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医学書 ブックレビュー

No.320

異常値の出るメカニズム(第6版)

河合忠 他編  医学書院(定価6300円+税、2013年2月初版)

 定番書籍の第6版が出ました。初版が1985年だそうで、本当に歴史を感じますね。 確かこのころの検査診断学テキストは小酒井(名前に自信なし)先生の本が定番で、次にこの本が出て、その後、 現在では3分冊以上に分かれている日本臨床の本の順だった記憶があります。旧版が一冊しか購入した記憶がなく、正直探しても見つかりません。 内容は検査値と取扱を記載した序論はしっかり読む必要がありますが、各論は通読に当然不向きかもしれません。 ただ、全体で450ページ程度ですから頑張れば読み通すことは可能ですが。各論は、生理学と疾患を概観でき、何か懐かしい気持ちになります。 序論を読み、自分の気に入った、ないし気になる箇所を拾い読みするに適した一冊かもしれません。 内容評価は 、 値段は 。 この分野の本は通常であれば優先順位が低く、また、読み物としては扱いにくく、気に入ったものを一冊(一シリーズ)あればよいのでしょう。 各種ありますが、マニュアル、事典では、という方には合った書籍と考えます。お勧め度は、 とします。

Mar8.2013(N)

No.319

むずむず脚のカラクリ

久米明人  新興医学出版社(定価1995円+税、2013年1月初版)

 ウィリス・エクボム病の登場、というのが副題です。普通は、なにこれ、でしょう。 レストレスレッグ・シンドローム(restless legs syndrome: RLS)の生みの親であるWillis-Ekbomを記念して2011年より病名を変更しようとしているからです。 RLSの疾患概念提唱者がカール・アクセル・エクボムであり、ではウィリスとは誰かというと、RLS患者を1672年初めて文献に記載したトーマス・ウィリスのことで、 脳血管のウィリス輪で有名で脳解剖学者のことである。 なぜ改名に至ったかを、病気ビジネスではないか、という長年の批判や、実態としての疾患頻度の高さ、患者の多さ、を通して書かれている。 疾患の病因論が遺伝子レベルまで遡って、本当に科学的に異常をあることが確認され、やっと真の疾患として認知されてきたこのRLSの歴史には驚かされる。 それを分かりやすく、心に訴えるように書かれた一冊です。 内容評価は 、 値段は 。 最新の知見まで網羅されており、RLSの総説を日本語でしっかりと読み学んだ気になります。結構つかみ所が無かったRLSが身近に感じられると思います。 自分の周辺にも数名のRLS患者がおり治療していますが、蘊蓄だけではなく実地の診療に活かせる内容です。睡眠障害等に興味のない方にも一読をお薦めします。お勧め度は、 とします。

Mar7.2013(N)

No.318

初めてだってうまくいく!よく出会う18症例で学ぶプレゼンテーションの具体的なポイントとコツ

天理よろず相談所病院レジデント  三輪書店(定価3200円+税、2013年1月初版)

 内容がタイトルを見ただけで良く解るというは一番適していることだとは思うが、書き出してみるとこうだけ長くなります。 また、最近はやりの「!」入りで読む前は警戒してしまいました。当然のことながら、こういったことはすべて杞憂で、内容はすばらしいものがあります。 最初にプレゼンテーション自体を余り構えずに解説しており、明日からでも使えるものです。 次に症例を用いて具体的なプレゼンテーションが始まり、ショートプレゼンテーションに移り、最後はフルプレゼンテーションの提示にて終わっています。 全体で18症例というのは疾患を紹介するなど、他の目的のための書籍ではなく、プレゼンテーションのあり方が主題ですので、適度な分量でした。 内容評価は 、 値段は 。 天理よろず相談所病院の研修が高レベルであり、そのあり方にプライドをもっていることが感じられ、気持ちのよい一冊です。 内容もバランスが取れていて本音が聞けた気がします。ただ、敢えて言えば、プレゼンテーションの理屈がもう少し深掘りされてもと思いますが、 読んで欲しい対象が違うのでしょう。お勧め度は、 とします。

Mar6.2013(N)

No.317

直伝!救急手技プラチナテクニック

太田祥一 編  羊土社(定価4900円+税、2013年2月初版)

 レジデントノートの別冊にて救急・ERノートの第7巻である。救急における手技自体だけではなく、合併症の問題や手技後に管理までを含めて一冊となっている。 蘇生手技、緊急気道確保、超音波の使用法、開胸、補助循環、血液浄化、各種ドレナージ、眼科、耳鼻科関連の手技まで、実践的な内容が紹介されています。 整形外科的な処置を固定法や創傷処置までを提示し、全300ページの内容となっている。個々のテーマは可能な限りシェーマや写真を使って、理解しやすいように配慮されている。 注意すべきは、筆者の好みによって複数のアプローチがあってもすべてが紹介されているわけではなく、救急手技の関しては入門編といった趣であることを銘記すべき。 最近は手技に主体をおいた書籍が複数出版されていますが、自分に合った本を選択すべきでしょう。 特に、シミュレータを用いた教育実践は現実は難しいものであり、今回の書籍もその原則を踏襲したものと考えられる。 内容評価は 、 値段は 。 ムック形式の書籍であるが、結構自信はあったようである。お勧め度は、 とします。

Mar5.2013(N)

No.316

実践嚥下内視鏡検査(VE)

廣瀬肇 監修  インテルナ出版(定価6000円+税、2011年2月初版)

 日本摂食嚥下リハビリテーション学会より最近嚥下内視鏡検査についてのガイドラインが出たかと思いますが、その際、実務としての検査が周辺でなされていないため、 実際を知りたく購入した一冊。DVDが付いているのがミソで、そのためにこの値段である。テキスト自体はカラー版であっても100ページ前後の厚さである。 実務としての概要はこの一冊でイメージはトレーニング出来そうである。ただし、ある程度気管支鏡ないし上部内視鏡に慣れた人間という条件は付くでしょうが。 ただ、評価、所見の見方、記録のあり方などは結局学会のガイドラインにある程度沿うことになりそうで、その異同が若干問題かもしれません。 内容評価は 、 値段は 。 やはりハンズオン・セミナーにでも参加しないといけないでしょうが、ズルをしそうな自分が情けないですね。もう少しyoutubeでも深めに検索してみる必要がありそうです。 自分で検査しなくても適応やどこまで検査で解るか、情報として持っておきたい方には参考になる一冊でしょうが、対費用効果を考えて購入して下さい。お勧め度は、 とします。

Mar4.2013(N)

No.315

シリーズ生命倫理学(1)生命倫理学の基本構図

シリーズ生命倫理学編集委員会 編  丸善出版(定価5800円+税、2012年1月初版)

 日本の生命倫理学者が総力を結集して執筆されたシリーズの第一巻であり、昨年1月より刊行が開始されたものであり、全20巻の予定。余りに膨大でかつ高価なため、 最初はスルー予定で、読むつもりはなかったのですが、最近の他の書籍等でも取り上げられ始め、5年以上前に刊行された、 巻頭でも取り上げられている「生命倫理百科事典」の全5巻シリーズを同じ理由で購入しなかったことが思い出され、読書基本である、 旬の時点で購入・通読することとしました。まずはその第一冊。予想通りに本当にオーソドックスの言葉につきます。本文として240ページ前後ですが、読み応えたっぷり。 興味のあるところだけ読まないと、アタマが爆発しそうになります。でも興味があれば本当におもしろく、いままで学んだ生命倫理の整理になること請け合いです。 内容評価は 、 値段は 。 表現は悪いかもしれませんが、この面白さはマニアックなものかもしれません。 多分、医療倫理、生命倫理、医事法学など、最近読み込んでいる書籍はこういった分野の書籍に該当するのでは、ふと思ってしました。この点から、お勧め度は、 とします。

Mar3.2013(N)

No.314

年報 医事法学26(2011年版)

日本医事法学会編  日本評論社(定価5000円+税、2011年8月初版)

 医事法学関連の勉強のために逆向きに遡って読んでいる年刊の一冊。2011年版で日本医事法学会創立40周年記念号。学会としての歴史が描かれ、知らない世界がそこにある。 全体の編集スタイルはいつもの通りです。今回のテーマは医療基本法。医療には実は基本法がなく、憲法はじめいろんな法律が寄せ集めて基本法のような形をとっているようである。 そもそも本書を通読しようにも、法律家でもない者がチャレンジするのは肩の凝る話であり、その上、基本が無いとされるとつらいものです。 あっても多分、余り変わらない気はしまうが。数年分読まないと通常なる、歴史は繰り返す、といった類のテーマの循環のサイクル生活を確認できる程度まで読み進めたいものです。 内容評価は 、 値段は 。 法律に関連した書籍はやはり専門性が高く、キツイものがあります。好みとかいったレベルではやはりないですね。 医療訴訟などと銘打った読みやすいものを気安く読んだ方が結局は理解できるのかもしれません。もう少し頑張ってみます。お勧め度は、 とします。

Mar2.2013(N)

No.313

内科医のための不眠診療 はじめの一歩

小川朝生 他編  羊土社(定価3500円+税、2013年2月初版)

 全診療科で必要となる不眠に対しての書籍。精神科専門医と睡眠医学専門医のコラボの一冊といった特徴がある蘊蓄を期待して購入。 不眠に対しての日常診療の位置づけはなかなかスマートにはいかず、どうしても雰囲気で流されてしまう。 何度も勉強したつもりであるが、結局スタイルは10年以上変わった気がしない。本書では第2章の睡眠薬の概論と第4章の非薬物治療が大変面白く、アタマにスーと入ってきた。 全体で210ページ程度の本でこの2章で50ページ程度。このバランスとどうかというところでしょうか。 確認のため問題形式を章末に取っており、正直内容でなく、このスタイルと取った意味が今ひとつ理解できなかった。 内容評価は 、 値段は 。 前記の50ページの内容は濃く、お薦めなのですが、間の症例の呈示や処方提示の根拠が専門でない者には、いま一つ理解しにくく、 結局は自分の診療スタイルを変更できる自信は繋がらなかった。まだまだ、勉強不足なのでしょうね。お勧め度は、 とします。

Mar1.2013(N)

No.312

身体拘束・隔離の指針

日本総合病院精神医学会 教育・研究委員会 編  星和書店(定価2200円+税、2007年3月初版)

 同じ星和書店から出版されている、日本総合病院精神医学会編集の治療指針シリーズの一冊。シリーズ自体は全5巻で、他にせん妄、静脈血栓塞栓症、急性薬物中毒、向精神薬。 身体疾患治療薬の相互作用についての書籍があります。本書はすでに発行され6年目になりますが、いまでに良く引用される基礎資料の一つです。 医療安全の上から身体拘束を見直す必要があり、もうすぐ改訂されるかも、と思いながら購入しました。 内容は以前どこかで読んだ気がするものが多かったですが、逆にこちらがオリジナルなのでしょう。 せん妄と身体拘束、という関係で個人的には見てしまうのですが、間近に出るとされるせん妄の指針と合わせ、定期的に確認作業が必要は分野であることに間違いはないでしょう。 内容評価は 、 値段は 。 物理的な手段は取りたくないが、薬物治療に自信が持てない場合の選択肢は残しておきたい。そういった学問でないが、実地の知恵はどうしても必要となる場合があります、 そのための一冊なのですが、改訂されてから購入は検討されるのがよいでしょう。お勧め度は、 とします。

Feb28.2013(N)

No.311

呼吸器疾患 最新の治療2013-2015

貫和敏博 他編  南江堂(定価10000円+税、2013年2月初版)

 1998年版から出版されているシリーズで確か6冊目。テーマを110前後取り上げ、一つにつき数ページ(2ページから10ページ)くらいにまとめ概観したものであり、 全体で500ページ程度となっている。各テーマはやはりその分野での第一人者の方が執筆されており、短時間でその部分を理解できるように配慮されている。 辞書かわりに使用する方法でも、通読して今の呼吸器学のレベルを推し量るという利用法でも、他を含めいろんな使用方法が考えられ、自分に合ったスタイルで使える。 逆に言えば、一テーマ当たりの分量が少なく、また、参考文献も余り利用できず、二次ないし三次資料としては不向きであろう。 また、いつものことであるが、一部の記載には根拠が希薄で、エビデンスのしっかりしたものとそうでないものが混在して一見みわけが困難という点も気になる箇所であった。 内容評価は 、 値段は 。 編集もので、年刊に近いスタイルのため、欠点はどうしても避けられないため、その長所を見つけ理解し、購入・利用すべきものでしょう。 ただ、総合診療医が、という視点では、なかなか歯ごたえのある一冊に思えます。値段を含め、お勧め度は、 とします。

Feb27.2013(N)

No.310

カルテはこう書け!

内科学研鑽会 編  新興医学出版社(定価2800円+税、2013年1月初版)

 目からウロコ「総合プロブレム方式」、という副題の趣旨に全く異論はありません。ただ、本書の執筆スタイルは全体を通して個人的にはついていけないものを感じます。 まず、仮想空間での診療、対話という点。最近、はやりのスタイルですが、逆に読みにくい。アタマに要点が入ってこない。 どうしても擬人による対話というムダが存在するため論点に切れ味がなまるのでしょうか。次に、どうしてもアニメ風になってしまう。 真摯なテーマなのに、漫画風の笑いが出てしまうキライがあります。 最後に総論的な部分まで統一したスタイルで押し通したため、各論以上に理解が困難となってしまい、著者の方々が伝えたいことがストレートに届かず、残念でした。 もちろん当方の読み方に大半の問題があり、努力不足なのでしょうが。 内容評価は 、 値段は 。 どうしても初期、後期研修医が主たる対象となる書籍では、読みやすさ、理解しやすさが求められるのでしょう。医学雑誌の連載ものでもそうですが、なにかケバイ感じになってしまいます。 でも、オーソドックス過ぎても単調で面白くないでしょうね。結局消費者は贅沢、という一言になるかもしれません。お勧め度は、 とします。

Feb26.2013(N)

No.309

Annual Review 2013 呼吸器

高橋和久 他編  中外医学社(定価9800円+税、2013年1月初版)

 中外医学社が発行しているAnnual Reviewシリーズの一冊。息の長いシリーズで年刊としては多分現在唯一のもの。 以前はいくつかあった記憶があるが、文献検索システム含めIT環境が整備されPCがあればすぐに年刊が無くても情報が取れ、 総説が手に入るようになって、呼吸器でもSimmondsのシリーズなども消滅し、YearBookの年刊のみが残ったのではないでしょうか。 逆に年刊の意味が何なのかを考えて購入する必要があります。雑誌などの年単位に回顧総説でもなく、その年のホットなトピックスを扱わず、 最近数年間のテーマの中で、興味のあるところを編者の方々は選択されているのではと推察される。 結果として、数年間の年刊が手元にないと一塊の情報としては扱いにくく、最新の話題では必ずしもなく、生涯教育のための読み物でもない。 専門家としてのレベルの確認としても利用可能かもしれない。 内容評価は 、 値段は 。 年刊というだけで重厚で権威あるものを想定してしまい、扱いに困ってしまう。 通読して内容を話すには範囲が広すぎ、内容が語れないからこそ年刊という名に値するかも知れない。お勧め度は、 とします。

Feb25.2013(N)

No.308

介護がラクになる「たったひとつ」の方法

小山敬子  サンマーク出版(定価1400円+税、2011年9月初版)

 小山先生の著作三作目。今回は残念ながら「おとなの学校」のことは余り出てこない。表題の答えは「意欲」だそうである。 このキイワードを中心に、一般論の第一部と症例提示の第二部に分けて執筆されている。最後に意欲を引き出す10の鉄則も附記されていて親切である。 ただ、三冊を通して知りたかった職員の働きがいについての説明と「おとなの学校」の成功の理屈が最後まで当方には理解できなかった。 読み飛ばしたか、読みこなせなかったかは不明であるが、雰囲気だけ感じた通読となった。 結果として、「おとなの学校」は認知症のケアにおいてどう位置づけすべきかわからない。選択肢のひとつなのだろうか。 内容評価は 、 値段は 。 小山敬子先生は魅力的な方でした。ただ、残念なことにその魅力が書籍には余り表れていない。明確な論点のある本と期待したが、いささか的外れとなってしまった。お勧め度は、 とします。

Feb24.2013(N)

No.307

確認医事法用語250

甲斐克則 編  成文堂(定価500円+税、2010年11月初版)

 購入してから気づきましたが、初めての聞く出版社でした。巻尾の同じ出版社の他の刊行物案内を見ると「用語確認シリーズ」の書籍がならんでいました。 憲法、民法、租税法、環境法などなど。多分法律書を得意としている会社なのでしょうか。なにか楽しくなります。 本書も、医療安全関連として購入したものですが、本書を通して学ぶというより250の用語がどの程度すでにアタマに入っているかをチェックするにはうってつけの一冊と感じました。 別に編者が奨めているよう辞書代わりに使うのも一法かもしれません。一つの言葉に400字程度を用いて解説されるスタイルですから、要点がすぐ理解できます。 内容評価は 、 値段は 。 医事法、英語でmedical lawとなりますが、実際にまとまった法典はないそうです。実定法としては憲法から医師法などの他の法律からなり、国民の生命・健康を保障するための法です。 その周辺に生命倫理、医療倫理が位置づけされ、医事法自体も誕生して日本ではまだ40年程度と発展途上だと記述されています。お勧め度は、 とします。

Feb23.2013(N)

No.306

なぜ、「回想療法」が認知症に効くのか

小山敬子  祥伝社新書(定価760円+税、2011年3月初版)

 「おとなの学校」で全国に講演会行脚されている小山先著作。年代順に読み始めこれが2冊目。 講演会での自著の紹介時に、本書は専門的で他の二冊とは違うと話されており、期待して読み始める。 確かに医療、介護を提供する医療サイドからの視点で書かれており「専門的」の意味は理解できます。ただ、内容は一冊目と写真等の重複がないだけで、ほぼ同じ。 当然と言えば当然のことなのかも。行っている「回想療法」、「おとなの学校」の理論的背景がもう少し解りやすく描かれていて、 スタッフの満足が一部ではなく全体として得られるかどうかの答えを期待していましたが、三冊目に持ち越しとなりました。やや、不安といったところですか。 内容評価は 、 値段は 。 新たな取り組み関して医療としてのエビデンスを厳密に求める気はないのですが、余りにも症例を呈示して「うまくいっている」、「感動がある」と列記されても、 つらいところがあります。朝刊の一面最下段の書籍の紹介コーナーと同じに感じてしまいます。お勧め度は、 とします。

Feb22.2013(N)

No.305

夢見る老人介護

小山敬子  くもん出版(定価1300円+税、2008年10月初版)

 先日講演会で直接お話を聴く機会があり、内容に一部理解できないところもあって、講演者の小山先生の書かれた書籍を3冊(今のところ、これですべてのようです)を購入し、 まずは一番古いものより読み始めました。内容は講演会と同じ、小山先生のこれまでの足跡から始まり、現在の「おとなの学校」に至るプロセスがよく分かります。 高齢者の方にもう一度意欲を持って生きてもらうために必要なことは何かを追求し、幾度と訪れた壁をどのように突破してきたかが、書かれた一冊です。 問題提起ではなく、現場からの問題解決を中心に提示されていて、気持ちよく読めます。介護としての職員のやる気、満足にどのように繋がっているのか。 これが、当方の理解したかった一番のポイントなのですが、この一冊ではまだ納得できません。次の本に期待します。 内容評価は 、 値段は 。 くもん出版から出ているのは、「おとなの学校」での教材が一部「くもん」なのでしょうか。 そう思えるような、どちらかというとエッセイ風の一冊として読むべきなのかもしれません。お勧め度は、 とします。

Feb21.2013(N)

No.304

狂気の歴史

ミシェル・フーコー  新潮社(定価6000円+税、1975年2月初版)

 フーコーの初期の著作であり、代表作の一つとされる一冊。正常と異常の連続性の中で狂気を捉え、思い違いのもっとも純粋でかつ完全な形式と位置づけている。 社会や文化をポジティヴ、積極的、肯定的なものとネガティヴ、消極的、否定的な二面性性から構造主義から論じ、 以前よりの精神分析学や民俗学からの思想に対して発想法の大転換を求めた書籍である。 ただ文化的な面だけでなく、現実の問題として狂気を制約と掟のある社会がどのように扱ってきたか、どのように扱おうとしているかも、 労働、家族、言語、遊びとの関係からも論じられている。 特に第二部第四章の医師と病者の項で、古典時代からの薬を通しての考察があり、精神分析学を含めた議論は現在ではなく、歴史に学ぶ姿勢が強く求められているように感じます。 内容評価は 、 値段は 。 これでまだ、フーコーの著者の半分も読んでいないようです。全巻を読破するつもりは毛頭ありませんが、何冊読んでも一冊の数分の一も理解した気にもなりません。 訳者によると、フーコーを満喫すべき、とされても滝に打たれる行者の気分にいつもなっている自身に気が付きます。お勧め度は、 とします。

Feb20.2013(N)

No.303

新しいウイルス入門

武村政春  講談社ブルーバックス(定価880円+税、2013年1月初版)

 医師は学生の頃に微生物学、ウイルス学としてウイルスを最初に学習された方が多かった。少なくとも数十年前はそうでした。 気が付くとインフルエンザウイルス感染症は外来を含めて診療しますし、インフルエンザの迅速検査や治療薬についても毎年といってよいほど、学ばされています。 ふと考えると大元のウイルスについての知識がアップデートされてないのでは、と恐くなり購入した一冊です。 洋書の微生物学の標準テキストと共に読みましたが、そちらは本当に「標準」的で面白くとも何ともありませんでしたが。 本書を通して巨大ウイルスの発見からウイルスの生物進化論への関与を議論したい著者の気持ちの入った一冊ですが、 当方には生物学辞典による「限りなく生物に近い物質とみなす」ウイルスの定義が驚きであり、 このウイルスは生物ではないとする生物学者が大半という現実が自分のレベルの低さの再確認となってしまい、本当に落胆させられました。 内容評価は 、 値段は 。 巨大ウイルスの発見やその命名の理由など、現代のウイルス学を愉しもうとするにはよい一冊でしょう。 ウイルス学を愉しむ人は少ないかとは思いますが。お勧め度は、 とします。

Feb19.2013(N)

No.302

裁判例から読み解く看護師の法的責任

井上智子 他  日本看護協会出版会(定価2400円+税、2010年6月初版)

 病院が新しくなる際に一番心配なのが、慣れない職場での医療安全です。全員が新人と同じですから、もう一度勉強し直そうと購入した中の一冊。 全体としてはオーソドックスな書き方で、全体で160ページ程度の書籍ですが、最初の2章20ページを使って総論的な話があり、 次に論点を13に絞り各々実際の裁判例を取り上げながら看護師、医師、弁護士の立場から解説をしています。 次の用語集が登場し、最後にQ&Aにて終わりとなります。読みやすい反面、余りアタマに残らないかもしれません。 どちらかというと看護として初心者向けを前提として購入されるべきでしょう。 もちろん職種が違っても管理職の方には一番人数の多い看護職を理解するためには必要な本ではありますが。 内容評価は 、 値段は 。 医療安全でも医療訴訟関連のところが勉強する上で、一番知りたい反面、一番キツイところです。 ある程度勉強が進むと半分知った気になり、登場する裁判例が重要な判例であるが故に同じものが取り上げられるからかもしれません。 勉強の効率を上げるには自身にもう一工夫求められるでは、と考え込まされた一冊でした。お勧め度は、 とします。

Feb18.2013(N)

No.301

科学と人間の不協和音

池内 了  角川oneテーマ21(定価724円+税、2012年1月初版)

 科学が大いなる進歩を遂げ、市民生活や考え方に大きな影響を及ぼすようになっているにも拘わらず、むしろ科学は市民から遠ざかり、 神棚に祀られる存在と鳴っていることを憂慮して、著者が一連の著作で注文を出し続けていた。 それが今回の東日本大震災、フクシマの放射能問題に起こり、危惧が現実となってしまった。 科学が社会に役立つ部分のみ評価され、文化としての側面が顧みられなくなったのが一因と考えておるようである。 そういった論点で、科学者と素人、役立たない科学の立場、欲望と科学の関係、神話、宗教としての科学、科学の限界について順次述べられている。 いつもの池内先生の論調で、安心して読めます。 内容評価は 、 値段は 。 第一次世界大戦で毒ガスを率先して研究開発し、実践投入していった科学者のフリッツ・ハーバーが愛国心のため当然と発言し、 終戦後に敵国であった国々の科学者が弁護しノーベル賞を取っていることを初めて知り、驚いていましました。お勧め度は、 とします。

Feb17.2013(N)



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