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医学書 ブックレビュー

No.480

ギラン・バレー症候群、フィッシャー症候群診療ガイドライン2013

日本神経学会 監修  南江堂(定価4000円+税、2013年6月初版)

 前回は歯が立たず、今回はどうかという一冊。さすがにギラン・バレーを中心としてガイドラインなので、知識量の差異なのか、まだ分かり安かった。 しかし、結局同じ評価となる。部分部分の説明は納得でき、最新の知見に基づいた記載でスタンダードという意味では理解できます。 ただし、診療ガイドラインとして、実際に診療の全体像が非専門医に容易に眺望できるかというと、やはり難しいということです。 本来の診療ガイドライン作成という目的は達していると考えられますから、問題点という訳ではなく、単なる個人的な要望ということになりますが、 別の雑誌、書籍でそういったことが適えられるのでしょう。 内容評価は 、 値段は いわゆるガイドラインものは読み手の問題で当然その価値が決まる。それを再確認した一冊です。 それにしても日本のガイドラインは標準的治療がウリにしては、大変が有料で購入しないと行けないのは残念です。 逆に大半が無料でインターネット上で読める海外がうらやましい。お勧め度は、 とします。

Aug16.2013(N)

No.479

慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー・多巣性運動ニューパチー診療ガイドライン2013

日本神経学会 監修  南江堂(定価4300円+税、2013年6月初版)

 最近、外来診療にてしびれ等を愁訴に来院される患者に対してどうするか、以前から気になっていた。 前年ながら当方のアタマにあった書籍や雑誌の特集がなく、やっとElsevierのThe Clinicsの一冊として出た末梢神経障害の特集号にて分かり始めた気持ちになってきた。 そこに日本神経学会の監修されたガイドラインが登場してきたので早速入手。 当然、最近のガイドライン本はスタイルが洗練され、読みやすくなっている。本書も、すべての臨床上の要素を揃えており、問題がないのだが、 実際に診療に使うにはかなりハードルが高く、理屈との隔たりも大きく感じる。専門的に分かった人間が確認するために使える本であろうが、 非専門医が実務として拠り所にするような想定はされていないようである。 結局は日本の標準的な考えは理解できたが、診療レベルが上がるような使い方は当方のアタマとウデでは無理であった。 内容評価は 、 値段は ガイドラインが対象としている疾患の問題で歯が立たなかったかもしれない。次のギラン・バレーのガイドラインに期待したいものである。 読む前の個々の神経内科レベルが当たり前であるが、読後の成果に直結しているようで、そういった意味で読み手を選んでいるのかもしれない。 お勧め度は、 とします。

Aug15.2013(N)

No.478

一目でわかる水電解質(第3版)

飯野靖彦
メディカル・サイエンス・インターナショナル(定価2800円+税、2013年5月初版)

 飯野先生による改訂三部作の2冊目。今回は、水電解質であるが、どうも飯野先生版「進化論」のようです。 勉強のために書籍というよりは随所に飯野先生の考えが散りばめられており、一冊の進化論書籍の様相を呈しています。 もちろん、腎臓関連書籍として読めますし、理解しやすいスタイルですぐ通読できます。でも、どうしてもそういった風に見、読んでしまいます。 今年3月で定年退職された先生のひょっとして一番書きたかった内容かもしれません。意外な内容で、大変面白く読めました。 水電解質の重要性から説き始め、腎臓の機能との関連を説明し、調節機能に進み、水電解質異常の各論で締めくくられている。 80ページの小冊子としてオーソドックでコンパクトにまとめられています。 内容評価は 、 値段は マニュアルに勘違いしてしまう「一目でわかる」というタイトルですが、一筋縄ではいかない歯ごたえのある内容です。 読み物としても楽しく、一度手に取られては如何でしょうか。 お勧め度は、 とします。

Aug14.2013(N)

No.477

大人の発達障害ってそういうことだったのか

宮岡 等、内山登紀夫  医学書院(定価2800円+税、2013年6月初版)

 アスペルガー症候群を含めた自閉症スペクトラム障害については、最近一般書を含め多く出版されている。 小児科領域だけでなく、大人を対象とした読み物が多く新書のたぐいでまず予備知識を得て読むのも、と言いそうだったが、逆に本書の方が理解しやすいかもしれない。 病気に概念、頻度、臨床像、対応のパターン、小児科領域との対比などが対話形式で、通読には適したスタイルとなっている。 対話形式の利点が活かされているであろう。 内容評価は 、 値段は 最近はやりの疾患であるため、理解しておいて損はないだろうが、興味がなければ当然つらい一冊である。 臨床の場でどれほど役立つかは、正直この疾患を知って外来で闘おうとする方はまずいないと思う。 そういった意味で役立つというのは未知数の領域であろう。 お勧め度は、 とします。

Aug13.2013(N)

No.476

臨床医のための司法精神医学入門

日本精神神経学会 編  新興医学出版社(定価3500円+税、2013年6月初版)

 一種恐いもの見たさで購入した書籍。司法精神医学など学生のとき以外接したことは皆無であった。もちろん警察に通報し相談する機会が少ないが、 専門外であれば、多くは同じであろう。内容もさることながら、どこまでが臨床医として必要なのかも知りたくて通読したが、かなり骨が折れた。読みにくい。 序論から、刑事精神鑑定、医療観察法、精神保健福祉法、民事精神鑑定、虐待防止法、薬物規制法、道路交通法、少年事件と鑑定、そして最後に司法精神医学倫理と並ぶと、 押しつぶされそうに重い。本当に学生に戻って試験勉強している気分になる。 内容評価は 、 値段は 。 学会が主体でまとめた割には、コラムなども充実していて、読みやすくしようとする意志は強く感じるが、あまりにも歯ごたえがありすぎ、 滝に打たれているような気持ちになってします。読み手を選ぶテーマ、一冊と言うことで今回は精一杯である。 お勧め度は、 とします。

Aug12.2013(N)

No.475

レジデント必携!知っておきたいメンタルケアの知識

児玉 知之  中外医学社(定価2800円+税、2013年5月初版)

 卒後10年目の若手精神科医が単著で発行した書籍。最近の流行が入っている一冊。まず、タイトルに「!」。内容が会話形式。 そして、分かり安くが一番で、非専門医が一冊で概要が理解しやすいというのがウリ。その結果として実践的である。 150ページ程度が全文ですぐ通読できるが、読後の自分の立ち位置がわからず、路頭に迷う気持ちにもなる。これは、参考文献などを含め、 根拠が余りには目に見えない形にした執筆スタイルに起因している気がする。分かり安さを追求した結果が、ある種、居心地の悪さに繋がってしまったではないだろうか。 不眠、せん妄、認知症、薬物依存、アルコール、緩和医療、パニック、自殺など個々の要素はしっかり押さえているのだが、当方とは波長が少なくとも本書では全く合わなかった。 残念でした。 内容評価は 、 値段は 。 部分部分は読みやすいのだが、通読すると大変疲れる。そういった感想だが、多分はひとを選ぶのだろう。いわば一種ライトノベル的な医学書籍なのだろう。 ただし、決して内容が「ライト」ということではなく、執筆スタイルが「ライト」という意味ではあるが。あくまでも個人の気持ちとして、 お勧め度は、 とします。

Aug11.2013(N)

No.474

科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013

日本糖尿病学会 編  南江堂(定価3800円+税、2013年6月初版)

 2004年から3年毎に改訂されている定番ガイドライン。したがって第4版ということになる。非常に洗練され、こなれたスタイルである。 したがって非常に読みやすい。アブストラクトテーブルなど根強がきっちりと明示されている分、通読には向かないが、全体で350ページ程度であり、 要点だけでも拾い読みはすぐできる。まして、最初に変更に要が20行足らずで要約されており、至れり尽くせりである。 糖尿病であればすぐ専門医紹介ですむ状況でなければ必須の一冊であろう。 内容評価は 、 値段は 。 ただ、全体の診断と治療の流れは自分でもっていないとパーツは本書でしっかり示してくれているが、他のガイドライン、 たとえばADAのものや国際医療センターの能登先生の開業医向けの小冊子などを参考にしておかないと、理屈だけに終わってしまう。 専門医の先生には怒られてしまうかもしれないが。専門医紹介へのタイミングも合わせ、再度勉強するにはよい機会でしょう。 お勧め度は、 とします。

Aug10.2013(N)

No.473

シリーズ生命倫理学(8)精神科医療

シリーズ生命倫理学編集委員会 編  丸善出版(定価5800円+税、2013年5月初版)

 おや、と思ったのが、生命倫理との関連では精神医学が後発分野とされていることである。 医療と医学研究などの一般的な医療原理はニュールンベルグ綱領やジュネーブ宣言など1940年代後半であるが、 精神医学の倫理原則は1970年代後半と約30年遅れて議論され始めたらしい。感覚的には逆だと思っていたので驚きである。 パターナリズムが主流であった分野であり、健康と病気との境界が不明瞭な医療分野であるという2点が遅れの主たる原因と解説されているが、なぜかピンとこない。 ロボトミー、脳神経倫理、薬物療法などにおける利益相反、心理療法、司法精神医学、認知症、自殺・嗜癖・依存の問題など、特有な問題が目白押しに議論されている。 内容評価は 、 値段は 。 政治的な背景を持ちやすい領域での医療倫理は難しい。 その上、密室的でパターナリスチックで、しかも正解のそもそも存在しない場所で、医療は何ができるのか、問われている気がする。 薬物治療についても異論も多いが、あまり進歩のない中で、意義有る治療と難問になってしまい、すぐガイドラインに逃げることになる。 いろんな意味で自問するためには有用な一冊であろう。ただ、答えにそこにないかもしれない。 お勧め度は、 とします。

Aug9.2013(N)

No.472

Pleural Diseases, 6th ed

Richard W. Light  Lippincott Williams & Wilkins(定価16000-17000円程度、2013年)

 胸水の浸出液、漏出液の鑑別でよく出てくるLightの基準で有名なLightが単著で出している書籍の最新刊。第6版まで来ている。 胸膜疾患については現時点は他の書籍は見あたらずほぼ独占状態。 とはいっても他の出版社より同じ著者で同じようなタイトルでの著作はあるが、出版年度違い(引用文献の最新さの違い)が主体で敢えて購入する必要はなさそう。 前の版はたしか日本語に翻訳されて今でも入手可能と思われる。 しっかり最初に変更点と列記され、親切である。そこだけ拾い読みでもよいし、リラックスして通読でもよい。なにか定番のごちそうをゆっくり食べている気になる。 ただ、悲しいかな、さすが画像は古くなった。これも歴史か。 内容評価は 、 値段は 。 中皮腫関連、心臓術後胸膜炎の治療、胸膜炎による癒着の治療、留置カテーテル(胸腔へのチューブ)のサイズの問題、治療への教育トレーニングの問題、 自己血を用いた治療などが最近6年間のトピックスとして挙げられ、本文中に解説されている。 以前に紹介した日本の胸膜全書との読み比べも楽しいでしょう。どうしても、定番の方に旗をあげてしまいますが。 お勧め度は、 とします。

Aug8.2013(N)

No.471

ナラティブとエビデンスの間

メザ JP他(岩田健太郎 訳)
メディカル・サイエンス・インターナショナル(定価3400円+税、2013年5月初版)

 所謂「岩田」本の一冊。本当に著作、翻訳含め、出版のスピード、マスコミへの露出度が高い先生である。 これだけの活動量を支えるエネルギーの持ち方にはアタマが下がる。熱意がすべてということであろうか。 副題の「括弧付きの、立ち現れる、条件次第の、文脈依存的な医療」ではチンプンカンプンであろう。 しっかり通読にて自分の意見をもつのもよいし、逆に訳者あとがきを先に読み、読み方指南を受けてから拾い読みもありでしょう。 NBMとEBMと統合。いろんなところで記載されていて、漠然と理解した気にはなるが、実際は分かっていない気持ちになっている領域でしょう。 それを少しでも体系的に書かれたのが本書というオススメです。あとは自分の能力次第。 内容評価は 、 値段は 。 岩田先生のチョイスはいつもハードルが少し高い。読み手にもある程度の覚悟を要求している気がします。 NBMとEBMの統合、橋渡しというよりは、理屈と現実の統合、橋渡しといった方が自身にはレベルがあっているかもしれません。 そういった一冊です。必須の一冊と言いたいのですが、多分に読み手を選ぶでしょう。 お勧め度は、 とします。

Aug7.2013(N)

No.470

自殺を防ぐ診療のポイント

高橋祥友 編  中外医学社(定価2600円+税、2013年5月初版)

 自殺について100ページ余りの厚さの小冊子である。 筑波大学の災害精神支援学教室の方々が書かれているが、編者の高橋先生は自殺について著作の多い方である。 内容はオーソドックスで、日本の自殺の実態、疫学から、精神障害との関連、リスク評価、対応と治療の原則、実際に起こってしまったら、というものである。 自殺のセミナー、講演会で聴講してもよく感じることであるが、話は理解できるのであるが、日常の診療スタイルに変化が出てこない。 自殺の可能性は考慮しているが、実際の対応は、というと難しいからであろう。 内容評価は 、 値段は 。 何度勉強しても、という領域の一つ。薬剤一つを中心にも捉えられないし、かといって自分一人では相手にならない内容である。 知識があるだけでは、逆効果だし、では、どうしたらよいのか。勉強を続ければいつか見えてくるものがあるのだろうか。 自分のアタマを呪いたくなく分野である。 お勧め度は、 とします。

Aug6.2013(N)

No.469

胸膜全書

中野 孝司 編  医薬ジャーナル社(定価8800円+税、2013年5月初版)

 珍しく日本語の胸膜についての書籍である。 とは言っても、編者が兵庫医大の中野先生なので、と内容を確認すると、やはり胸膜全書というよりは、アスベスト、中皮腫にやや依ったものとなっています。 だからといって、強弱の問題だけで、最近改訂されたLightのPleural Diseasesの内容と比較しても章立てに差は余りありません。 胸水、気胸、胸腔鏡、悪性疾患、悪性中皮腫などを本邦での現状を書籍で読みたい方には適切な一冊でしょう。 ただ、胸膜疾患の入門書ではなく、かと言ってAll-in-Oneの一冊ですべて済む本ではなさそうな特徴を理解して利用すべきでしょう。 内容評価は 、 値段は 。 胸膜疾患に対して、日常臨床で直面する問題を解決するようなスタイルでなく、あくまでも学術的に高いレベルを提供使用として、 その選択を読み手に頼るという、いわば以前からある手法を踏襲されています。 いろんな意味で後に紹介するLightの書籍と比較されると良く理解できると思います。ただ、本書が労作であることは間違いないでしょう。 お勧め度は、 とします。

Aug5.2013(N)

No.468

「寄り道」呼吸器診療

倉原 優  シーニュ(定価4500円+税、2013年5月初版)

 卒後7年目の若手呼吸器科医がブログに書きためた勉強の成果を一冊の書籍としたもの。 「寄り道」のタイトルの通りに随想風の構成であり、あとがきで著者がその意味を解説しているが、 内容はエッセイというレベルではなく、一冊の教科書である。 副題の「呼吸器科医が悩む疑問とそのエビデンス」は伊達ではない。 しっかりと疑問が持て、それに対する答えがちゃんと出せる方法論、 思考パターンも手持ちにしているというが、ただ者ではないと思わせる。 読むべき、医学雑誌のリストまで明示されている。折角であるから、読むべき著者なりの「教科書リスト」も出せたら面白かった。 そして、「寄り道」のロードマップを意味のあるものに出来たのなら、さらに楽しかったと思われる。 内容評価は 、 値段は 。 内容は実務的で、研修医向けというより専門医向けであろう。 ただ、単に学術的でないのは、著者の臨床医としての立ち位置のためであろう。 7年目にこれだけ書ければ、次の著作が期待される。志と熱意がそこにある。楽しみである。 お勧め度は、 とします。

Aug4.2013(N)

No.467

運動障害診療マニュアル 不随意運動のみかた

服部信孝 監訳  医学書院(定価3800円+税、2013年5月初版)

 運動障害を一般臨床医としても理解しやすいレベルで実地に利用出来る内容で提供したマニュアル。 不随意運動をオドる、ビクつく、フルえる、ヒキずる、ネジれる、チックな、フラつくなどにわけて取扱、診断と治療に結びつけようとする面白い一冊である。 本当に目から鱗が落ちる。これなら理解できるかもと、期待を持って読める。ただ、ポケットサイズ(新書サイズ)なので、ゆっくり読むには向いていないが。 あくまでも神経内科臨床向けでどうも専門医向けのような気がする内容であるが、一般臨床医でも十分使える一冊である。 内容評価は 、 値段は 。 できれば読みやすいように大きな版で出して欲しかった。と、思えるようなユニークな内容の書籍である。 神経内科専門医にすぐ紹介せず、一度は使ってみたいマニュアルで、興味のある方は一読をお薦めします。お勧め度は、 とします。

Aug3.2013(N)

No.466

COPD診断と治療のためのガイドライン(第4版)

日本呼吸器学会 編  メディカルレビュー社(定価3500円+税、2013年4月初版)

 言わずと知れた学会制定のガイドラインでCOPDについての第4版である。初版が1999年、第2版が2004年、第3版が2009年であり、 その都度の疾患概念や診断、治療の変遷に合わせ改訂されている。改訂のポイントしっかり記載されている。ただ相変わらずであるが、 比較表がなく残念。また、ポイントも簡潔過ぎて、結局は本文を読まないと、前の版と読み比べないと理解できにくいものとなっている。 結局、新しい書籍と考えた方が無難か。本文中で「本ガイドラインの対象は呼吸器専門医と設定」と明記されているように、レベルは高そうであるが、 内容は通読可能なものである。 内容評価は 、 値段は 。 一般臨床医向けの簡易版作成も検討されているようで、この版を待った方が良いかも知れない。 学会ガイドラインがフリーアクセスで提供されない寂しさは変わっていないが、内容も良い意味で変わっていない。お勧め度は、 とします。

Aug2.2013(N)

No.465

のどの異常とプライマリケア

久育 男 編  中山書店(定価13000円+税、2013年5月初版)

 「ENT臨床フロンティア」シリーズの一冊にてタイトルに興味を引かれ購入。扱っている分野は、咽頭痛、嗄声、嚥下障害の三つが中心である。 嚥下障害は他の雑誌、書籍でも取り上げられているが、プライマリケアから見た嗄声と余り見ず、咽頭痛も余りストレート過ぎて逆に見ることが少ない。 咽頭痛と言えば、HIV感染で感冒様のものがはやり、など一種きわもの扱いでもある。本書の耳鼻科医からの診療の進め方はこの3点から検討され、 フローチャート式になっておりある種新鮮に感じられる。書籍の大部分を占める各論も耳鼻科医からの視点で取り上げられるテーマ疾患も総合診療系の書籍と違い、 面白い内容である。楽しい一冊であるが唯一の弱点は値段か。 内容評価は 、 値段は 。 さすがに260ページ前後でこの値段はつらい。アトラスとしての価格であろうが、最近の皮膚科のテキストでもカラーをフルに使ってもここまで行かない。 内容がユニークであるだけに残念である。お勧め度は、 とします。

Aug1.2013(N)

No.464

内科で出会う見ためで探す皮膚疾患アトラス

出光俊郎 編  羊土社(定価5700円+税、2012年4月初版)

 同じ著者の近著「内科で役立つ一般診断から迫る皮膚疾患の鑑別」が面白く逆に同じ主旨の前著を買い求めた次第。 皮膚疾患の命である写真も相変わらず大変きれいである。鑑別の要点も臨床、実践に即して記載されており、相変わらず面白い。 皮膚疾患の難しいところは編者の総論で記載されているように、疾患のありようの多様性よりはアトラスで同じように見えても必ずしも、 という部分であろう。これも著者の受け売りであるが、専門医の利用のタイミングとそれによるトレーニングに尽きるのではないか。 でも自分で一度は診断しに行かないと、いつまでたっても上達もない。自己研鑽にうって付けの一冊である。 内容評価は 、 値段は 。 皮膚疾患は一発診断、snap diagnosisの要である。勉強する甲斐のあるところであるが、どうしても非専門医は鑑別が逆におろそかになる。 というか、鑑別診断が皮膚疾患の中では困難であろう。そういった際の助けになる一冊であるが、その鑑別の理屈が若干弱い気がするが、 この手の本にそれを求めるのはお門違いであろう。お勧め度は、 とします。

July31.2013(N)

No.463

シリーズ生命倫理学(11)遺伝子と医療

シリーズ生命倫理学編集委員会 編  丸善出版(定価5800円+税、2013年4月初版)

 本シリーズも本書入れてあと4冊であるが、なかなか出版されない。やっと第Ⅳ期として2冊出るなかの一冊である。 ここまで来ると別の巻との重複が出てくるのは致し方ないが、既読感が結構でてくる。遺伝子治療と社会、遺伝と環境の関係、 遺伝医療と遺伝相談、優生学、遺伝子操作、遺伝子治療、遺伝子差別、オーダーメイド医療、バイオバンク、DNA鑑定、 遺伝子ビジネス章立てを並べるとそれだけで、遺伝・・・というだけですべて生命倫理学の対象となっている現実が見えてくる。 現実が先行し、理論が後追いしている現実が。である。現在の立ち位置を知るにはよいが、何かすっきりこない。 多分答えのない問題集を渡された学生の気分になるからであろう。答えはあるのだろうが、到底届かない気がする。 内容評価は 、 値段は 。 このシリーズは何冊読んでも、難しく、その分、勉強している気になれる。でも、賢くなった気は全くしない。 そういったシリーズなのかもしれない。お勧め度は、 とします。

July30.2013(N)

No.462

電解質輸液塾

門川俊明  中外医学社(定価3200円+税、2013年4月初版)

 著者自らの言を借りれば、本書のレベルは医学生対象レベルで、初期研修の実践で必要とされる電解質輸液の知識を与えようとする一冊。 分かりやすい。目的も対象も明確である。また、詳細な文献は提示されていないが、巻頭に参考にされた書籍はしっかり紹介されており、 フェアである。ムダをそぎおとし、実践に向いたものだけを厳選し、再配置した上で提示されている。これでもかという姿勢で、初学者、 研修医にクリアカットに分からせようする書籍である。全170ページ前後の本であり、すぐに通読できる。 内容評価は 、 値段は 。 本当に実践的な一冊である。すぐ臨床の場でも使えそう。本当に分かった方が書くとシンプルかつストレートな書籍になるタイミングある気がするが、 そういった一冊である。多分背後に膨大な理屈があるのだろうが、次回に期待してまずは入門編をどうぞ。お勧め度は、 とします。

July29.2013(N)

No.461

心停止における心拍再開後ケア

野々木宏 他編  へるす出版(定価4200円+税、2013年3月初版)

 国立循環器病センターにおられ今は静岡県立総合病院に移られた野々木先生が編集された一冊。 除細動、低体温、救急車内12誘導心電図など大阪の北摂地区を中心に日本に発信できるレベルの臨床研究を多く立ち上げ、結果と残されてきた一部がやっと書籍となったものである。 本書は救急現場で、とくに心肺停止時の対応のスタンダード提供するものである。欧米のガイドライン、日本のものを基本に各病院でどのように具体的な対応を決めているか。 その見直しの一助になるような一冊である。ただ、レベルとしては実際に現場で対応していないと理解しえないような内容である。 でも避けて通れない知識と実践のかたまりの書籍でしょう。 内容評価は 、 値段は 。 蘇生の知識としてはどのレベルまでが必要とされるか、が非循環器専門医にいつも問われる難問であるが、 正直本書は少しその境界線を専門医(循環器または救急医学)よりに超えた気がします。 実践が必要となったときに求められる本としての位置づけが一番でしょう。お勧め度は、 とします。

July28.2013(N)



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