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医学書 ブックレビュー

No.380

男おひとりさま道

上野千鶴子  文春文庫(定価562円+税、2012年12月初版)

 ベストセラーの「おひとりさまの老後」の続編にて男性版の一冊。3年前に単行本として出版されたものの文庫化である。やはり上野先生の本は恐い。 40代男性の4人に1人が非婚でシングル。こういったことを数字で示しながら言いたいことをビシッと書く。 読むと面白いのだが、後で心に何か突き刺さっているのが感じさせられる。深く考えずにサラッと読んだ方がよいのかも知れない。可能であれば前著とセットでどうぞ。 内容評価は 、 値段は 。 人生のピークがいつなのか、というところがある。振り返るといつだったかと。 「今がいちばん。人生のピークです」と答えるのがほとんど女性であるという一節であるが、なぜか納得してします。 男性というものの社会生活依存性を上野先生はよく書かれているが、理解はできるが、なぜが反駁したくなる気持ちにいつもなってします。お勧め度は、 とします。

May8.2013(N)

No.379

孤独死 被災地で考える人間の復興

額田 勲  岩波現代文庫(定価1160円+税、2013年2月初版)

 1999年に同名で出版されたものの新編集版である。したがってこの被災地は東日本のことではなく神戸のことである。 この時の孤独死の特徴が(1)一人暮らしの無職の男性、(2)慢性疾患を持病としている、(3)年収100万円前後の低所得者、というものであったと報告されている。 しかし、孤独死と独居死は別のものであり、混同したくないと著者は述べる。 そういった部分の含め、接する側も接しられる側もお互い人間であることを認識して被災からの復興に立ち向かう。そういった読み方のできる文庫です。 内容評価は 、 値段は 。 個人的には被災地を扱う書籍は苦手です。どういって良いかわからないからです。現場を知らないから、何をいってもウソになる。そんな気持ちになってしまう。 少なくとも神戸のときは広い意味で当事者であったので、読んでコメントしても大丈夫かなと考えた一冊です。お勧め度は、 とします。

May7.2013(N)

No.378

殿様の通信簿

磯田道史  新潮文庫(定価476円+税、2008年10月初版)

 「土芥寇しゅう」という江戸時代元禄期の大名の行状が書かれた資料に基づき解説された一冊。 6年前に単行本にて出版され文庫化。実際に取り上げられているのは数名のみで、具体的には徳川光圀、浅野内匠頭と大石内蔵助、池田綱政、前田利家、前田利常、 内藤家長、本多作左右衛門の8人である。加賀前田百万石の話を別にすると、結構有名どころが並ぶ。 内容は、一般に流布している情報と如何に資料が違っているかであり、歴史はそういうものなのでしょう。 例えば忠臣蔵で知っていると、そうあって欲しい姿で記憶しています。如何に女好きの浅野内匠頭であったとしても、です。 事実ある姿では、個人が見たい姿で見て、記憶する。医療を含め、普遍的なことなのでしょう。 内容評価は 、 値段は 。 著者の好みが少し偏っていて、その方向が当方には合わず、通読するのに苦しんだ一冊です。 どうも、最近は節約して新潮文庫ばかり読んでいるせいか、ペースダウンはなはだしく、つらいものがあります。お勧め度は、 とします。

May6.2013(N)

No.377

鉄道員は見た!

難波とん平、梅田三吉  新潮文庫(定価400円+税、2009年6月初版)

 関西の私鉄現役鉄道員が書いたホンネエッセイの一冊。10年前に「鉄道員ホントの話!?」として出版され、今回文庫化。 大元は「鉄子の部屋」と言う名でメールマガジンとして配信されていたものらしい。 大雨、酔客、痴漢、ラッシュの時の対応を含め業界者としての乗り物の内幕をうまく乗っけている。 医療にはほとんど無関係そうであるが、「運転手の持病」として、ひとつは過敏性腸症候群として運転中の突然の下痢への具体的な対処方法と、 もう一つは予想されていたこれも運転手の痔核の話として2編紹介されている。 他に鉄道に関した不正乗車、キセルの罰則や営業規則を利用した団体旅行での割引の話など、知っていて楽しいが、知る必要もない知識が満載である。 内容評価は 、 値段は 。 ウンチクが一杯であるが、ここまで行くと、という感がなくはない。ある種雑学が好きな方に向いた書籍でしょう。お勧め度は、 とします。

May5.2013(N)

No.376

戦国軍師の合戦術

小和田哲男  新潮文庫(定価438円+税、2007年10月初版)

 小和田先生の本は織田信長より2冊目となる。14年前の「呪術と占星の戦国史」が改題され文庫化されたもの。この方が内容を適切に説明している。 戦国時代の軍師の有り様を扱っており、黒田官兵衛以降の参謀型軍師をどうしてもイメージしがちであるが、呪術者型参謀が通常であった戦国時代を中心に描いている。 呪術が生活の一部であったその時代の現実からは当たり前であり、また、家臣の「やる気」を出させる手法の一つして必要であったと著者が締めくくっている。 面白く読める一冊なのだが、読むリズムが取れず、分量の割に苦労しました。多分、スタイルがなぜか大学の講義に近いからかもしれません。 内容評価は 、 値段は 。 通読すると「軍配者」、「足利学校」、「戦国時代」とキイワードを繋げるとなぜか、富樫倫太郎さんの軍配者シリーズが思い出される。お勧め度は、 とします。

May4.2013(N)

No.375

直観を科学する その見えざるメカニズム

デヴィッド・G・マイヤーズ  麗澤大学出版会(定価3800円+税、2012年4月初版)

 2002年に出版されたIntuition: Its powers and perils (David G. Myers)の翻訳。 心理科学が直観について語るべきことを見極め、直観についてのさまざまな発見を関連づけ、それらを日常に照らして考えるということが趣旨の一冊。 これもカーネマンとトゥヴァルスキーによる行動経済学を主体して論じた書籍となる。 カーネマンの本を2冊読んだ後では、出版の年代もこれが原著として一番古い関係もあって、新しい知識にはならなかった。残念である。 もう少し読み継いでいく予定であるが、ほぼ必要な範囲が解った気にはなる。 どうしても診断学を中心に、ヒューリスティックスとバイアスの関係という目で見てしまうのであるが、どう変わるか楽しみである。 内容評価は 、 値段は 。 どうしても出版された年代順と読んだ順番に左右されてしまう。そういった意味で理解いただくとして、現実の評価としてお勧め度は、 とします。

May3.2013(N)

No.374

零戦 その誕生と栄光の歴史

堀越二郎  角川文庫(定価552円+税、2012年12月初版)

 零戦の設計者が書いたその歴史の文庫。他にも九六式艦上戦闘機、雷電、烈風といった世界航空史でいうところの名機を次々に送り出した設計主任である。 ちなみにご存じとは思いますが零戦は零式艦上戦闘機の通称である。40年前に新書サイズに発行され、30年前に文庫化されたものの再録である。 なぜ今さら、という疑問は今年夏のジブリ映画関連書籍と知れば氷解するでしょう。詳細は本書をお読み下さい。 今回取り上げたのは、宮崎駿監督が著者を評して言った「堀越二郎は、人前ではじつに平静を装って円満に見えるけれども、やりたいことをなんとかしてやりたいと思っている・・・ じつは要求にこたえて零戦を作ったんじゃなくて、自分のやりたいことに軍の要求を合わせただけなんじゃないだろうか!?」という言葉を紹介したかったからです。 膨大な努力の結果としての自身にたいする圧倒的な信頼が生み出す言葉にはただ脱帽です。 内容評価は 、 値段は 。 内容は軍事関係に興味がないと通常は購入に値しないでしょう。ただ、今回はジブリ関連で宮崎監督が好きなら読みどころは少なからずあるかもしれません。お勧め度は、 とします。

May2.2013(N)

No.373

天皇と東大(1)大日本帝国の誕生

立花 隆  文春文庫(定価714円+税、2012年12月初版)

 8年前の著作を4分冊化して文庫となった第一巻。日本近現代史の最大の役者は天皇であり、その最大舞台は東大だった、 という一行にまとめられる四冊で2000ページ超の大著である。明治からの歴史をこういう断面でみるとどうしても戦争の話が中心となっていますが、 東大医学部の箇所を読みたくて購入した一冊です。第二章で扱われており、種痘所、西洋医学所、大学東校、東京医学校と繋がる系譜だそうです。 このように1858年の通称お玉ヶ池種痘所が東京大学医学部の源流です。つまり医学部の話は種痘所の話であり、日本の種痘の話となります。 伊東玄朴、川路聖謨、松本良順、福沢諭吉、緒方洪庵、ポンペなど名前だけは知っている偉人が並ぶ。 特に大阪大学医学部関連でしか知らなかった緒方洪庵の関与には驚いた。 内容評価は 、 値段は 。 「血液循環の理すら会得しないのに心臓病の講義を聴く」ような学業の立つ見込みのないレベルの低い学生の首を約八割切った招聘医師であり教官である ミュルレルの話は身につまされるものである。みなさんはどうお考えだろうか。お勧め度は、 とします。

May1.2013(N)

No.372

おひとりまさの老後

上野千鶴子  文春文庫(定価600円+税、2011年12月初版)

 「スカートの下の劇場」などの著作をもつ東大名誉教授でありフェミニズムで有名な上野先生の6年前のベストセラーの文庫化。 タイトルが大嫌いで食わず嫌いで読まなかった、読めなかった本です。辻元清美先生との対談など、他の本は読んでいてアタマの切れる方の恐い本というイメージでした。 文中に、「いっしょに暮らそう」という悪魔のささやき、やさしい娘でいられる距離など最初からドキィとする言葉のオンパレードである。 日本社会が家族中心、家族単位で考えている背景を個人単位に代えていく必要を時代が求めているというのが趣旨であり、結局最後はひとりになるだから・・・という一冊である。 住居、結婚とは、などと続き、ひとりで安心して死ねる人生ということになる。 内容評価は 、 値段は 。 女性版の「おひとりさま」らしく、男性版である「男おひとりさま道」とペアらしい。どうなっているか、興味のあるところ。 著者自らがあとがきで書いているように、現在の社会保障制度では、老後がゆっくり楽しめる年金補償は今が高齢の方のみの話であり、 世代が違えば大変怖ろしい未来が待っていると認識している方が多い。一種の世代間戦争の様相である。その中で「おひとりさま」は許されるのであろうか。 真面目で恐い内容のため、お勧め度は、 とします。

Apr30.2013(N)

No.371

腸はぜったい冷やすな!

松生恒夫  光文社新書(定価760円+税、2012年12月初版)

 どうも今はやりのライフスタイルから見た大腸癌予防について書かれた新書の一冊ということになります。 もちろん、著者はその道の専門医ですが、他にも同じようなテーマでの書籍が数冊あるようです。 全体の半分近くが大腸癌の総論的な話でがんの中で大腸癌の死亡率が女性第一位、男性第三位であることなどが紹介されています。 他は食事や運動等の推奨されるライフスタイルについて著者の考えが具体的に列記されています。ここが、この新書のウリなのでしょうか。 図表をふんだんに使用して解りやすい内容となっています。これぞ、一般向けの新書という本自体のスタイルと思われます。 内容評価は 、 値段は 。 最近多い「!」マーク入りのタイトルで、リスクファクター満載の、かつ中心のいわゆる「リスクファクター疫学」という観点を使っている、 そして、個人の行動変容を前提として書かれている、などの当方が個人的に感じている共通する特徴を有する新書です。 「だから、どうなんですか?」と訊かれるとこまってしまうのですが。お勧め度は、 とします。

Apr29.2013(N)

No.370

自閉症スペクトラム障害

平岩幹男  岩波新書(定価760円+税、2012年12月初版)

 自閉症全般について書かれた岩波新書の一冊。1943年にカナーにより最初に報告された自閉症(autism)から1944年のアスペルガーによるアスペルガー症候群(高機能自閉症) の報告までを連続した一連の障害と考え、自閉症スペクトラム障害として捉えられている。 疾患概念の紹介から、幼児期のカナー型自閉症の診断と発達障害について触れ、次にその療育と高機能自閉症のトレーニングが解説され、 社会生活訓練や幼稚園から大学、社会人までの現実の対応や生活を支えるための能力開発について書かれています。 成人での高機能自閉症スクリーニングとして(1)抽象的な表現が苦手(2)感情が共有できない(3)場の雰囲気が読めない(4)こだわりが強い (5)対人関係でしばしば困難を抱える(6)急な変更に対応できなかったり戸惑う(7)何かに集中すると他のものが見えない、 といった著者オリジナルな質問票が紹介されていますが、どこにでもいそうな気になってきます。 内容評価は 、 値段は 。 新書と侮ると痛い目に遭いそうな一冊です。読み物としてというより学ぶための本ということになります。 ただ、成人が主たる対象であるものには、どうしても発達障害や療育という主題に思えるため遠い距離感を感じてしまいました。お勧め度は、 とします。

Apr28.2013(N)

No.369

狂気の偽装

岩波 明  新潮文庫(定価476円+税、2008年11月初版)

 6年前に出版されたものの文庫化であるが、この当時、精神科への受診患者数は急増していたらしい。 精神科の入院から外来診療へのシフトを厚生労働省が誘導した結果という面はあるが、心療内科、メンタルヘルス科などの標榜を広げたためかもしれない。 このように受診者は増加したが、精神科患者が本当に増えていたのか、には疑問が持たれている。 現場の実感としては重症者の数に変化はなさそうで、軽症か中等症の方の受診が増えた結果とされている。 精神医学者がコピーライターよろしく、アダルトチルドレン、ゲーム脳、殺人者精神病などの流行語まがいの新病名を創作する。 精神疾患の原因はほとんど判っていないのにさも根拠がありそうに新病名を付ける。そういったところに起因しているのでは、というのが本書である。 内容評価は 、 値段は 。 解説の永瀬さんの言葉。「人間、生きていれば様々なストレスがある。条件のいい仕事に就きたい、恋人が欲しい・・・ この程度のストレスで己を美化し、深く傷つき、ネットの世界に逃げ込んでしまう日本の若者は、おめでたい限りである。」全く同感である。お勧め度は、 とします。

Apr27.2013(N)

No.368

発展する地域 衰退する地域

ジェイン・ジェイコブズ  ちくま学芸文庫(定価1500円+税、2012年11月初版)

 地域経済論を考える上で必読とされている一冊。原題は”Cities and the wealth of nations: Principles of economic life”で1984年に出ており、 邦訳も早くその2年後には出版されている。地域医療、福祉は地域経済の中で重要な位置を占め、いろんな意味で相互に影響の出る関係にある。 地域医療を再生するには地域経済のことも理解していないといけないと感じ、購入した書籍。 普通の経済学書よりは読みやすいが都市計画論であるため話がグローバルでついていくのがやっと。 結局は、地域が持ついろんな資源を利用し、住民の創意を活かした活動を行うことで、雇用や金融、エネルギーをすべて地産地消にする以外に地域の経済発展はなし。 かつてのベネチアを見習うべし、というのが趣旨のようです。 内容評価は 、 値段は 。 当たり前のようですが、医療関係者が医療のみの勉強で生きていける時代ではないでしょう。 でも、都市計画思想論までは不要からもしれません。お勧め度は、 とします。

Apr26.2013(N)

No.367

あの人に会いたい

NHK「あの人に会いたい」刊行委員会  新潮文庫(定価667円+税、2008年11月初版)

 NHKが誇る映像音声資料から放映されたものの内39人の方を文書化したもの。結局一人も医療関係者は入っていません。 こんなものかもしれませんが、一般論からして、死してももう一度会いたいと思われるほどの医療人としての先人が映像に残っている気がしないのは当方だけでしょうか。 個々の方の文章の後に一言、言葉が最後に残されています。いつくか挙げると、 「自分のためだけに生きるのは卑しい」(三島由紀夫)、「一生、創作ですから」(升田幸三)、「かたよらない、こだわらない、とらわれない心」(高田好胤)、 「子どものような好奇心をもち続けること」(盛田明夫)、「大きな夢をもて、小さな一歩を踏み出せ」(竹内均)。 内容評価は 、 値段は 。 どうしてもひとりひとりにさかれるページが少なく残念でした。 一番心に残ったのは「ええ時もあるし、悪い時もある。それで暮らしていくんじゃねぇか」(成田きん、蟹江ぎん)でした。お勧め度は、 とします。

Apr25.2013(N)

No.366

哲学の練習問題

西研  河出文庫(定価760円+税、2012年11月初版)

 日常で疑問に思うことを哲学として72の問題として提起し、それに答える形式で生きると言うことを根本的に説明しようとした一冊。 文章は平易であり、イラストを多数使い、どこから読んでもいいように解りやすさを一番にした工夫された書籍。 新聞日曜欄の連載を15年前に「自分と世界をつなぐ哲学の練習問題」として出版したものの文庫化。 認識論、意味世界、物理学との関係、感情、生とは、善悪論などが取り上げられているが、当方が興味を一番持って読んだのは「正義とは」でした。 医療倫理としていつも気になる論点で、その人となりの正義論が好きだからですが、今回はロールズの正義論から始まり通り一遍等の解説で残念でした。 本の趣旨から予想はされていましたが、著者の好みを聞きたかったものです。 内容評価は 、 値段は 。 わかりやすさを追求すると個性的でなくなる、という二律背反の部分なのでしょうか。 でも個性的であれば難解となり当方では逆に理解不能となってしまうので勝手な言い分でしょう。お勧め度は、 とします。

Apr24.2013(N)

No.365

こころと脳の対話

河合隼雄・茂木健一郎  新潮文庫(定価362円+税、2011年7月初版)

 二人の分野が異なる知の巨人による3回の座談会を収録した一冊。 一流となるとある程度分野が違っていても調和するだろうが、二人には「こころ」という共通のテーマがあり、展開が期待され購入。 個々の話題より箱庭が出てきてびっくりした。ヨーロッパで生まれてアメリカに導入され、マニュアル化・標準化される過程で変質し、 サンドプレイとして砂があったものが無くなっていったことなど、知らないことだらけでした。箱庭の言葉くらいしか知らず、猛反省。 茂木先生のクオリヤという言葉も初めてでした。意識のなかで立ち上がる、数量化できない微妙な質感のことなのだそうです。 知らないことだらけの、お恥ずかしい一冊となりました。 内容評価は 、 値段は 。 「診断を下すことが患者を苦しめる」や「わかった気になる落とし穴」など、曖昧さを残した関係のあり方を認めるこころのありようが身に沁みます。お勧め度は、 とします。

Apr23.2013(N)

No.364

物質のすべては光

フランク・ウィルチェック  ハヤカワノンフィクション文庫(定価940円+税、2012年11月初版)

 ノーベル物理学賞受賞者により描かれた現代物理学が明かす力と質量の起源についての書籍。 3年前に出版されたものの文庫化であるが、今回早川書房の「数理を愉しむ」シリーズの一冊として登場。 素粒子物理学の一般向け解説本というのがひとことでいう内容紹介となるのであるが、解りやすいと言われても数式含め非常に難解である。 それでもこれ以上解りやすい本は存在しないと終わりの解説でも述べている。 チンプンカンプンとは言わないが、ジョークの部分では笑える余裕があるが、なかなか解った気にはさせてくれない本である。 ファインマンやゲルマンとの交流も触れられているが、やはり天才の領域なのだろうか。 内容評価は 、 値段は 。 この手の本が好きな方、チャレンジ精神旺盛な方向きでしょう。当方は、気持ちはあるのですが、勝ったためしはありません。お勧め度は、 とします。

Apr22.2013(N)

No.363

シンプルに暮らす100の方法

イレイン・セントジェームズ  PHP文庫(定価552円+税、2011年11月初版)

 生活を、人生をシンプルにすることがシンプルライフ。本書はシンプルライフの第一人者が暮らしのぜい肉をとり、生き方を楽にするコツを100個教えてくれる一冊。 元は9年前の「人生を複雑にしない100の方法」として単行本にて出版されている。 内容は、いろんなものをドンドン捨てて止めていくわけであるが、けっしてケチになっていくことではないと何度も出てきます。 シンプルライフとは結局は時間管理の原則ではないかと、通読して感じました。 お金以上に大切なものがあるとしたら、いろいろ候補があるでしょうが、時間という要素は必須だからです。 内容評価は 、 値段は 。 買い物を含めての生活、ガーデニングのこと、つきあいのことなどたくさん紹介されています。 医療関係として薬剤はアスピリン以外常備薬は捨てよと書かれていて、なるほどと思いました。お勧め度は、 とします。

Apr21.2013(N)

No.362

人間の建設

小林秀雄、岡潔  新潮文庫(定価400円+税、2010年3月初版)

 言わずと知れたお二人の対談である。亡くなられて既に30年前後経っています。47年前の対談を全集に収載し、それを文庫化。 「躾けられて、そのとおり行為するのと、自分がそうとしか思えないからその通り行為するのと、全く違います。」という言葉を紹介したく、 今さらながらの本を取り上げた次第です。昔の受験に問題としてよく出てきた二人の名前は違う意味でも懐かしいかもしれません。 前出の言葉は直観(直感ではありません)、確信、情熱という言葉の繰り返しの中で登場します。 今の病院は大阪の辺境地にあり、そこで一番必要なものとして考えていたものが列記され、必要なこととして行動できると、再確認できた一冊です。 内容評価は 、 値段は 。 プラトン、アインシュタイン、ドストエフスキーなどの人物や無常についてのなど、 小林秀雄先生が大切されたことが強弱は別にして一望できる気がします。お勧め度は、 とします。

Apr20.2013(N)

No.361

メリットの法則

奥田健次  集英社新書(定価740円+税、2012年11月初版)

 医療でいうところの行動変容について考えていると結局は行動分析学に行き着く。 タイトルのメリットは人名ではなく、単に人間は行動した直後にメリットを生じると、またその行動を生じるというテレビ番組から造語でいうメリットである。 減塩、栄養指導、運動の奨励、禁煙など指導を有効に行う手段やその根拠が欲しくて購入した一冊。 著者は専門行動療法士、心理療法士で40歳過ぎの方だそうです。そもそも行動療法士という資格自体を当方は知りませんでした。無知ですね。 副題に実践編とありますが、死人テスト、ビデオクリップ法など基礎的な知識が紹介されています。 また、好子、嫌子、出現、消失、という4つのキイワードを用いて行動を分析する手法が丁寧に説明されていて理解しやすいものになっています。 内容評価は 、 値段は 。 入門編としては適しているのでしょうが、ボックスを使用した行動分析の事例が多すぎ若干食傷気味となります。 巻尾の主要参考文献などを利用してこの分野をもう少し散策しなければ本書は本当の価値が理解できないかも知れないと感じてしまいました。 保留という意味を少し含めて、お勧め度は、 とします。

Apr19.2013(N)



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