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医学書 ブックレビュー

No.420

胸部画像診断スタンダード

NPO法人日本胸部放射線医学研究機構  メディカル・サイエンス・インターナショナル(定価6300円+税、2013年3月初版)

 日本医学放射線学会専門医研修ガイドライン2012年版に準拠し、日本胸部放射研究会が主体となり編集された胸部画像診断のスタンダード、 いわゆるMinimal Requirementsを提示した一冊である。約150の疾患、病態が基本項目2ページで提示されていて、かつその読影レベルが放射線科専門医、 診断専門医、指導医の3段階で分けて明示されており、参考になる。 同じ出版社で同じ執筆が書いた姉妹書である「胸部のCT」がこの領域の標準テキスト(本書まえがきによる)とされており、辞書的な役割を果たしているが、 現場での利用の便を考えたコンパクト本が必要と考え編集されたようである。そのためか、疾患、病態自体の解説もミニマムになっている。 内容評価は 、 値段は 。 マニュアルとして利用する方法。今までに見た、経験した内容を確認する手段として使う方法。網羅的な勉強に用いる方法など、いろんな利用方法が考えられる書籍である。 注意点は、ある程度その疾患、病態を理解していないと、画像との対比が困難な部分があることであろうか。 何にしても、よくここまでコンパクトにまとめたものである。お勧め度は、 とします。

June17.2013(N)

No.419

あらゆる診療科でよく出会う精神疾患を見極め、対応する

堀川直史 編  羊土社(定価4700円+税、2013年4月初版)

 羊土社のジェネラル診療シリーズの一冊。外来でもよく精神疾患をもつ患者を以前にもましてよく見るようになった。 これは患者数が増加していることによるものと思われるが、なかなか専門医、専門施設を受診しにくい心理が働くことも一因であろう。 長年の経験と理論からの専門診療という精神科独自のスタイルが、DSM-Ⅳによる診断基準による診断とそれに付随するかの如く標準的治療方法が整備されてきたため、 プライマリケア医にも手の届く時代になってきた気がする。不眠、鬱、不安障害、摂食障害、アルコール、認知症、せん妄、身体表現性障害などの各論に分けて解説され、 各項が数ページのコンパクトな内容にまとめられ、本当に理解しやすいように整理されている。 最近出版された類書が多い中、当方が通読した範囲では1番読みやすくアタマに入った一冊であった。 内容評価は 、 値段は 。 欲を言うと、せん妄と部分が今ひとつ理解しにくく、多分当方のアタマの問題でしょう。 また、本田秀夫先生の自閉症スペクトラム障害関連の項目ももう少し詳しく読みたかったが、これも全体のスペースのバランスであろう。 こういった“欲”が出てくる書籍である。お勧め度は、 とします。

June16.2013(N)

No.418

血液ガス・酸塩基平衡に強くなる

白髪宏司  羊土社(定価3600円+税、2013年4月初版)

 最近血液ガス関連の書籍が少なく、と書いたが、数ヶ月以内に数冊出版されびっくりしている。 もちろんパルスオキシメータ-など周辺のものを含めて話であるが、なにせShapiroの血液ガスで学んだ世代なので、洋書でも余り出版されていないのは、 アマゾン等の検索でも一目瞭然である。日常診療で解ったようで解らないとされる双璧(あくまでも自分の病院の話ですが)、 胸部単純写真と血液ガスの本が日本で繰り返し出るのは当然と言えば当然かもしれない。そういえば定番のRoseの第6版がもう出ている頃ですね。 でも読むのは大変でしょう。ところで本書は解析を7つのステップに分けて考え、例題を上げて学習効率を上げ、初級、中級、上級と進んでいくスタイルで実践的です。 何かAnupの血液ガスのテキストに近い感覚があります。 内容評価は 、 値段は 。 惜しみ楽は筆者が小児科医のためか、例題が小児関連が多いのが残念です。本質には関係ないかもしれませんが。 ベースエクセス(BE)に対する著者の考えは納得できるもので、これだけでも一読の価値はあるでしょう。 可能であれば、飯野先生の本と読み比べるのは面白いかもしれません。お勧め度は、 とします。

June15.2013(N)

No.417

喘息予防・管理ガイドライン2012

一般社団法人日本アレルギー学会  協和企画(定価3333円+税、2012年11月初版)

 まず本書の出版、改訂の推移を見てみる。巻頭に記載されている内容からはアレルギー疾患治療ガイドラインとして1993年、改訂版が1995年。 現在のタイトルに変更され、1998年。年数のところのみで変更で、2000年、2003年、2006年、2009年、今回の2012年である。 20年間で改訂が7回の改訂であり、少なくとも3年以内に改訂されていることになる。専門家の先生方は学会等にてその変更点がすぐ理解できるのだろうが、 一冊目を通してもどこが変更点かまずは解らない。結局はそういった要点をウリする雑誌の特集号に読むことになりそう。 でも、そうするとガイドライン自体を読まず、読んだ気分にだけいつしかなっている自分に気が付く。 改訂の頻度には批判のしようが無いが、変更点の明示は他の学会がガイドライン提示でおこなっているような一目でわかる表での記載を期待するのは貪りであろうか。 内容評価は 、 値段は 。 読んで勉強する類のものでないと、よく言及さえる一冊である。でも、手元にないと困ることも確かか。 また、利益相反についてはっきりと記載されている反面、全体としての期待のため、個々の利益相反が解らず、逃げている感が漂う。 喘息の治療薬については特に難しいのだろうか。お勧め度は、 とします。

June14.2013(N)

No.416

重症頭部外傷治療・管理のガイドライン(第3版)

日本脳神経外科学会・日本脳神経外傷学会  医学書院(定価3000円+税、2013年3月初版)

 7年毎の改訂で今回が第3版である。総合診療、救急で実施のどの程度外傷に携わるかで推奨度が変わる。 最近neurocritical careという表現で洋書であるが神経集中治療学の書籍が多数発行され、時代の流れを感じるが、モニタリング含め未だに定説がない世界が多く残る分野に思える。 その一部コアを形成する外傷部門がガイドラインであり、基本的なところから、細部にわたり、今の常識が提示されていて、門外漢であればあるほど面白く読める内容である。 入院を担当している限り、患者の転倒が常に起こる可能性があり、脳神経外科が常駐している病院でない限り、知識は別の意味で必須であろう。 250ページの書籍であり、通読するのにそれほど困難はない。 内容評価は 、 値段は 。 現実はこのレベルの外傷にタッチする可能性は通常低い。でも、転ばぬ先の杖、ではないが準備に越したことはない。 偉そうに言えば、専門医とどの程度話せるかを試すのも一興かも知れない。もちろん、すごく無礼で、怒られるでしょうが。お勧め度は、 とします。

June13.2013(N)

No.415

ゴロから覚える筋肉&神経

高橋仁美  中山書店(定価1600円+税、2013年4月初版)

 こういったストレートな本は大好きです。ムダが全くない。タイトルから購入するかどうかはすぐ判断でき、用途も明確。 内容も神経と筋肉が動きを含め図示され、その覚え方がゴロで書かれている。ゴロはどうかは、受験で鍛えられているはずなので、違和感がまずわかず、すぐアタマに入ってくる。 そう言えば、他にもゴロ、nmenomicsをウリにした本を最近紹介した記憶がある。いつの時代も悩みは同じということであろうか。 最後にしっかりと復習問題をつけて締めくくっている。 内容評価は 、 値段は 。 面白い本だが、当然読み手を選ぶ。要するに必要とするかどうかで、勉強のために入手するものでないである。 当方は解剖が弱く、この手の本を買って、一時的に知識は増えるのだが、使わないのですぐに忘却の彼方へ、である。お勧め度は、 とします。

June12.2013(N)

No.414

シリーズ生命倫理学(7)周産期・新生児・小児医療

シリーズ生命倫理学編集委員会 編  丸善出版(定価5800円+税、2012年12月初版)

 今回も緒言が面白い。この巻の編集委員がエッセイ風に書かれているが、本文には本音が見えてくる。 実際の倫理委員会で起こる、論じられる倫理と現実の医療現場の当事者とに存在する相克。 生命倫理には正解が無く、当事者である医療者と患者側の、模索するという実践から、絶え間なく何がより良いかと追い求めるものであるべきだとする。 また、両親が治療を拒否している重い障害をもった新生児の治療の可否をめぐる問題で、長期的ケアに責任を負わない医師には決定権がないのかどうかが、突きつけられている。 そういったことのために読まれる一冊と位置づけ展開されている。 内容は小児科医療を細分化し論じられており、超低出生体重児の成育限界、予後不良児の問題、胎児治療、帝王切開や無痛分娩、自然分娩など分娩の問題、 ハイリスク分娩の取扱、出生前診断のあり方、児童虐待などが提示されており、最後に小児医療におけるこどもの権利が論じられている。 内容評価は 、 値段は 。 今回は緒言のみが楽しかった。逆に本文の論点は理解できるが、現実の医療にほとんどタッチしていない当方にはかなり苦しく、通読するのにかなり時間を要してしまった。 気軽に読める書籍ではないので、真摯に読むべきあり、そういったハードは覚悟すべきか。かなり精神力を必要とする一冊である。お勧め度は、 とします。

June11.2013(N)

No.413

嚥下医学(第2巻1号)

日本嚥下医学会  中山書店(定価2800円+税、2013年3月初版)

 学会雑誌であるが、書籍扱いされているので、若干ズルをして取り上げる。前回のそうした記憶がある。 人は年を取るといろんな理由で口から食べられなくなり、最後を迎えることが多い。そのための嚥下医学でありリハビリテーションとなるのだが、体系的に勉強するのは骨が折れる。 リハビリが専門であればまだしも、総合診療であれば、院内で担当する部署への紹介の手順を理解することで終えている場合も結構あるからである。 多く出ている嚥下障害関連のテキストを読んでも実務で使っていないとすぐ過去の一冊となってしまう。 そういった中で、硬質でややレベルの高めな本書は当方にてフィットした書籍(雑誌)となっている。特に他では余り読めない嚥下障害の外科的治療についてはありがたい。 内容評価は 、 値段は 。 日本摂食嚥下リハビリテーション学会というのもあるかと思う。 自身は会員であるが、そちらはどちらかというと看護、リハビリが主体と思える学会誌の内容であり、医師主体で書かれている本書とはかなり性格が違うものに感じる。 幅広く読めるのも良いが、そこまでの知識を当方は有していないである。お勧め度は、 とします。

June10.2013(N)

No.412

人工呼吸に活かす!呼吸生理がわかる、好きになる

田中竜馬  羊土社(定価3300円+税、2013年4月初版)

 人工呼吸管理に必要な呼吸生理を出来るだけ数式を使用せずに、理解できるよう工夫された入門書。 巻頭の「はじめに」、COPDの急性増悪は筋肉の問題、CO2ナルコーシスの原因は肺血流、水深1m以上では水遁の術はできない、とミステリー風の出だしである。 本文は読みやすく、エッセイ風のスタイルをとし、コラムも充実していて好感の持てる仕上がりと成っている。 あっという間の280ページである。逆に、入門という難易度のため巻頭の3題が解っているような方には余り得るとことがないかもしれない。 とは言っても、そういう場合は寝転んで読むのも良いかもと思ってしまう。 内容評価は 、 値段は 。 呼吸生理となると、すぐに学会主催の呼吸機能セミナーや大家の書いた分厚い本を思い出してしまう。 前者のよく会場で寝てしまった記憶と後者は何度読んでもチンプンカンプンであった記憶である。 高額の、米国生理学会が編纂した呼吸生理のハンドブックを購入して、その崇高さはすぐ理解できたが、内容は全く歯が立たなかった。苦い思い出である。お勧め度は、 とします。

June9.2013(N)

No.411

生命と環境の倫理

清水哲郎 編著  放送大学教育振興会(定価2600円+税、2010年3月初版)

 これも生命倫理を勉強しなおしていると頻回に引用されている書籍で取り寄せた一冊。編者は高名な哲学、臨床倫理学者である清水先生。 動物、植物などが存在し育つ環境と生命をもち生活する人間などを「生命と環境」という名でその関係を探った書籍。 環境を破壊してはいけないのか、環境を変えることなしには生きていけないのか、生命をむやみに弄ぶような研究はまずいのか、 生命操作の技術の発達により人間は恩恵を受けているのか、などの疑問を通して、自分たちの世界についての見方や世界への働きかけ方を考える、 まさしく一冊の教科書となっている。参考文献リストを含め、コンパクトで的確かつ理解しやすい内容となっており、頻回引用の理由が理解できる。 内容評価は 、 値段は 。 一冊を通読すると、別に個人の知識量が増えている気がしない。もちろん、量を増やそうという意味で読む本でないことを理解しているつもりであるが、 そういったモノサシでも測ってしまう。言い換えると、こういった思考方法になる者には、あまり有用でないのかもしれない。お勧め度は、 とします。

June8.2013(N)

No.410

人はいつか死ぬものだから これからの終末期ケアを考える

ポーリーン・W・チェン  河出書房新社(定価1900円+税、2009年4月初版)

 2007年にRandom Houseから出版されたPauline W. Chenによる”Final Exam: A Surgeon’s Reflections on Mortality”の翻訳である。 移植外科医である著者が医学生、レジデント、指導医としての約20年間を振り返り、副題のとおりの終末期のケアについてエッセイ風に執筆したノンフィクションの一冊。 ハーバードのニュー・パスウェイの紹介など、どちらかというと医療倫理主体ではなく、医学教育関連の一冊として読めてしまう。 本書は、他の医療倫理関連の孫引きとして入手したのであるが、別の意味で掘り出し物であった。 読みやすい文章で、著者の成長過程と米国の教育の流れが理解しやすいからである。医療面接や一種のcinemedication利用など、面白く読めます。 内容評価は 、 値段は 。 恩師とのやりとりを通して命を考える最終章で出てくる「・・・日本人がよく言う『わたしのことを気にかけてくれるありがたい友だち』・・・」 という友情を表す引用のものがよく理解できず、調べても不明で、もやもやしたままでの読了となりました。 でも、現役医師とは思えない書き手で次の読みたくなる本でした。お勧め度は、 とします。

June7.2013(N)

No.409

トラベル・アンド・トロピカル・メディシン・マニュアル

岩田健太郎 他監訳  メディカル・サイエンス・インターナショナル(定価8000円+税、2012年2月初版)

 EC JongとC Sanfordによる”The travel and tropical medicine manual”第4版の翻訳である。 元は2008年のElsevierから出版されているものを神戸大の岩田先生と洛和会音羽病院の土井先生が監訳され、訳者一覧をみると人脈のすごさがわかる。 まずはスタイルはハンディタイプであるが、800ページ弱あり、マニュアルというには少し分厚い。内容は、KeystoneによるTravel medicineに似ていると感じてしまった。 もちろん各項目の強弱の差異はあるが、一つのものを求めるも結局は同じものになってしまう道理か。 読む本として、総論的なアプローチを学ぶにはKeystoneに軍配を上げたくなるが、手短に調べるには本書と言いたいが、いかんせん重く厚い。 内容評価は 、 値段は 。 それほど関西空港には近くないのに、いままでの病院とは違いインドの方が多く相談に来られる。たまたまというより、時代が変わってきたのかも知れない。 また、旅行としてはベトナムとミャンマーに行く方が、こちらは偶然であろうが最近よく目にする。勉強の仕方も変えていくべきなのだろう。お勧め度は、 とします。

June6.2013(N)

No.408

「平穏死」のすすめ

石飛幸三  講談社文庫(定価448円+税、2013年2月初版)

 2010年に同タイトルで出版されたものの文庫化。副題の「口から食べられなくなったらどうしますか」がすべて表している。著者は特別養護老人ホームの常勤配置医である。 胃瘻造設を通しての延命治療の限界と人としての安らかな最後を考える一冊である。 こういった議論には考え方がいろいろあり、多面的な検討が必要とされ、一歩誤ると暴論となり、倫理的な問題を抱えてしまう。 あとがきで日野原先生が書かれているように、医学が死生学、看取りについて多くを語っていない現状では、一人一人がそれに答えていく必要があるのかもしれません。 本文が200ページ余の文庫であり、容易に通読は可能ですし、テーマは重くても読みやすい文章できっと好感を覚えるでしょう。 内容評価は 、 値段は 。 一読をお薦めします。ただ、この一冊ですべてが議論され、理解できる、という種類の本でないことも自明でしょう。 自分で考えるための本として気軽に手にとって下さい。お勧め度は、 とします。

June5.2013(N)

No.407

実はすごい町医者の見つけ方

永田 宏  講談社+α文庫(定価600円+税、2013年2月初版)

 2006年に「名医はご近所にいる」(ぶんか社)として出版されたものの文庫化。著者は理学博士と医学博士をもっている謂わば同業者である。 医者えらびの一種クックブックである。医師からみた本のため、なるほどと思える箇所も多い。だからといって、診療所、病院のあり方をそれほど批判しているわけではない。 タウンページの利用法も出てきているが、リアルの話としてどうやって医師をえらび、診療所を選び、病院を決めるかという一冊である。 正直、医師が読んで得るところが余りない本で通読してから情報の確認としての作業であった気がする文庫でした。 内容評価は 、 値段は 。 一般の方がどう理解しているのかを知りたくて購入したが失敗であった。分析はあっても、ではどうすべきかという推奨の点では弱い一冊である。 医療関係者が読むのを想定しないのでは、と思っています本で、お勧め度は、 とします。

June4.2013(N)

No.406

シリーズ生命倫理学(6)生殖医療

シリーズ生命倫理学編集委員会 編  丸善出版(定価5800円+税、2012年1月初版)

 医療倫理として以前より各論でよく取り上げられてきた、脳死・移植関連、終末期医療、安楽死・尊厳死についで、生殖医療についての一冊。 シリーズの各巻の構成からは、年齢別、医療分野別、職種別と展開されていくが、いわゆるメインテーマは本巻で終了である。 配偶子提供・操作、代理出産、出自を知る権利、着床前診断など、オーソドックスに議論が進んでいくが、編者が緒言で記しているように医療と倫理のバランスが読みどころである。 自然科学であり本来は一つであるべき医学と人が関わり社会が関与してくる結果刻々と変化する倫理が生殖医療を通して我々に語りかけてくる。 どう読むかはある意味読み手に任されていると思ってしまうような錯覚を覚えてしまう書籍である。 内容評価は 、 値段は 。 男性である身では、リプロダクティブヘルス・ライツを含め実感がわきにくいテーマでもある。 最終章のiPS細胞についての議論もホットなテーマであるが、マザー・マシンの項も含め正直かなり難解な内容に読めた。お勧め度は、 とします。

June3.2013(N)

No.405

膠原病診療ノート(第3版)

三森明夫  日本医事新報社(定価5800円+税、2013年2月初版)

 副題の通り、膠原病についての症例の分析と文献の考察、実践への手引きを基礎的な問題を簡略化し、一般内科研修医、膠原病科のシニア研修医、 専門外であるが膠原病を勉強したい人たちのために書かれた一冊である。特に、0章である「膠原病科での初期診療と総合診療」は圧巻である。 著者の哲学が書かれており、その主旨で単著である本書が約600ページ貫かれている。 膠原病の各論も楽しいが、全巻を通して著者の気持ちに触れることができ、反論を言いたく箇所も含め刺激を読み手に与え続ける書籍となっている。 綜合臨床をめざす医師には是非、rheumatologyに親しむことを奨めたい、というのは大切なことである。各論は一部でも各自勉強されたい。 別に、21章の終章のところも、著者の総合診療についての持論が展開されている。 内容評価は 、 値段は 。 実は本書は第1版から読んでいるだが、自分の年齢と共に、読んだときの感想が違ってきている。 当たり前であるが、何か感慨が深いものがある。三版すべてのまえがき、あとがきも掲載されており、著者自身の変遷も堪能できる一冊です。お勧め度は、 とします。

June2.2013(N)

No.404

もしも心電図が小学校の必修科目だったら

香坂 俊  医学書院(定価3200円+税、2013年3月初版)

 タイトル通りの香坂先生の心電図についての一冊。心電図は苦手です、から始まるのは異色ですが。週刊医学会新聞に連載されたものの書籍化だそうです。 ですから、ところどころ既読感があります。また、心電図の勉強のための本でもなく、著者が心電図について書いたエッセイと思って読まれることをお薦めします。 しかし、エッセイではなく、著者のこれまでが解る内容となっています。 心電図の各パーツについての解説が1時間目国語から始まって7時間目数学まで25回に渡って行われています。 内容評価は 、 値段は 。 あまり難しく考えず、著者のリズムが好きな方には楽しい一冊です。 ただ、心電図としてのマニュアルであったり、学習であったり、特定の目的で購入されることには適していない気がします。お勧め度は、 とします。

June1.2013(N)

No.403

一目でわかる血液ガス(第2版)

飯野靖彦  メディカル・サイエンス・インターナショナル(定価2800円+税、2013年2月初版)

 血液ガス、輸液、水電解質の三部作シリーズである「一目でわかる」の一冊。でも、100ページに満たない本でよくここまで理解しやすいように書けるものである。 さすが飯野先生といったところか。すいません、別に面識があってというレベルではなく、雑誌や本で知っているという程度ですので。 当然のこととして使用している血液ガスデータの復習にはうってつけで、入門書としても良書を言えるでしょう。 血液ガスから入り、酸塩基平衡について解りやすくまとめられており、生理学的な背景もしっかりと書き込まれています。 今回は10年ほど前より流行してきたストロングイオンについても追記され、Stewart法と詳述されています。静脈血ガス分析のあり方と合わせ勉強に適した一冊です。 内容評価は 、 値段(古書なので本当に参考値)は 。 結局ICUなどの特殊な状況下でのストロングイオン利用には異論がないが、総合診療としては無用の長物でしかない気がします。 やはり、勉強止まりなのでしょうか。最近余り血液ガスについての書籍を見なくなった気がします。そういった意味でもうれしい一冊です。お勧め度は、 とします。

May31.2013(N)

No.402

線維筋痛症診療ガイドライン2013

日本線維筋痛症学会 編  日本医事新報社(定価4300円+税、2013年3月初版)

 線維筋痛症のガイドラインであるが、前回が2年前の出版である。日進月歩であるが、どうしてもまずはこの頻度での改訂には疑問がある。 とは言っても、インターネット上にて無料で公開され、改訂が日時と理由が明記され、提示されているのなら良いのであるが、公共性を訴え、 多くの方のために記載されているのに、頻回の改訂にて有料にてのアクセスでは、矛盾を感じてしますのは当方だけか。 もちろん、編集される方々や作成にかかる費用を無視つもりはないが、如何なものであろうか。内容はガイドラインというよりは、 線維筋痛症診療のすべてが詰まっている一冊である。広い意味で診療に関わるものは必須の書籍であるがゆえの小言になってしまった。 ただ、これだけの分量、200ページ超であるため、ダイジェスト版が必要で、すぐに利用するには本ガイドラインはちとつらいかもしれない。 内容評価は 、 値段(古書なので本当に参考値)は 。 いろいろ書いてしまったが、本当にできたガイドラインである。どうも日本のガイドラインに共通した批判をぶつけてしまっったようだ。 日本循環器学会のガイドラインは定期的に無料で公開されている。どうしてこうも学会によって対応が異なるのであろうか。お勧め度は、 とします。

May30.2013(N)

No.401

シリーズ生命倫理学(5)安楽死・尊厳死

シリーズ生命倫理学編集委員会 編  丸善出版(定価5800円+税、2012年11月初版)

 このシリーズを読み進めていくと、単著ではなく多くの方の意見が混在しているためか、生命倫理学が、医学と倫理学(宗教学、哲学など) と法学の大きく3つの視点から構成されている気がしてくる。 もちろん、暴論の一種であることは承知しているが、部分的には相容れようのないものが少なくとも3種類以上混ざって入っているように思えるからである。 今回のテーマも安楽死・尊厳死は学生のときから学ぶものであり、あくまでも、まずは学ぶであって中途半端な知識ではコメントできない。 しかし、医師となり現実に現場に行くと、答えをもっていないと仕事にならない。勉強し、自分のものにする。でも、必ずしも答えはない。 こういった判断が避けられるのなら、関わりになりたくないというのが、本音の気がしてくるが。 内容評価は 、 値段(古書なので本当に参考値)は 。 責任編集が医事法学の年刊でよく目にした甲斐先生でした。倫理と法は、やっぱり混ざらない気がします。 しかし、現場では1番気を付けていることには違いないですが。お勧め度は、 とします。

May29.2013(N)



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