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泌尿器科

前立腺がん

1) 前立腺癌

 

 ● 前立腺癌とは?
2017年の国立がん研究センターのがん統計によると、男性の罹患する癌では前立腺癌が1位であり約9万人でした。人口10万人あたりでは約148人で生涯罹患リスクは約10%、つまり男性が生きている間に10人に1人は前立腺癌になる可能性があります。

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2017年の国立がん研究センターのがん統計によると、男性の罹患する癌では前立腺癌が1位であり約9万人でした。人口10万人あたりでは約148人で生涯罹患リスクは約10%、つまり男性が生きている間に10人に1人は前立腺癌になる可能性があります。しかし、2018年の統計によると、死亡数は男性で6位の12250人、5年相対生存率(癌と診断されても5年後に治療でどれだけ命を救えているか)は99.%です。
なぜ生存率が高いか?それはホルモン治療(男性ホルモンを低下させる治療)が、非常によく効くからです。100%ではありませんが、ほとんどの人が皮下注射(1か月製剤、3か月製剤や6か月月製剤)と飲み薬により、少なくとも数年は癌の進行を抑えることができます。ですから前立腺癌と診断されても、すぐに命がなくなるわけではないのです。ただし、中には数か月でホルモン治療の効果がなくなる方もいますし、一方で数年間効果が持続する方もいます。
そして、ホルモン治療の効果がなくなれば抗がん剤を投与したりする必要が生じます。また、受診時、すでに転移がある場合は、完治は望めなくなります。

 

● 検査と診断について
前立腺癌にはPSAという特有の腫瘍マーカーがあります。人間ドックでPSA異常値を指摘されて泌尿器科を受診される方や、最近では、自治体のがん検診でもPSAの採血を採用している市町村も多くなってきました。

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しかし、PSAが異常値だからといって、必ずしも前立腺癌とは限りません。 確定診断には、生検と言って前立腺組織を針で採取して診断します。当院では、生検の前に前立腺のMRを撮影しています。事前にリンパ節転移の有無と癌が疑われる部位があるかどうかを把握しておきます。当院での2017年から2018年の2年間の統計では、MRで癌が指摘された部位に実際に癌があった割合は約60%でした。 当院の生検日は、月水金あるいは土曜日に入院していただき、その日に生検をします。腰椎麻酔か局所麻酔のどちらか事前に決めておいた希望の方法で麻酔をした後、原則12か所を生検し、翌日の午前中に退院していただくことにしています。もちろん、事前にMRで指摘された部位も含めて生検いたします。

304人の患者さんに前立腺生検をした 結果、PSAの値と癌と診断された割合は (表1)のようになりました。 PSA10.1~20.0までは49%と 4.0から10.0までの52%より低くなっていますが、もっと人数を多く統計をとれば、おおむね、PSAが上昇するに従い、(表1)癌の割合も多くなっていくと思われます。

304人全体では、58%の人が癌と診断されました。 年齢別にみると、(表2)のようになりました。 50歳代以上から増え始めて、高齢になるほど 癌の割合が増えていきます。 しかし、80歳以上で前立腺癌と診断されても、 肺炎など他の病気で亡くなる方も多く、高齢で 前立腺生検をすることには、慎重にすべきであると 考えています。 それよりも大切なことは、若い方は積極的に生検を 行い、癌が転移をおこしていないステージで(表2) 癌を見つけて完治を目指すことです。
ここには掲載していませんが、PSAが低い値で癌が見つかったほうが、 癌が転移をおこしていない割合が多く、完治する可能性が高くなります。
(表1)
PSA (ng/ml)  癌の割合 
4.0-10.0    52% 
10.1-20.0 55% 
20.1-50.0  67%
50.1-    100%

 

当院で2017年から2019年の3年間で生検した方は442人で、全体では約60%の方に癌がみつかっています。年齢別にみると、(表2)のようになりました。 50歳代以上から増え始めて、高齢になるほど 癌の割合が増えていきます。 しかし、80歳以上で前立腺癌と診断されても、 肺炎など他の病気で亡くなる方も多く、高齢で 前立腺生検をすることには、慎重にすべきであると 考えています。 それよりも大切なことは、若い方は積極的に生検を行い、転移をおこしていない病期(ステージ)で癌を見つけて完治を目指すことです。
ここには掲載していませんが、PSAが低い値で癌が見つかったほうが、 癌が転移をおこしていない割合が多く、完治する可能性が高くなります。

(表2)
年齢   癌の割合
40-49    0%
50-59  52%
60-69 50%
70-79 58%
80-   83%

 

 

 

● 病期(ステージ)について
MRやCT、骨シンチなどで癌がどこまで広がり転移をしているか調べます。

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T分類(癌の進展度)
stage T1   癌が前立腺の中にあり触診や画像で認めず、生検などで癌が判明。
stage T2   癌が前立腺の中にあり触診や画像でも癌を認めるが転移はない。
stage T3   癌が被膜を越えて浸潤している。
stage T4   癌が膀胱や他の臓器に浸潤している。
 
N分類(リンパ節転移)
N0   所属リンパ節転移がない。
N1   所属リンパ節転移がある。
 
M分類
M0   転移がない。
M1   転移がある。

 

● 治療について
治療は、手術治療、放射線治療、ホルモン治療、抗癌剤治療に分かれます。 完治する治療方法として、手術治療と放射線治療があげられます

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手術治療

期待余命10年以上ある方にお勧めしています。具体的には、平成30年の厚生労働省発表の平均余命表によると、75歳の方で12.29年、80歳の方で9.06年となっていますから、身体的にお元気な方で他に重い病気がない方では70歳代後半までが対象です。それ以上の年齢の方や他に重い病気をある方は、個人差はありますが、手術でなくても放射線治療やホルモン治療が比較的長期間効果が持続するので、その方にとってベストな治療を選択いたします。

当院では2019年8月から手術方法としてロボット支援手術(ダ・ビンチ)を行っています。当院ではロボット支援手術を行う資格を持った医師が3名(玉田、呉、香山)、そのうち玉田は他の医師を指導できる資格(泌尿器内視鏡・ロボティクス学会プロクター)とロボット外科学会認定の国内A級ライセンスも取得しています。

 

通常、この手術を行うには頭を25度下げた状態で行いますが、脳疾患の既往がある、緑内障を有する症例などでリンパ節郭清を必要としない患者さんに対しては、頭を5-10度しか下げない後腹膜アプローチによる方法も行っています。

手術時間は2.5時間(リンパ節郭清なし)から4時間(リンパ節郭清あり)で、出血量は100ml程度、輸血を要することはほとんどありません。

この手術のポイントはできるだけ正常な尿道を多く残すことより術後尿失禁の合併症も軽減させることです。また、癌が前立腺のどの部位にあるかによって違いますが、右と左にある神経血管束をどちらかもしくは両方を温存することで尿失禁を予防したり、勃起機能を保てる可能性があります。

ロボット支援手術は前立腺癌の場合は、約1㎝の切開を腹部に6か所開けることにより手術を行います。これだけでも、術後の疼痛は軽減されますが、ロボット特有のアーム(手)によって、狭い骨盤の奥で前立腺を摘出した後の尿道と膀胱を吻合する技術は、術後の尿道バルーンを早期に抜去することが可能で早期退院につながっています。

当科では、術後から5日目には尿道カテーテルを抜去し、6-7日目には多くの患者さんが退院されます。その後は、外来でPSAを採血して再発していないか経過観察します。

 

 

放射線治療
当院では外照射のみを行っており、一般的にはホルモン治療を6か月から9か月先行したのち、約2か月かけて通院または入院にて週5日、少しずつ照射して癌を殺していきます。その後、高い再発リスクのある方を除いて無治療で、PSAを外来で採血して経過観察します。

【イメージ】
   ホルモン治療 放射線治療 外来でPSAを採血して経過観察    
   (6-9か月)   (2か月)   (高リスク:約2年間ホルモン治療)

なお、放射線治療を行うと、合併症として直腸出血が報告されています。輸血を伴うこと(1-6%)もあり、大腸カメラなどで直腸を刺激すると出血しやすくなります。
当院では放射線治療前に大腸カメラをしていただき、事前に大腸癌がないかどうかを検査します。そうすることによって、放射線治療後の下血に対して大腸癌がないことが分かっていれば、大腸カメラをしないで済み無用な直腸出血を回避できるからです。
 
ホルモン治療
リンパ節転移や骨転移など診断時に転移があった方や80歳以上の高齢者に対して行う治療です。皮下注射と内服で治療を行っていきますが、効果が数年でなくなることが多く(長い方で10年近く効果が持続する方います)、その場合は内服の薬を変更したり、抗がん剤の点滴治療をしたりします。 抗癌剤治療は、日本ではドセタキセルとカバジタキセルが承認されています。 ホルモン治療の効果がなくなった時に使用します。特に予想外に早くホルモン治療の効果がなくなった場合(6-12か月)、早期に抗癌剤治療を始めることが推奨されています。最近、特殊な遺伝子変異(BRCA1/2)を持っている患者さんに対して有効な新しい治療薬(リムパーザ)が承認されました。遺伝子変異が認められれば、それによる治療も可能です。
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