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医学書 ブックレビュー

No.240

腰痛診療ガイドライン2012

日本整形外科学会 監修  南江堂(定価2200円+税、2012年11月初版)

 日本整形外科学会が監修に当たっている文献アブストラクトCD-ROM付きのガイドライン。これまでに14冊出ています。 今回は腰痛についての一冊で、作成手順を含め様式は依然と変化はありません。 総合診療医としての腰痛に対する日本での現在の基本スタンスを確認するためには必須と考え、購入しました。 定義、疫学、診断、治療、予防の5つのパートに分けて書かれています。疑問に対して答えていくという非常に判りやすいスタイルで短時間が100ページ足らずを通読可能でした。 一番驚いたのが、腰痛の定義に確立したものはないという箇所でした。 一般的には触知可能な最下端の肋骨と殿溝の間の領域に位置する疼痛と定義されているそうですが、そういったものなのでしょう。 内容評価は 、 値段は 。 内容はある程度推察がつくかと思います。 知っている知識の再整理として購入されるのが良いでしょう。腰痛を避けて通れる総合診療はないと考えますので。お勧め度は、 とします。

Dec17.2012(N)

No.239

認知症診療の作法

長谷川和夫  永井書店(定価1890円+税、2012年11月初版)

 誰もが知っている認知症の泰斗の一冊。現時点での思いを文庫本サイズ100ページ程度にて語っている。 学問の対象としてではなく、血の通った人間として、どのように対応していけばよいか、を著者自らが考えた結果がそこにある。 週に一度の日常診療にタッチされ、Tom Kitwoodのパーソン・センタード・ケアという言葉に巡り会って、関わり方が変わったのかもしれないと感じてしまう。 問診票から、診察室の条件、面接者の注意点、具体的な認知症の方とのコミュニケーションの取り方など、現場で必要なものがそこには詰まっている。 最後のタイトルそのままの認知症診療の作法で、マナーというよりは診療の心構えを学ぶことになる。 内容評価は 、 値段は 。 書籍というよりは小冊子ぐらいの厚みであるが、プロは違う、と思ってしまう内容である。 最近多い認知症全般を扱った本とは少し違うことに注意は必要であるが、著者自身は気持ちに入った冊子であることになぜが納得できます。お勧め度は、 とします。

Dec16.2012(N)

No.238

人間はどこまで動物か

日高敏隆  新潮文庫(定価400円+税、2006年12月初版)

 この本も雑誌に連載されたシリーズエッセイを書籍化したもの。8年前に発行され、6年前に文庫化されている。 動物行動学が本業の著者であり、動物ネタのエッセイは奥深く、例えば夫婦で子育てするタヌキの話など、おもしろく読めるのですが、 連続するとやはり食傷気味となり、ぴりっと感じるのは、それ以外のテーマでした。 大学を変わって行く過程で、著者の感じたこと、最近の学生気質、教育とは何か、など一種専門外の話が興味深く読めます。 大学というのが単に手続きという技術や知識の教習所ではなく、科学というものを考え続ける場所でありたいという願いが伝わってきます。 内容評価は 、 値段は 。 本書での圧巻は解説のところの「鼻行類—新しく発見された哺乳類の構造と生活」という今から25年前に翻訳された書籍の話でした。 聞いたことがない、というのが当然で、学問を装った冗談の一冊で、著者が真剣に関わったそうです。 そんな本の存在と著者の対応がなぜかうれしく感じてしまいました。お勧め度は とします。

Dec15.2012(N)

No.237

行きなおす力

柳田邦男  新潮文庫(定価520円+税、2011年11月初版)

 恒例の年一回発行されるシリーズエッセイの2008年版。3年前の単行本の文庫化。 今回は、「授乳中にメール これは虐待だ!」、「こどもとケータイ 規制だけで解決?」、「脳を壊すケータイ 親よ学校よ気づけ」、 「子どもの心発見 ノーテレビデー」と柳田邦男さんの持論であるテーマが前半並んでいる。 後半も「死」や「安全」をテーマに政治の絡んだ話が多く、これも著者のメインテーマである。 一番目についたのは「政治家・官僚よ 衆生済度を歩め」であった。 すべての人を救うということを意味している衆生済度の言葉から、薬害C型肝炎患者救済や水俣病認定問題という「線引き主義」についてコメントした一篇でした。 内容評価は 、 値段は 。 いずれも著者が良く取り上げる話題で、読みやすい反面、どこかで読んだ気がしてしまう一冊でした。 違和感があり、著者の考えが最近「性善説」に寄っている気がしてしまった本でもありました。お勧め度は、 とします。

Dec14.2012(N)

No.236

春の数えかた

日高敏隆  新潮文庫(定価430円+税、2005年2月初版)

 高名な動物行動学者であった著者のエッセイのひとつ。初版は11年前の文庫化された一冊。同年の日本エッセイスト・クラブ賞を受賞している。 今回はやはりタイトルにもなっている巻尾の一品「春の数えかた」が非常に雰囲気を感じる。 あまり多くを説明しなくても最後の三行「発達限度温度も有効積算温度の一定値も、生きものの種によってちがっている。 それは内外歴史のあいだに、それぞれの種に固有に定まってきたものだ。いきものの種がちがえば、春のくる日もちがうのである。」 ひとそれぞれにも、当然、「春のくる日はちがう」でしょう。そう信じて生きていきたいものです。 内容評価は 、 値段は 。 エッセイとして当然のことならが、文章はすばらしく読みやすいものですが、今回は全編動物の話ばかりです。正直、慣れない当方には少しきつい内容でした。 そういった意味もあり、お勧め度は、 とします。

Dec13.2012(N)

No.235

「気づき」の力

柳田邦男  新潮文庫(定価438円+税、2010年11月初版)

 月刊誌に連載されたエッセイ・評論からの4冊目のシリーズものの文庫である。2007年分が今回の時代である。 したがって月ごとの12個のテーマにて書かれていることになります。中でも、最初の看護学生のエッセイから著者が感じたことからこの本は始まっているのですが、 「現場が心を成長させる」という教育論から期待したいものが見えてくる。 いわゆる大野事件に対する考え方も別に書かれており、今の医療のアンバランスさが提示されている。 終末期医療を扱っている他の一篇もそうであるが、組織事故などからみえてくる医療安全と法という観点をしっかり理解しておかないと、 自分たち自身がアンバランスな立ち位置になってしまう。 内容評価は 、 値段は 。 河合隼雄さんとの会話にある「崖っぷち」という一言が何を意味するのか、人を変えるということは自分もかわらなければならない現実が理解できるか、実践できるか。 重い問いかけです。お勧め度は、 とします。

Dec12.2012(N)

No.234

いじめと不登校

河合隼雄  新潮文庫(定価514円+税、2009年9月初版)

 今から13年前に発行されたものの文庫化。河合先生の本はなぜか古びないのが恐ろしい。いじめや不登校を通して現代の教育論を述べている。 後半は対談集であり、これも生きた言葉が聞けます。こどもにどうやって「生きる力」を与え、鍛えていくのか。ある意味、親、大人が考え答えていくべき問題でしょう。 個性を育てる教育を答えとして流れているテーマとなっています。 具体的には、教えないこと、見守ること、振り回されること、何もしないということ、居るということ、という五つを要点としてまとめています。 教育とはなんと矛盾に満ちた領域かがわかる一冊をなっています。 内容評価は 、 値段は 。 いまはやりの「いじめ」についての本ですが、あくまでもオーソドックスの対応であり、きれいな本です。 小手先の対応を教えているのではないところがすばらしいと感じてしまいます。でも、やはり教育論は難しい。お勧め度は、 とします。

Dec11.2012(N)

No.233

ダンディズムの系譜

中野香織  新潮社(定価1200円+税、2009年2月初版)

 男が憧れる男たちであるダンディズムについて書かれた新潮選書の一冊。 ダンディズムとはふてぶてしく「空気読まない」男のことで、堂々と演技的に「空気を読んだうえでぶちこわす」男たちを意味する。 ジェントルマンとの対比からダンディズムを位置づけているが、時代とともに相対的な存在であり、実際に著名人たちを例にあげ、解りやすく解説されている。 ボー・ブランメル、リットン卿、ディズレイリ、サッカレー、ワイルド、チャーチルなどが紹介されている。 現代ではオバマ大統領を含め数人のみとりあげられており、伝統に反逆し、世間の価値観を蹴飛ばす「精神のパスポート」有する伝説の男たちである。 内容評価は 、 値段は 。 医師のダンディズムを知りたくて購入したがひとりも登場せず。ただ、白洲次郎がダンディでないことは解りましたが。 やはり趣味の本という位置づけになります。お勧め度は、 とします。

Dec10.2012(N)

No.232

かかりつけ医のためのてんかんのマネジメント

兼子直 編著  医薬ジャーナル社(定価2800円+税、2012年10月初版)

 日本てんかん学会の理事長が編集執筆した一冊。てんかん診療に携わる非専門医を対象に書かれ書籍である。 てんかんの疫学調査結果や、診療の基本原則、診断と治療、社会資本の有効な活用方法などが記載されている。 てんかんというとどうしても最近の新薬の登場とガイドラインの整備の結果、治療に焦点が当たりがちであるが、本書はしっかりと診断の部分にもバランス良く力を入れている。 さらに痛ましい交通事故の結果、自動車の運転免許に対する考え方も一般論して提示されている。 この手の本で偏った意見はやはり言いにくいのでしょう。120ページ余りの小冊子ですが、理解しやすいものとなっています。 内容評価は 、 値段は 。 非専門医向けのため、どうしても食い足りない感がつきまといます。特に鑑別診断の関連する箇所ですが、分量と合わせ致し方ないのかもしれません。お勧め度は、 とします。

Dec9.2012(N)

No.231

壊れる日本人

柳田邦男  新潮文庫(定価438円+税、2007年11月初版)

 副題である「ケータイ・ネット依存症への告別」がすべて言いたいことである、柳田邦男さんの7年前に出版されたものの文庫化。 急激なIT化により得たもの、失ったものを冷静に把握し、自覚する必要があるということである。 犯罪や引きこもりの原因といわれいる問題以外に、医療関係であれば、最近は余り指摘されなくなった「患者の顔を見なくなった医師」の問題である。 電子カルテの画面を見て、患者の顔をゆっくりみる時間や心のゆとりを無くした医師の話である。 ある意味当たり前になってしまい、必要悪と化してしまったのかもしれない。外来診療が記録業務を主体として、何が患者(人)中心の医療なものかと思える現実がそこにある。 内容評価は 、 値段は 。 末期医療には「あいまいさ」が必要ではないか、という議論にも自然に賛成してしまうのは、今は方向性に必ずしも満足していない自分があるからかもしれません。お勧め度は、 とします。

Dec8.2012(N)

No.230

病棟での呼吸・循環危機に対応する

福岡俊雄 編集  文光堂(定価3400円+税、2012年10月初版)

 倉敷中央病院の先生方が中心に執筆されたBEAM(Bunkodo Essential Advanced Mook)シリーズの一冊で八作目に当たる。 このシリーズ自体は雑誌の臨床研修プラクティスという現在廃刊となったものより派生しており、編集委員もほぼ同じ京大系の先生方です。 今回は病棟急変についての一冊で、CASE毎の対応の実際が書かれているのですが、現場の研修医向けの実務書というより急変時のチーム医療体制について詳術されています。 特に総論に当たる最初の30ページ余りは、この手の本ではめったに読めない医療安全よりの視点で書かれた貴重の一冊となっています。 種田憲一郎先生の書かれた「危機にチームとして対応するために:チームSTEPPS」はそれだけでも本書を購入する価値があると思えるほどの内容でした。 内容評価は 、 値段は 。 倉敷中央病院のスタイルを通して急変時の一般論を学ぶという意味では貴重な一冊かもしれません。お勧め度は、 とします。

Dec7.2012(N)

No.229

縦糸横糸

河合隼雄  新潮文庫(定価514円+税、2006年9月初版)

 河合先生が産経新聞に月一回連載されたコラムをまとめた一冊。1996年から2003年までのものが収録されている。 各短編のタイトルを見るだけでもその年に何があったかがおぼろげにも見えてくる。 酒鬼薔薇聖斗、和歌山カレー事件、オウム真理教など、すぐピンと来るようなことが多かったには、幸か不幸か。 ただ、今に読んで心に残るのはそういった事件ではなく、時相に無関係なものが多い。 例えば、マザー・テレサの話。どんな人でも「あなたを必要とします」と真剣に語れる自分であるか。「一人の人のために」自信をもって医療に携わっているか。 問われること自体、つらいかもしれません。 内容評価は 、 値段は 。 内容はさすがに少し古くなっています。 ただ、臨床心理士の話など、10年経ってもなんらかわっていない問題をかかえた現状も違う意味で認識できます。お勧め度は、 とします。

Dec6.2012(N)

No.228

マイナーサージェリー

葛西猛 監修  診断と治療社(定価4500円+税、2012年10月初版)

 亀田総合病院の救命救急科が標準として考えている、小外科疾患や損傷に対する研修医レベルに期待する内容をマニュアル化した一冊。 亀田総合病院の救命救急センター自体は、序文に紹介されているように、2003年に手術中心の三次救命救急体制からシフトし、 現在は外傷、熱傷などの一部の患者はERから入院までの継続治療を行う「有床型ER方式」を採用し、 他は軽症から重症までに初療には対応するが関連する科への依頼を行うERシステムに転換されているようです。 内容は、個人的には一つ前の版で翻訳も存在するマイナーエマージェンシーを意識したものになっている気がしますが、 研修医向けに基本的な部分から書き下ろし、一般内科的なところまで扱っている点がミソでしょうか。 マニュアルであるため、恣意的に参考文献を大胆に省略されており、内容の出典や他の標準的な手法についてはすぐに学べない点が敢えて言うと難点かもしれません。 内容評価は 、 値段は 。 手技を行うには本当にわかりやすい、しかし書かれている内容がどのレベルの話なのかが研修医に解るのかが若干不安になるマニュアル本でした。お勧め度は、 とします。

Dec5.2012(N)

No.227

言葉と物

ミシェル・フーコー  新潮社(定価4500円+税、1974年6月初版)

 原書は50年近く前に出版され、翻訳も40年近く経っている、いわゆる近代の古典である。 以前より書名は知っていて一度は読んでみたいと思っていたが、高価な書籍でなかなか手に取れなかった一冊。 フーコーという名にあこがれもあり、やっとの思い出で購入したが、サルトルの「存在と無」以来の革命的思想書と銘を打たれ、 構造主義とは、現代の知の不安の意識であると喝破しているのであるが、一冊読み通すだけでも、そうとう精神力を要求される書籍であり、正直ほとんど理解できなかった。 副題が「人文科学の考古学」であり、その視点からずっと語ら、終わりに近く精神分析と文化人類学の関係についての一章を費やし書かれている。 この二つと人文科学の相対位置についての考えを明らかにしているのであるが、精神分析そのものも人文科学に包含されている、 という内容が一冊のなかでも解りやすかった部分である。 内容評価は 、 値段は 。 名著の香りのする本が好きな方も多いと思いますが、正にそういった一冊。何を言っているのかがかろうじてぼんやり解る程度で、何を言いたいのかはさっぱりでした。 まだまだ力不足です。お勧め度は、 とします。

Dec4.2012(N)

No.226

イチローの流儀

小西慶三  新潮文庫(定価400円+税、2009年4月初版)

 いわゆるイチロー本の一冊。6年前の書籍が文庫化されているもの。 プロ中のプロであるイチローの生き方を学ぶ本であるが、なかなか天才には凡才は学べないかもしれないと実感した。 スランプの脱出法、徹底した準備、オンとオフの考え方など、理屈のある生き方を学ぶことになる。 なぜか、将棋の羽生さんについての本を通読しながら思い出してしまいました。別世界の2人ですが、言い方が異なっても言いたいことが同じ気がします。 勝負の世界に生き、勝つためには、負けないためにはどうあるべきか。結局はそんな問いかけが常に聞こえ、それに答える、答えないを含め、感じることのできる書籍です。 内容評価は 、 値段は 。 情熱を秘めつつ、クールに本分を全うする。いつも淡々としているように見える表情の内側は、触れると火傷しそうに熱いイチローを見て、 自分もまだ成長できると思ってしまいます。お勧め度は、 とします。

Dec3.2012(N)

No.225

人を殺すとはどういうことか

美達大和  新潮文庫(定価520円+税、2011年11月初版)

 二件の殺人を犯して現在無期懲役刑に服している筆者が著した獄中記。 人を殺した著者が冷静に事件を起こし、裁判でも死刑になってもよいとその姿勢を貫く、ある種冷酷さを持ち合わせているほどなのに、なぜ、この本を書き、 昨日という大罪が償えるのかを問いかけるのか、という疑問に答えているのか。 この二重の疑問型に対する答えは一冊読み通してみても理解しがたい。ただ、贖罪の気持ちは伝わっては来ますが。 そういった筆者から見ても、「人を殺してみたかった」とか「誰でもよかった」という理由で近年発生している殺人事件は不可解というのですから、 恐いというしか現在はないのでしょうか。医療で1人助けるのも大変ですから。 内容評価は 、 値段は 。 副題にもあるLB級刑務所の名前の由来や同じ殺人者でも「堅気」と「やくざ」では当然気質が違う話など蘊蓄は一杯なのですが、 普通の気構えで読んでもなぜが背筋が寒くなり、暗い気持ちになってしまいます。向き不向きがはっきりした一冊でしょう。お勧め度は、 とします。

Dec2.2012(N)

No.224

しびれ、痛みの外来診療

井須豊彦編著  中外医学社(定価2400円+税、2012年10月初版)

 この書籍はふたつの顔を持つ。一つは単にタイトル通りの「しびれ、痛み」についてのある意味普通の医学実践書であり、診断治療を知ろうとする方を対象としている。 もう一つの顔は、外来診療を含めての一般論としての医療面接、総合診療的な意見を明確に出している。 異論があるような事柄でも、あえて著者がはっきりと意見を述べているのはある種快感である。 もちろん診療医として力量には定評のある著者であり、しびれ、痛みの実践書としての価値も高い。 25ページの「患者の訴える症状のみで診断が疑われる病気」などは圧巻である。ただ、一冊としては分量が少ないと感じてしまいます。 内容評価は 、 値段は 。 問診の大切さを力説し診察の秘伝を散りばめた一冊。外来診療で必要な一般論も詳しく触れられており、至れり尽くせりである。 おわりの「時代おくれの診察、治療を目指して」には胸を打たれます。神経学の本と言うより総合診療医にうってつけの書籍です。お勧め度は、 とします。

Dec1.2012(N)

No.223

朽ちていった命—被曝治療83日間の記録

NHK「東海村臨界事故」取材班  新潮文庫(定価438円+税、2006年10月初版)

 大きな出来事であっても時間が経つと忘れてしまう。当たり前のことであるが、時として思い出さざるを得なくなり冷や汗を流すことになります。 東日本大震災の後になって原発に絡み13年前の茨城県東海村での臨界事故、核燃料の加工作業中の大量放射線被曝による2人の方が亡くなっているという事実です。 今回はさいわいにしてそういった教訓を医療しては活かす必要はなかってようですが。さらに歴史を遡ると当然太平洋戦争の最終局面での広島における原爆投下となります。 悲しいことですが日本はいろんな形で放射線という問題を正面視する必要があるのでしょう。 内容評価は 、 値段は 。 当時東京大学におられた前川先生の闘いが描かれているのですが、最新の治療を行っても結局は患者を亡くしています。現実は厳しいものがあります。 歴史を学んでいる気になってしまう一冊です。お勧め度は、 とします。

Nov30.2012(N)

No.222

プライマリ・ケアのための新規抗てんかん薬マスターブック

高橋幸利編  診断と治療社(定価3000円+税、2012年10月初版)

 静岡てんかん・神経医療センターの先生方が執筆されたてんかんについての書籍。診断については簡単に触れられ、主に治療についてのガイドラインに則して書かれている。 最近マスコミでよく取り上げられているが、自動車運転中の発作による事故から脚光を浴びたには皮肉としか言いようがない。 2006年のガバペンチン以降の薬剤が扱われ、小児と成人とに分けて説明されている。 ガイドライン自体は見たことがあったが、具体的に副作用含めて薬剤を使用する際に実用的な一冊となっている。 新規に薬剤を使用したり、変更・追加するケースは希かもしれないが。 内容評価は 、 値段は 。 それにしても以前はデパケンとフェニトイン程度しか知らなかったが、本当に新規の薬剤が増えていることにびっくりした。 ここまで行くと循環器領域の抗不整脈薬を例えに出したくなるほどであった。言い換えれば、実際の使用は難しいと思ってしまう。お勧め度は、 とします。

Nov29.2012(N)

No.221

成功することに決めた

遠山正道  新潮文庫(定価438円+税、2011年4月初版)

 スープストックトウキョウを運営するスマイルズ社長の遠山さんのこれまでを書いた一種の自伝。会社に入ってからのことから始まっている。 起業家であり、芸術家である方の本は面白い。ただ、すごい方々と知り合いであることにびっくりするが、どうしてかが書かれていない。 なぜ芸術家なのかも、サラッと触れられているだけである。もちろん企業として立ち上げているプロセスの部分は読ませるものがあり、山あり谷ありの歴史はなるほどと思わせる。 一時社長を知りどき、再度復帰する過程は実感がわきます。原点に還ろうとして「幸せ」を探し「仕事の楽しさ」を求める。 「感度を共有した、組織、顧客。パートナーの確立」を達成目標として、というのも共感がもたれます。 、 値段は 。 一種天才が書いた本として読めてしまい、背景を知りたくなってしまう。結局一番記憶に残ったのは紹介されている牛尾治朗さんの「個人になると守りに入る。 会社を潰す位のつもり思い切りやりなさい。」でした。お勧め度は、 とします。

Nov28.2012(N)



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