生活ができるのか?を確認するためにはどうすればよいでしょう。そのためには、できる限り実際の自宅に近い環境で、同じようなシチュエーションで確認することが必要です。このように技能を確認するために作業を行う場合もあります。

 

不安や抑うつなど「こころ」の問題に作業を用いて解決します

病気を患うと気持ちの落ち込みがみられることがあることが分かっています。また慣れない環境や、苦痛によって強いストレスを受けることがあります。これら「こころ」の問題は体にも影響を及ぼすことが示唆されています。これらに対しては適切なストレスへの対処法が行えていることが健康に大切です。作業療法では、楽しみやこころが安らぐ活動をもちいてこれらの問題に対処します。

また、なにもせずに1時間椅子に座っているのは苦痛ですが、音楽、手芸など好きなことをして過ごすと、あっという間に時間が過ぎてしまうものです。このように作業を上手く使うことで、起きて動きたいという意欲を高めることもできます。

 

福祉用具や自助具の様に環境を変えることで作業をできるようにします

できないと思われていることも、環境を変えることで解決できる場合が少なくありません。たとえば、手が届かなくても「リーチャー」と呼ばれている「福祉用具」を用いれば、腰を痛めず物を取ることができるようになります。既成品でなくても、「自助具」と呼ばれる道具を自作することも作業療法士は得意です。

また、ベッドの上で過ごすことが多いと「床ずれ」ができてしまいます。当院では看護師と連携し、どのような姿勢やマットで、どのようなクッションを使えば床ずれを予防できるのかという部分にも対応しています。

このように福祉用具や自助具をうまく適応することも行います。必要があれば、ご自宅に訪問し、安全で活発に生活するための環境について患者さんと一緒に検討することも行います。

 

作業療法士は、さまざまな原因で生活の中の意味のある活動(作業)ができていない方に対して、生活の中で重要な作業を実際にできるようにすることで、健康で心穏やかな生活を目指しています。

 

 

当院の作業療法の特徴

 

根拠に基づく作業療法の実践;Evidence-Based Occupational Therapy

作業療法の知見は日々進化しています。ガイドラインや最新の知見を取り入れながら常に最良の作業療法を行えるように、Evidence(根拠)に基づく作業療法を意識しています。

 

作業に根ざした実践;Occupation-Based Practice

作業に根ざした作業療法を行っています。作業に根ざすとは、身の回りのこと、生産的活動、余暇、休息といった具体的な活動を評価し、直接介入をしていく方法です。例えば、料理が上手くできるのか?どんなところが危険なのかは、記憶力や筋力を調べるだけではわかりません。実際に行う場所で、実際に行う方法で、実際に行ってもらうことが必要と考えます。洗濯物や調理、趣味など実際に作業を「経験」してもらうことで、ご自身の生活する力を正しく認識し、自信をもって、これからの生活をイメージしてもらいやすくなります。そのために、できる限り実際に作業が経験できる環境を整えていくことを意識しています。また、作業療法にはMOHO、OTIPMなどさまざまな理論が存在し、それらを活用しています。

当室では、AMPSと呼ばれる作業療法の評価法を採用しています。AMPSとは約20万人のデータに基づき国際的に標準化された観察型のADL/IADL評価法で、どの程度上手に生活できるのかを、統計学的に数値化できる評価法で専門的な資格が必要で、当院では5名のAMPS認定評価者がいます。AMPSでは実際に、お味噌汁を作る、パンにバターをぬる、食器を洗って乾かす、服を着替えるなどの作業を実際に行ってもらい、資格をもった作業療法士が観察し、点数化します。これにより、自宅で1人で生活できる能力があるか?以前よりも生活する能力が向上しているのか?を数字を用いて客観的に評価し、訓練や退院の判断に活かすことができます。

 

こころとからだのリハビリテーション

こころとからだは、関係していることが分かっています。例えば脳卒中を患ったり、がんの治療により、気持ちが落ち込んだり、不安が強くなることがあることが分かっています。こころが元気でないと、いろんな訓練をがんばることが難しいのです。これら、こころの問題にも、作業療法をとおして貢献していきたいと考えています。

 

他職種連携・生活行為向上マネジメント(MTDLP)

作業療法の場面で、うまく作業ができていても意味がありません。病棟での生活や、退院なさってからもずっと健康で自分らしく生活できるためには、「こういうことができるようになりたい」という目標を、皆で共有し、協力できていることが理想と考えています。日本作業療法士協会が開発した生活行為向上マネジメントシート(MTDLP)というツールを活用し、新人教育に役立てています。

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