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医学書 ブックレビュー

No.220

日野原重明ダイアローグ

日野原重明  医学書院(定価2200円+税、2012年10月初版)

 医学書院が発行する「医学会新聞」通巻3000号を記念して過去の日野原先生の対談等11本を収録した書籍。 普通であれば、書籍、講演会、テレビなどどこかで姿を見て、声を聴いて誰しもが出会っているはずである。 年齢が100歳を超えられているという点がすぐ話題になるが、オスラーを日本に紹介した功績、POSの普及、医学教育への熱意、医学そのものへの提言など、足跡は巨大である。 通読してもどこかで知っている感のなる話なのは、逆にうれしくなる。話される対象は、他に武見太郎先生、福井次矢先生、川島みどり先生など、すごいという一言につきる。 日野原先生のお話を聞きながら、医学生から現在に至るという現役の医師も多いのではないか。そう思えてしまうある種日本の巨人である。内容評価は 、 値段は 。 よく神様と例えられるが、まさにしかりで、透明感のある、それでいて存在感がゆきわたる感覚にとらわれる。批評のしようのない一冊です。お勧め度は、 とします。

Nov27.2012(N)

No.219

大いなる看取り

中村智志  新潮文庫(定価590円+税、2010年1月初版)

 東京の山谷のドヤ街にある「きぼうのいえ」という施設にかかわるひとびとを描いたノンフィクションの一冊。施設とはホスピスである。 ホストは著者である中村氏であるが、主人公は施設長である山本氏。「ドヤ街のマザー・テレサ」を目指して創設された、といえば趣旨はそれでわかるというもの。 それ以上に医師でない山本氏のそれまでの経歴が胸にきます。話としては、あとがきで紹介されているホームレスの上村さんとのふれあいがこころに沁みます。 やはり山谷だからでしょうか。いつもの「ホスピス」ですが、場所によっては違った「ホスピス」でも良い気がします。 内容評価は 、 値段は 。 「死にゆく人とともに歩む」というドイツの言葉を紹介される上智大学のデーケン教授による疼痛緩和ケアなどの「doing」だけではなく「being」、 心暖まる人がともにいるということが大変大切、というメッセージに返す言葉がありません。お勧め度は、 とします。

Nov26.2012(N)

No.218

裁判官が日本を滅ぼす

門田隆将  新潮文庫(定価590円+税、2005年11月初版)

 出版されて10年近くなり文庫化され7年になる医療裁判関係として購入した一冊。 実は新品として探していたがなかなか入手できず、オンラインショップでも絶版扱いで古本しかいないと半分あきらめていたが、 偶然町中の小さい本屋さんで見つけました。小さい本屋さんも捨てたものではないですね。 ある医師が自分の所属していた病院を訴えて最終的には敗訴した本文第五章を読みたくてですが、訴える側からの視点で裁判所、裁判官を見るとこういう見方になりますね、 と納得します。医師と同じ聖職の一つである裁判官でも正義があっても必ずしも公平が有るわけではないと知る訳ですが、医師はどうかというとこれも厳しいかもしれません。 内容評価は 、 値段は 。 苦労した割にはあっさり読めましたが、やはり内容が少し古くなっている感があり、 そういえば最近10年間でも大野事件含め医療裁判関係でいろいろあったと思い出されます。お勧め度は、 とします。

Nov25.2012(N)

No.217

症候と疾患から迫る!ERの感染症診療

大野博司 編  羊土社(定価5500円+税、2012年11月初版)

 羊土社レジデントノート別冊として出ている「救急・ERノート」シリーズの最新刊6冊目。 同じようなスタイルの雑誌、ムックは羊土社からでもレジデントノート本体、増刊号、そしてこのシリーズがあり、他にも文光堂のシリーズ、 日本医事新報社の「名医」シリーズなど現在多種ある。その中でも今回は編者の大野先生の好みがはっきりと出た一冊。 特徴は分担執筆者のリストを見れば一目瞭然であり、また、共著にもかかわらず、隅々まで大野先生の目が行き届いていることがわかる。 いわば、大野先生の労作といった書籍である。テキストとして読むのも良し、若手から中堅の現場の意志、高みとして読むのも良しでしょう。 内容評価は 、 値段は 。 ERないし初期診療における感染症を学ぶにはうってつけの書籍。参考文献を含めるとしっかり勉強できそうです。 ただ、お勧め度は同僚も執筆しているため公平を期し★ひとつ減らしておきます。お勧め度は、 とします。

Nov24.2012(N)

No.216

すらすら読める方丈記

中野孝次  講談社文庫(定価476円+税、2012年10月初版)

 10年前の単行本の文庫化。著者は出版の翌年に亡くなっている。本自体は、方丈記そのものを著者の工夫でよみやすくしているのが主題であるが、 現代人である当方には読み下し文とはいっても、すんなりとリズム感よく頭には入ってこない。 源平争乱期を生きた鴨長明が体験した途方もない災害についても原文であるが、東日本大震災の後に読まれることが多く、文庫化されたと推察される。 正直、原文がこれほどの短文であったことを驚きで再確認した。 古典の内容を語れるほど学問的素養なく、興味本位で購入するも内容はやはり当たり前であるが「古典」であり、覚悟して読まれたい。 内容評価は 、 値段は 。 同じ著者の「清貧の思想」をハードカバーで購入した時代をなぜか思い出しました。やはり、雰囲気のみで読んだ記憶です。お勧め度は、 とします。

Nov23.2012(N)

No.215

リスクのモノサシ

中谷内一也  NHKブックス(定価970円+税、2006年7月初版)

 安全と安心について読み進めている中の一冊。本書は最近多くの著書を送り出している中谷内先生の6年前の本である。 内容はメディアが発信する大量の氾濫する情報の中から自分自身が必要なものをどのようにして取り出しリスクの評価に繋げ、安心を得るために利用できるか、 についても示唆に富むものである。ただ、いろんなリスク心理学、社会心理学的な手法を用いても簡単な答えはなさそうである。 ダイオキシン、鳥インフルエンザ、狂牛病と一連の報道とそれに対する市民の反応が順次描かれているが、本当に難しい問題である。 リスク認知の二因子が「恐ろしさ」と「未知性」として紹介されており、結局は事実、現実としてのリスク(安全)とそれに対する感情(安心)との解離は避けようがないのでは、 と思ってしまうのは早計なのでしょうか。 内容評価は 、 値段は 。 さまざまのリスクの一覧を数値で見て、癌(250)と交通事故(9.0)と落雷(0.002)を比較して自分の感覚との差を冷静にみてしまいます。お勧め度は、 とします。

Nov22.2012(N)

No.214

食欲の科学

櫻井 武  講談社ブルーバックス(定価820円+税、2012年10月初版)

 15年ほど前にオレキシンを発見した櫻井先生のブルーバックスの一冊。 本書は副題である「食べるだけでは満たされない絶妙で皮肉なしくみ」として食欲と体重について、レプチンについて、そして、 食欲の制御が薬剤や手術にて可能なのかを扱っている。 詳細は本文を読まれたいが、一時肥満などの問題がレプチンの発見で全てが解決される幻想を抱いていた方も多かった気がするが、 やはり「幻想」と言ってよかったのかが述べられている。 一番興味が持たれるのは食欲の制御、特に薬剤についての可能性であるが、最終章である8章で簡単に扱われており、誤解を避けようと苦労されているように見える。 肥満やメタボリックシンドロームについての対策が食欲を如何に抑えるかに焦点が移ってきている現在、食欲の人為的コントロール手段である薬剤に期待されるものが多い。 ただ、現時点で薬剤として扱えるのはマジンドールだけという厳しい現実があり、胃、脳の外科的手段とあわせ今後に期待するしかない。 内容評価は 、 値段は 。 知っていそうな情報を最新に置き換える一冊。生理学まで含めた生涯教育は難しいものです。お勧め度は、 とします。

Nov21.2012(N)

No.213

看護の力

川嶋みどり  岩波新書(定価720円+税、2012年10月初版)

 80歳を超えても全国を飛び回り、エネルギーのかたまりのような活動を続けておられる川嶋先生の一冊。 講演会を聞くと、なぜか100歳を超えられた日野原先生を思い出しました。 川嶋先生は現在でも東日本大震災に関連して東北地方の看護・介護体制の再構築に尽力されており、頭の下がる思いです。 本書は、いつも「川嶋節」で、ナイチンゲール精神から始まり、看護の原点の確認、ケアの意味、 自然治癒力を高める上での看護の役割などがひとつのストーリーとして述べられています。あっと言う間の一冊です。 やはり自分の経験からの主張を自分の言葉で書いた書籍は心に伝わるものが違う気がします。 内容評価は 、 値段は 。 「あとがきに代えて」として書かれた最後のページに「看護師特定能力認証制度」について著者自身の考えが明確に記されています。 そういった単純明快の生き方が川嶋先生らしい気がして、本当にうれしい気持ちになれます。お勧め度は、 とします。

Nov20.2012(N)

No.212

物語 哲学の歴史

伊藤邦武  中公新書(定価900円+税、2012年10月初版)

 古代、中世、現在までの約3000年にわたる哲学史を、哲学の歴史(ヒストリー)として扱い、ひとつの物語(ストーリー)として読み解こうとした中公新書の一冊。 そういえば中公新書も創刊50周年を迎えるようで以前以上にラインナップが充実しているような気がする。 本書を購入したのは、ここにプラトンの時代から読もうとしても大きな流れが解らずシャドウボクシングのような読書になっていたため、 哲学の長い歴史の中にどのような運動があったかが書かれている気がしたためである。 個々の哲学者がなにを言おうとしたかは別として、著者が述べているように「哲学はそもそも知的探求であるのか、学問的探求であるのか」 などと疑問に思うような頭は当方持ち合わせていないのである。 そして、本書の第四章「生命の哲学—二一世紀に向けて」という章立てに惹かれたからである。 ただ、読んでみると実は「生」を扱っていて「生命」について述べている訳ではないのでがっかりしましたが。 内容評価は 、 値段は 。 結局、やはり難しい、といういつもの感想に落ち着く。 いつまでたっても賢くならない頭を嘆きながら、多分次も同じような本を買って同じような感想を愚痴っているような気がします。お勧め度は、 とします。

Nov19.2012(N)

No.211

脳からみた認知症

伊古田俊夫  講談社ブルーバックス(定価900円+税、2012年10月初版)

 これもまた最近はやりの認知症についてのブルーバックス。と思って購入したが、かなり著者の個人的な意見が明確にかかれており、楽しく読める一冊である。 臨床的な意味での疫学、病因論、症候学等はどうしても通り一辺倒にならざるを得ないが、現実の認知症のありようの解説や治療、予防についての考えは、 個人の好みがよく出てくる疾患かと思われ、その意味では特に治療としてのリハビリテーションを著者は強調している。 具体的には、日常生活に適切な運動を取り入れ、生活習慣病の治療をしっかり行い、知的余暇活動や社会的な活動に可能な限り参加し、そして最後に睡眠を大切にする。 そういった脳、頭のリハビリテーションを大切にして生きていきましょうと理解される本である。 内容評価は 、 値段は 。 どうしても難しくなりがちな内容をうまくかみ砕き解りやすく伝えようとする姿勢は評価でき、現場を知っていないと書けない事柄が散りばめられ、一気に読了できます。お勧め度は、 とします。

Nov18.2012(N)

No.210

杜甫

川合康三  岩波新書(定価800円+税、2012年10月初版)

 最近、漢詩についての本がよく目に付く。杜甫や李白の本が中心ですが、なぜか解らない。多分、杜甫は生誕1300年らしく、そのためかも知れない。 その内でも本書は、名門に生まれながら貧困の中を生き、漂泊の旅を続けた杜甫についての岩波新書の一冊。 実際に漢詩そのものを紹介できるほどのものを自身はもたないので、杜甫の生き方を学ぶ程度の読み方になってしまった。 生前に名がなくとも、死後に評価と高めた文学者の1人である。スタンダールなどがそれに当たるそうであるが、そこまでの蘊蓄もない。 その時点で無名の詩人による作品がなぜ大量に現在残っているか。その一部の答えは、杜甫自身による強烈な自意識の結果によるものと解されている。 やはり、自分の足跡を残そうとする努力は必要ということか。 内容評価は 、 値段は 。 生前に華やかに活躍していても急速にわすれられていくようなケースとならないような生き方に、負け惜しみであろうが、あこがれてしまう。お勧め度は、 とします。

Nov17.2012(N)

No.209

戦略論

ジョン・ベイリス他編  勁草書房(定価2800円+税、2012年9月初版)

 2010年に出版された”Strategy in the Contemporary World: An Introduction to Strategic Studies”の第三版の一部抄訳である。 初版が今から10年前で、911のアメリカのテロからすぐ改訂され、現在戦略研究の基本図書、教科書扱いである一冊とのこと。 ただ、本書は副題の通りに、「現代世界の軍事と戦争」を正面に扱っているので、いわゆる経営管理の戦略本とは違うことに注意が必要。 戦略、戦争、平和などの定義や解釈などが詳細に書かれており、戦略自体も戦力理論、文化などの側面から解析されている。 兵器との関連や、勝利の意味、総力戦とは何か、など以前どこかで読んだ記憶の部分も多い。現代人としての必須の教養として読む価値のある書籍と思われる。 内容評価は 、 値段は 。 直接的には最後に登場するインテリジェンスと戦略のパートが戦争に直接興味がない方にも一番読みやすいのではないか。 でも、戦略本と銘打っても、読み手を選ぶ一冊には違いない。お勧め度は、 とします。

Nov16.2012(N)

No.208

精神分析の名著

立木康介編著  中公新書(定価940円+税、2012年5月初版)

 フロイトが「夢解釈」を刊行したのが1900年のこと。一世紀以上も前のことである。 このフロイトからクライン、ビオン、ハルトマン、コフート、ラカン、土居健郎などの代表的精神分析か16人の名著を通して、現在までに精神分析は何を問い、 如何に思考してきたかを、明らかにしようとした一冊。新書であるが、370ページの大半が上下2段のスタイルで、まさに圧巻である。 通常の新書ではなく、読みやすさを求めた内容と思うと足をすくわれる。分担執筆である個々の専門家が全く素人を寄せ付けない雰囲気で書かれた文章には気楽さ、 わかりやすさとは全く無縁なものであるが、なぜが格調高い名品と感じてしまう。 内容評価は 、 値段は 。 国際精神分析協会とラカン派の対立など、当方には全く知らないことが多いが、内容も本当に専門的で解った振りをするだけでも大変な労力を要する。 しかし、精神分析を知らない医療関係者はいないと思われる以上、一度はチャレンジした方がよいかも知れない。お勧め度は、 とします。

Nov15.2012(N)

No.207

錯覚学—知覚の謎と解く

一川誠  集英社新書(定価740円+税、2012年10月初版)

 安全と安心について読み進めていると必ずといってよいほど錯覚について触れた箇所がある。 通常、医療安全について考える際には認知過程における錯誤の特性や引き起こされる危険について学ぶ必要があるが、本書は著者自らが書かれているように、 人間の錯誤を知覚過程の錯誤として取り上げられている。百聞は一見にしかず、と最初に書かれているが、モノクロであるがいろんな錯視が紹介されており、 しかもどこかで見たようなものばかりである。気楽に新書で読もうとして購入したが、なぜ錯覚学として研究されているのか、またその研究の方向性は、 など学術的な論点を交えて書かれており、勉強になります。認知過程の錯誤についての次に書かれことが望まれます。 内容評価は 、 値段は 。 錯覚が起こる正確なメカニズムが実はまだ解明されていないと筆者が本書の最初の方で述べているが、読み通した後になぜか当然に思えてしまうのは、 「錯覚」かもしれません。お勧め度は、 とします。

Nov14.2012(N)

No.206

リスクの社会心理学ム

中谷内一也編  有斐閣(定価3000円+税、2012年7月初版)

 人間が生み出してきた道具や科学技術にはベネフィットとリスクがあり、その扱いを考えるためにはリスク等の把握だけではなく、人間の認知や感情、 社会性への理解が必須となる。リスクと人間、社会について社会心理学からアプローチした一冊。共著であるが執筆者はそうそうたるメンバーである。 内容は2部全12章の構成となっており、第一部でおもに個人のリスクに対する反応やそれをもたらす心理学的な要因、判断、意思決定のプロセスを扱っており、 第二部では事故や災害のリスクに対して社会はどう反応するか、すべきなのかが論じられている。 東日本大震災という悲しい現実を前に、理屈だけではとうてい到達しえない事実に対して、結局意図されていなくても答えようしている各著者の姿に胸を打たれる。 内容評価は 、 値段は 。 一線級の研究者が書かれていて良い意味、格を感じる書籍であり、分量を含め新書や文庫サイズの本との歴然とした差を感じてしまう。 正直かなり読み手にも気力を要求されます。お勧め度は、 とします。

Nov13.2012(N)

No.205

失敗のメカニズム

芳賀繁  角川文庫(定価629円+税、2003年7月初版)

 2000年に日本出版サービスから刊行された単行本の文庫化。文庫自体でも約10年前の本となる。安全と安心について読み進めている際によく引用されている書籍の一つ。 出版当時はあとがきで著者自身も述べているが、畑村洋太郎先生の書籍から「失敗本ブーム」があり、その導火線となった一冊。 ただ、畑村先生の失敗は、成功するために失敗を学び、失敗を隠さず情報を共有し成功に導くという趣旨の失敗学であり、著者の失敗とは違うとしています。 本書自体はエラーを教科書的に解説しており、バランスの取れた内容となっています。 ただ、本書以降に著者が強調するリスクホメオスターシス理論にも触れていますが、捕らえどころのない、特徴のない書籍になっている感もあります。 内容評価は 、 値段は 。 どこかで読んだ既視感ばかりある本となってしまい、オーソドックスなスタイルが逆目の印象となってしまいました。 安全の入門書としてはうってうけだとは思うのですが。お勧め度は、 とします。

Nov12.2012(N)

No.204

民間療法のウソとホント

蒲谷茂  文春新書(定価730円+税、2011年9月初版)

 健康雑誌の創生期から立ち会ってきた医療ジャーナリストが自身編集長として関わった経験から雑誌を検証した一冊。1年前の新書であるが、なぜかスルーしていた。 多分、新潮社から出ていたサイモン・シンとエツァート・エルンストによる「代替医療のトリック」を読んで満腹になっていた時期だからと思い出す。 紅茶キノコの立役者である著者が健康雑誌なるもののカラクリを解説し、ゴシップ雑誌よろしく、すべて「営業」でなりたっていることを暴露的に解説している。 後半に各種民間療法につき一つ一つ取り上げられているが、医療関係者が読むと前半でほぼ終了。でも、なぜか当たり前のような気がするが。 内容評価は 、 値段は 。 恐いもの見たさ的な興味から購入したが、以前に薬剤メーカーがエイジェントを使って売りたい薬のために疾患を創造していく方法を学んだことを思い出し、 必ずしも違法ではないが「恐さ」を感じる書籍でした。個人的な好みとしてお勧め度は、 とします。

Nov11.2012(N)

No.203

安全。でも、安心できない・・・

中谷内一也  ちくま新書(定価740円+税、2008年10月初版)

 なぜ安全がそのまま安心につながらないのか、を説明し、安全と安心の関係を明らかにしようとした一冊。副題の「信頼できる心理学」をテーマに4年前に出版された。 本書はあくまでも「安心」についての心理学の本であり「安全」についてのものでないことを確認すべき。 安全と安心の違いから冒頭入り、情報処理の二重過程理論や信頼の非対称性理論に触れながら、どのように信頼が構築されていくかを説明していく。 一旦は能力とケアの二つの要因で信頼は決定されるとした。つまり、能力の評価と動機付けに関連する側面の評価とで信頼が決まるというものである。 人間が感情のシステムと理性のシステムのバランスの上に成り立ち、安心を構成している以上、予期せぬ不安を生じる危険を考慮すべきであろう。 内容評価は 、 値段は 。 やはり心理学の本を新書とはいえ一冊読み通すのは当方にはかなりきびしいものがありました。個人的な好みとしてお勧め度は、 とします。

Nov10.2012(N)

No.202

科学は大災害を予測できるか

フロリン・ディアク  文春文庫(定価686円+税、2012年10月初版)

 2年間に出版されたハードカバーの文庫化。大災害の予測の現状を最先端の知見にて数式ゼロで紹介されている。 医療関係ではインフルエンザのパンデミックが扱われている。総論的な予測の話は解説で別の方が述べられているが、当方には一番理解しやすかった。 簡単な系では予測がそれほど困難でなくなっており、複雑な系でもコンピュータが発達した現在ではかなりの精度まで予測できそうである。 ただ微少な違いで結果が大きく異なるカオス理論という現象が立ちはだかっているという説明である。 科学が予算獲得のためにテーマの目的性と手段性が曖昧になっている指摘もあるが、未来を予測するためにはパンデミックを含めカオス理論に立ち向かってもらいたいものである。 内容評価は 、 値段は 。 最近、安全と安心について調べているため、いわゆる危険予知についても既知感を覚えてしまいます。全く理解できていないのですが。お勧め度は、 とします。

Nov9.2012(N)

No.201

死ぬにはよい日だ

日本エッセイスト・クラブ編  文春文庫(定価552円+税、2012年10月初版)

 毎年編まれる日本エッセイスト・クラブによるベスト・エッセイ集の2009年版。2008年に雑誌に収載された55のエッセイを2009年にハードカバーで出版され今回文庫化。 ハードカバーで買う勇気はないが、毎年文庫本が出るのを楽しみにしている一冊。 今回の中ではタイトルにもなっており医療にも関係している巻尾の「死ぬにはよい日だ」が特に心に染みる。食道癌の末期と診断された親子共に栄養学ジャーナリストである父。 「長生きしようとは思っていない。命を粗末にしてはならないと思っているだけ。」と仕事中心の生き方を変えない。それを見守る子と家族。 「死とはまさに生涯をかけての達成なのである」とぶれずに突き抜ける。 内容評価は 、 値段は 。 死生学をエッセイした単文でしたが、他のエッセイもゆっくりと読みたくなります。特に同名のインディアンの物語も思い出されます。お勧め度は、 とします。

Nov8.2012(N)



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