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医学書 ブックレビュー

No.180

肯定の心理学

熊倉伸宏  新興医学出版社(定価2500円+税、2012年10月初版)

 以前に同著者の面接法の書籍で感じるところがあって、新著を購入した。正直、当方には全く合わず、残念。 プロローグにある、人が生きることを否定したときに、医師としてどのようにそれを肯定するように理解し対応するか、という書籍である。 ただ、副題の「空海から芭蕉まで」とあるように、医学書というよりは哲学書という内容であり、 心理学をこのような観点から解説したことに価値があるのだろうが、当方のように学問的知識や素養のない人間には全く理解不能であった。 内容評価は 、 値段は 。 精神科、心療内科的なものに興味があり、周辺の文学、哲学に造詣の深い方であれば納得して読める一冊かも知れません。 何でも買って読もうとするのがいけないと再度教えられた書籍でした。お勧め度は、 とします。

Oct19.2012(N)

No.179

Medicine —医学を変えた70の発見

ウィリアム・バイナム他  医学書院(定価4000円+税、2012年9月初版)

 最近よく出版されるようになった医学の歴史関連の一冊。 この手の本は読み物というよりは絵本、美術書に似た雰囲気がある。 本書もオールカラーで古代エジプトの外科パピルスから現代の最新機器までヴィジュアルで紹介され、見応えがたっぷりである。 勉強と言うよりは医学関連の雑学をどれだけ知っているか、と言う意味でも面白いかもしれない。 当方は、別に医学史に興味が有るわけではないが、巻尾でも触れられているロイ・ポーターの他の書籍と比べても読み応えという点では劣るが、 見栄えという点では優れた一冊となっており、購入する価値のある一冊である。 内容評価は 、 値段は 。 医学を変えた70とは何か、何が入っているか、という意味でも興味深いものがあります。お勧め度は、★★★☆☆とします。 とします。

Oct18.2012(N)

No.178

星をつくった男

重松 清  講談社文庫(定価629円+税、2012年9月初版)

 直木賞作家の重松清さんが阿久悠さんとその時代をテーマにしたノンフィクションの一冊。3年前に出た書籍の文庫化。 誰もが知っている歌の作詞者として5000曲にも及ぶ足跡を残し5年前の八月に亡くなった歌謡界の巨人を生い立ちから紹介したもの。 歌に興味があるか、人間に興味があるか、どちらでも読み応えたっぷりである。 37歳の独立前の言葉で、「特技は?」に「本当のことを誰にでも言えること」と答え、 「一番好きなことは?」には「競争相手をコテンパンにやっつけること」と返すそのトンガリ振りに脱帽する。 また、五十歳前後で作曲家である小林亜星さんや森田公一さんとの曲作りでのやりとりがプロとプロの関係であり、職業とは何か、を感じさせるエピソードが満載である。 内容評価は 、 値段は 。 医学とは全く関連性がないが、仕事を楽しく感じるに必要なものが詰まっている本だと思える、そういった一冊です。お勧め度は、 とします。

Oct17.2012(N)

No.177

人間はひとりでは生きられない

ダライ・ラマ十四世  学研M文庫(定価619円+税、2012年9月初版)

 1995年に出版されたチベット仏教の精神的指導者ダライ・ラマ十四世の伝説的なロンドン講演録を文庫化されたもの。 ちなみに「伝説的な」は出版社の売りで、当方には全くその伝説は知らなかった。内容は理解しやすい仏教書の入門編といったところか。 政治的見地でも読みたい方はいるかも知れないが、本書では余り深入りしていない。 個人的には「チベットの死者の書」にあるように死についての話が多いかを想像して購入するも、逆に生の話が主体で、そのためのこころの話が多い。 考えれば当然のことではあるが。怒りや憎しみの感情のコントロール法、愛と慈悲を身につける手段、よい生き方とは何かなどを語っている。 内容評価は 、 値段は 。 思った以上に読みやすい文庫であるが、正直この手の本に多いのだが、くどく感じてしまう。こころの鍛錬が足らないせいでしょうか。お勧め度は、 とします。

Oct16.2012(N)

No.176

家族を亡くしたあなたに

キャサリン・M・サンダーズ  ちくま文庫(定価900円+税、2012年9月初版)

 原書は「Surviving grief and learning to living again」というタイトルで1992年に出版され、2000年に翻訳出版されたものの文庫化。 副題の「死別の悲しみを癒すアドバイスブック」がカウンセラーである著者がこの一冊で何を言いたいのかが言い表されている。 プロローグから著者の体験、叔母、父、息子、兄夫婦、娘の夫、母、友人と次から次に訪れる死別の体験が述べられ、圧倒される。 死別のタイプと過去の聞き取り調査からの分析を併せて紹介し、これから生きていく際の糧を提供するものである。 巻尾にて解説者が映画「おくりびと」から原作者の「いのちのバトンタッチ」を紹介している。看取る者もいつかは看取られる者となる。死は皆に平等に訪れる。 だからこそ、死からお互いに学び合う必要がある。 内容評価は 、 値段は 。 内容からはどうしてもヘビーな話になってしまう。 今も精一杯生きて欲しいという願いのバトンタッチになるのかなあ、と思いながらの読了となりました。お勧め度は、 とします。

Oct15.2012(N)

No.175

ギリシア・ローマ名言集

柳沼重剛 編  岩波文庫(定価560円+税、2003年1月初版)

 ギリシア時代とローマ時代の二部編成で紹介されている一種箴言集である。 同文庫に収められているモンテーニュの著作等とは違い、ことわざの来歴や故事名言とされているもののルーツが実は若干違ったという読み方ができる一冊である。 例えば、カエサルの「賽を投げろ」。通常は「賽は投げられた」となっているが、その差を単文の解説で示している。 医療に関連した項目はほとんど無く、敢えて紹介すると「靴にこっても痛風にかかる、贅をつくした指輪をはめてもひょうそにかかる、冠を戴いても頭痛はする。」 (プルタルコス)となります。 内容評価は 、 値段は 。 ギリシア時代にことわざで登場する「人間は人間にとって神である」が、ローマ時代には「人間は人間にとって狼である。」に変貌しているのには驚かされます。 今回のお気に入りはアンピスの「飲め、遊べ、人は死ぬもの、地上ですごす時は間はわずか、死んだが最後、死は不死ときている。」お勧め度は、 とします。

Oct14.2012(N)

No.174

コミュニケーションを学ぶ

高田明典  ちくまプリマー新書(定価780円+税、2012年9月初版)

 コミュニケーションを大胆に記述した一冊。 大胆と言っても、聞いたことがない自説を述べているというのではなく、コミュニケーションを技術(スキル)と見切り分析した書籍です。 言葉というマインドを持った道具と扱うものとしてのコミュニケーションをスキルとする、という意味です。 詳細は本書に譲るとして、次の点が強調されています。コミュニケーションは技術もしくは知識として習得される、 ただ、そのためにはまずコミュニケーションへの意思が必要であり、その上、コミュニケーションするということの意味を考えることが重要となる。 そのために状況、目的、相手別に解説されています。 内容評価は 、 値段は 。 確かに、コミュニケーションのスキルとしての側面とシステム的な知識は整理され、理解されやすい形で提供されています。 具体的に実践するところまでは記述されていないため、「入門編」なのかもしれない。お勧め度は、 とします。

Oct13.2012(N)

No.173

ヒトはなぜ眠るのか

井上昌次郎  講談社学術文庫(定価760円+税、2012年9月初版)

 東京医科歯科大の活躍された日本での睡眠医学の泰人である井上先生の書籍。20年近く前に出版されたハードカバーの文庫化であるが、歴史を感じる内容である。 日本での睡眠医学の推移に余り関心がなく、情報も持ち合わせていないが、臨床からすると在宅酸素療法がまず普及し、 その後に睡眠時無呼吸症候群がもてはやされたと記憶する。 どちらもエビデンスのある治療法と推奨され、すぐに保険収載となったが、今からするとメーカーサイドのいわゆる「病気のブランド化」の戦略の一環であったのかもしれない。 当初より、睡眠を医学として捉えていた数少ない医師であり、分厚い洋書に心折れた人間は井上先生が書かれた本を入門書として購入していた気がします。 内容評価は 、 値段は 。 内容のレベルは決して入門でなく、また、臨床面の記述がやや弱いことを附記しておきます。なぜが懐かしく感じる一冊です。 お勧め度は、 とします。

Oct12.2012(N)

No.172

提言—日本の高齢者医療 臨床高齢者医学よ興れ

藤沼康樹 編  カイ書林(定価3600円+税、2012年6月初版)

 家庭医・病院総合医教育研究会(Consortium for Education of Generalist)が2011年12月24日に開催した第一回研究会の活動内容を報告した書物である。 従って、単に老年医学を論じたものではないことに留意が必要。書籍は、同じ出版社から出た「新・総合診療医学—家庭医療学編」「病院総合診療医学編」 の姉妹本と言った方が判りやすい。 研究会自体は同年8月に設立され、趣意書にて「Case based learning + Lectureを柱とする症例検討会およびプラクティカルな教育実践報告の場である」と定義され、 「本研究会を、ジェネラリストを目指す人たちを育てるTeachersの会として設立した」を明記されています。 本書の内容をこの趣意書が一番的確に表していると思われます。具体的な内容は座談会、症例報告、海外の臨床高齢者医学の実践報告など盛りだくさんです。 内容評価は 、 値段は 。 興味ある方には情報収集として価値のある一冊ですが、好みは分かれるかもしれません。お勧め度は、 とします。

Oct11.2012(N)

No.171

未完のファシズム

片山杜秀  新潮選書(定価1500円+税、2012年5月初版)

 組織論としてよく提示される、昭和の軍人たちが何を考え1945年の滅亡へと至ったかを考察した一冊。 明治から日露戦争、第一次世界大戦時の青島戦役そして昭和の敗戦にいたる道が著者の目からどのように見えるかが述べられている。 小畑敏四郎、石原莞爾、中柴末純、酒井鎬次など主要登場人物一人一人を通して丁寧に解説されていく。 「持てる国」と「持たざる国」、皇道派と統制派、八紘一宇、「しらす」と「うしはく」、闘戦訓と戦陣訓、「真鋭」という言葉など、うなるような解説がならぶ。 著者はこの書籍からの教訓として「背伸びは慎重に」「イチかバチかはもうたくさんだ」「身の程をわきまえよう」「転んだときの痛みや悲しさを想像しよう」 などと締めくくっています。 内容評価は 、 値段は 。 戦争、社会とうテーマではなく、医療という組織論からも読みやすく、今の政治状況にも当てはまる気もします。 「当たり前のことを改めて噛みしめておこう」という著者の言葉が重く感じられます。 お勧め度は、 とします。

Oct10.2012(N)

No.170

不明熱を減らすための外来発熱診療ガイド

大滝純司 監修  丸善出版(定価3600円+税、2012年8月初版)

 最近、なぜかよく目にする発熱をテーマにした書籍。 序文で大滝先生が書かれているように診療所などの一次医療機関の外来で発熱の患者を診察する医師のための参考書というのが本書の位置づけである。 いわば不明熱の入門書として推奨され、一次診療機関の外来で可能な診療内容に限定して記述されており、 また、「発熱+特定の症候」という区分を中心に編成されていることを特徴としてまとめられた一冊である。 発熱診療の総論からはじまり、頭痛、咽頭痛などの特定の症候との組み合わせから各論が16項目取り上げられて、 結局は感染症診療の原則、外来での抗菌薬療法、培養・検査で締めくくられているラインナップと編者の二人があとがきに述べているように 感染症からの視点でこの本が成り立っていることが明らかにされている。本書は「不明熱」が主でなく、あくまでも「発熱」を扱っているので誤解のないようにされたい。 内容評価は 、 値段は 。 読みやすく、解りやすい内容であるが、分担執筆のマイナスの面が出てしまい、一冊で何を言いたいのかが余り見えてこない。 ただ、若さに満ちあふれている書籍であることは確かである。お勧め度は、 とします。

Oct9.2012(N)

No.169

研修医目線でわかるERカンファレンス・ライブ

田中和豊  株式会社シービーアール(定価3000円+税、2012年7月初版)

 本書は、雑誌『別冊ERマガジン』に連載されている 「済生会福岡総合病院臨床研修部カンファレンス・リポート」の症例集を初回から第30回まで集めて編集し直したものが基になっている。 雑誌自体は季刊だったはずで、とすると7年以上かけてのものを書籍したことになる。 内容は著者自らが姉妹本としている計3冊の書籍と他の連載中の記事「臨床医学航海術」やある意味一番身近なケアネットDVDシリーズ『Step By Step!初期診療アプローチ』 を合わせると臨床医学オリエンテーションから診断学に行き、検査学をへて実際の症例に行き着くというフォローができる。 治療学がまだ弱いが著者自身が書物の相互関係を明示しており、今後執筆されることが期待される。 内容評価は 、 値段は 。 症例は新たに手が加わっており、参考文献も新しくなっている。 読みやすく著者らしい丁寧な作りの一冊です。安心して読めます。お勧め度は、 とします。

Oct8.2012(N)

No.168

House: Season Eight (Final)【DVD】【Import】

Hugh Laurieその他  Universal Studios(定価4977円+税、2012年8月初版)

 惜しまれながら今回完結した医学ドラマの最終シリーズ。 日本語版はまだですが、ERやグレーズアナトミーを合わせてチェックされていた方も多いのではないでしょうか。 医療としての内容が高度であり、うなる方が多かったことも人気のあった理由ですが、主はもちろん主人公ハウスであり演じるヒュー・ロウリーの力量でしょう。 医学の教育の一環としてCinemedication (Cinema+Medicine+Education)として利用されている方も多くいるでしょう。 当初の「患者を信用しない」という姿勢から医療倫理として、また、単にいろんな疾患のプレゼンとしての教材としても利用価値がいろいろあると思われます。 ただ、今回がファイナルであり、最後のウィルソン含めての行動はいろんな評価、考えがあるでしょうが、個人としては納得できるものでした。 内容評価は 、 値段は 。 ご苦労様を言いたくて、DVDでかつまだ輸入盤しかない状態のものを紹介してしまいました。もうすぐ日本語版が出るでしょうから、 最高と言われた医療ドラマの最後をご覧下さい。今回は個人的趣味で、お勧め度は、 とします。

Oct7.2012(N)

No.167

精神分析学入門

フロイト  中公文庫(定価1143円+税、1973年11月初版)

 実は今回の原稿を一度は紛失して再度書こうとしたが、定価が1360円の書籍という条件のみでどの本か探すはめとなり、 一度は頑張ったがやはり見つからず途方に暮れた。大昔の本で確認したいことがあり手元にあったフロイトの本で今回は・・・ということにする。 原著は約100年前のもので、翻訳自体も40年前である。現時点で岩波書店から全集が刊行中だから新たにフロイトに挑戦中の方もいるかも知れない。 「精神」と「分析」という格調高い言葉に乗せられ購入したのは良いが内容はさっぱり理解不能であった記憶がうっすらとあるが、 今回も第二部の「夢」のところは絶壁のように難攻不落であった。「しくじり行為」や「ノイローゼ」という他の二部についてもさらに深刻で、 やはり向いていないことを確認するはめとなる。 内容評価は 、 値段は 。 何回か手に取っているがいつかは理解できるかもと思い、そのたびに同じ落胆になることを繰り返している書物です。 合わないのか、当方の頭がダメなのか、と思ってしまう一冊です。 お勧め度は、 とします。

Oct6.2012(N)

No.166

どうする?家庭医のための“在宅リハ”

佐藤健一  医学書院(定価4000円+税、2012年9月初版)

 医学書院が長年発行している「総合診療ブックス」シリーズの一冊。 共通の背表紙にて1冊は少なくとも皆さんお持ちかと思いますが、最近新刊が出ていず残念がっていた方も多かったのではないでしょうか。 待望された一冊のテーマは「在宅リハ」で単著にて発行され、最後まで著者の熱意が伝わってくる内容となっています。 在宅でのリハと在宅に向けてのリハ、そのための住宅改修のノウハウ、廃用症候群予防の視点、認知症やうつなどの精神面への介入、 家庭医としてどのように在宅リハを成功に持って行くのか、が順次述べられています。 ここまで家庭医が行うのか、というところまで、いわば直球勝負にて真正面から取り組んでいる姿にはしびれます。 内容評価は 、 値段は 。 在宅リハというタイトルで腰が引けてしまうのですが、食わず嫌いにならないよう手に取ると案外日常生活の知恵が落ちています。 お勧め度は、 とします。

Oct5.2012(N)

No.165

発熱性好中球減少症の予防と対策(改訂版)

田村和夫 編  医薬ジャーナル社(定価4300円+税、2012年8月初版)

 昨年に米国感染症学会による発熱性好中球減少症のガイドラインが改定され、次に日本臨床腫瘍学会による日本独自のガイドラインが策定され出版された。 それを踏まえて、2010年1月に同名で出版された初版に手を入れ改訂版として刊行されたもの。2年半で改訂版を出そうとする姿勢は評価される。 ただ、各分担執筆者がどのようにそれに答えているかを見ようと、文献の新しさで確認してしまう。 今になって古い文献を参考にされた可能性があるが、きびしく2010年以降での引用された文献の比率をみると1割未満がほとんどであった。 新しく出たガイドラインさえ引用されていないものも見られ、「序」で触れられている編者の気持ちが行き届かなかったのかもと思われる。 内容評価は 、 値段は 。 初版を持っていない方、出版されたガイドラインが理解しにくい方が対象となる書籍かもしれません。ただ、分担執筆の悪い面が出たようにも思える一冊です。 お勧め度は、 とします。

Oct4.2012(N)

No.164

医療事故の舞台裏

長野展久  医学書院(定価2500円+税、2012年9月初版)

 医療事故を25ケース取り上げ、それを如何に日常臨床に還元するかを説明した一冊。 取り上げているケースは大半が有名なもので、誰もがどこかで聞いたことがあるが、それを診療にフィードバックしていないと思ってしまう内容である。 理解しやすく、それでいて淡々と進む。各ケースが身にしみてくるといった方が理解しやすい。 主に、腰椎穿刺、緊急気道確保、中心静脈穿刺などの医療スキル・テクニックとインフォームド・コンセントの二つの観点から説明されている。 医療側の思い込みと患者側の感情の間の一種コミュニケーションギャップが重大な結末を迎えるプロセスが著者の考えも含めて丁寧に提示されている。 内容評価は 、 値段は 。 医療安全についての書籍はどうしても似通ってくる。しかし、本書は重苦しくなく読め、研修に行った感覚で通読可能の書籍を思われる。 お勧め度は、 とします。

Oct3.2012(N)

No.163

入門 医療政策

真野俊樹  中公新書(定価880円+税、2012年8月初版)

 医療経済学、医療経営学の専門家が医療政策全般について語った新書の一冊。 専門とする学問的見地から現在の医療政策を分析し、問題点を抽出、列記して明確にしている。 その上で、緻密で理論に基づいた政策決定がなされるように「医療政策学」の確率が必要と説いている。 特に、医療自体の経済性の側面や現実的な医師不足の実態と対応策については興味を持って読める。 ただ、どちらかというと分析主体の書籍のため、著者の考える解決策が読めると思って通読するとがっかりする部分があり、 あくまでの現状を確認したいという意味で読まれることをお奨めする。 実際は「解決策」なるものは他の書籍やネット上で氾濫しているので、敢えて中立的な見地で執筆されたと推察します。 内容評価は 、 値段は 。 医療に関わっているであれば、避けて通れない知識でしょう。現在の立場を知るには適切な内容と思われます。 お勧め度は、 とします。

Oct2.2012(N)

No.162

動物に魂はあるのか

金森 修  中公新書(定価880円+税、2012年8月初版)

 生命倫理の話が好きで、その手の本が出るとすぐ買ってしまい、後悔することが多いの現実です。 生命倫理にも幅があるため当方が興味のない論点の場合と視点が当方と全くことなり不愉快になってしまう場合の二つが主なのですが、本書は残念ながら前者でした。 副題の「生命を見つめる科学」に惹かれ購入。動物に霊魂があるのか、それとも動物はかんじることのない機械なのかを、 アリストテレスからデカルト、ハイデッガー、デリダまで通して哲学者たちの動物論が延々と追跡されます。 最後に社会運動としてのシンガーらの動物解放運動の解説となり、ついて行けずダウンしました。 内容評価は 、 値段は 。 生命の科学に動物も人間もないと思っていましたが甘く、やはり動物好きとは言いませんが少なくとも興味ある方でないとつらいのでは感じてしまいました。 お勧め度は、 とします。

Oct1.2012(N)

No.161

医者は病気をどう推理するか

NHK「総合診療医ドクターG」制作班 編  幻冬舎(定価1300円+税、2012年6月初版)

 現在毎週放映されている同名番組の内、カリスマドクター7人が14のケースを紹介し、全体の図式を音羽病院の松村先生があとがきで解説されている一冊。 生坂政臣先生、岩田健太郎先生、林寛之先生、山中克郎先生、酒見英太先生、仲田和正先生、鈴木富雄先生と並ぶとすごいの一言です。 内容は一般向けの症例のためそれほど奇をてらったものではありませんが、松村先生のいう「結局はエンターテイメント」と言う理解になります。 番組を一度でも視聴された方が感じる、研修医はあんなに優秀だったか、という疑問にも最後に松村先生が答えています。 個々の症例を紹介するとミステリのネタバレですので是非手に取り確認して下さい。 内容評価は 、 値段は 。 視聴者にも医療に参加する機会を持って欲しいとの期待から、との一節がありますが、インターネット時代で検索されたから来られる高齢者も珍しくないこの時勢に 「並みの医者」の像が一般の方から過大評価となり、逆に落胆につながり、医療不信になる危惧を持つのは取り越し苦労であって欲しいと想います。 お勧め度は、 とします。

Sep30.2012(N)



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