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医学書 ブックレビュー

No.20

関節リウマチのトータルマネジメント

日本リウマチ財団監修  医歯薬出版(定価4200円+税、2011年8月初版)

 昨年改訂されたACR/EULARの関節リウマチの分類基準を始め、日常臨床で必要となる情報を1冊にまとめられて書籍。 歴史から始まり、診断・症状や治療のみならず、診療とケアの実際や指導・教育の実際や支援・制度・福祉などコメディカルまでの領域を すべて含めた内容となっている。読みやすく、かつ、専門外にも理解しやすい。 また、外来診療での注意点など、プライマリケアにとっても必読のアイテムと思われる。 タイトル通りの「トータルマネジメント」が学べるため、 内容評価は 、 値段は 。 日本リウマチ財団監修というお墨付きもあって、お勧め度は、 とします。

Aug.2011(N)

No.19

最新行動経済学入門

真壁昭夫  朝日新書(定価700円+税、2011年7月初版)

 経済を造っているのは人間であるが、人間の行動は「心」によって左右されるため、常に合理的とは限らず時にはバカもする。 こういった観点からの行動経済学の入門書である。ギャンブラーの誤り、ハーディング現象に始まり、 2002年にノーベル経済学賞を受賞したカーネマンとトヴェルスキーのプロスペクト理論など、楽しめる話が理解しやすく語られている。 最終章の行動経済学による教訓集は圧巻である。著者は金融業界から現在信州大学経済学部教授。 行動経済学に興味のある方やこれを医療に応用しようという方には強く薦めます。 内容評価は 、 値段は 。 お勧め度は、 とします。

Aug.2011(N)

No.18

ICU/CCUの薬の考え方、使い方

大野博司  中外医学社(定価6000円+税、2011年2月初版)

 執筆時に卒後10年目である京都の洛和会音羽病院の大野先生の書きたいことが詰まった本です。 存在自体が若手医師、研修医にとってあこがれの的でしょう。以前の感染症の書籍と同様、実務に即した内容であり、 現場ですぐに役立つような事項が満載です。ただ、入門編というより、ある程度臨床経験があるものがより高度な知識を得て、 さらにレベルアップを図ろうとする場合に適切な書籍と思われます。 本音が書かれているため、実務経験があればあるほど、理解しやすく納得できるものになっています。 内容評価は 、 値段は 。 これ位は理解してほしいという願望を込め、お勧め度は、 とします。

Aug.2011(N)

No.17

肝臓病

渡辺純夫  岩波新書(定価760円+税、2011年7月初版)

 順天堂大学消化器内科の教授が一般向けに書いた岩波新書の1冊。 ただ、内容はかなり専門的で、以前の一般書のレベルではない。最近のレベルはネット上で書かれている内容が基準かと思われ、 調べてから病院に来られることがますます多くなっている。 人間ドックの結果の見方、AST の基準のあり方など、医療関係者が読んでも参考になることが多数記載されています。 ここまで書かないと一般の方も満足しないのか、と逆に心配になり、平生より消化器内科関連も学生時に戻って勉強しようという気にさせられる本です。 内容評価は 、 値段は 。 お勧め度は、 とします。

Aug.2011(N)

No.16

誰も教えてくれなかった血算の読み方・考え方

岡田定  医学書院(定価4200円+税、2011年4月初版)

 研修医にとっての教祖のような存在である聖路加国際病院の岡田先生の1冊。 以前の数冊とは違って、研修医向けであり本職の血液内科医としての本領を発揮された書籍です。 冒頭の血算CBCは「臨床検査のバイタルサイン」という言葉通りの基本的な本に見えますが、奥が深くCBCのみでここまで読むか、 考えるか、という内容です。万人に必要なCBCを高度な知識から蘊蓄まで、理解しやすいように料理されているのは、 さすが名シェフの一言です。 内容評価は 、 値段は 。 すべての臨床医のみならず、臨床医に役に立つというオビの言葉通りであり、お勧め度は、 とします。

Aug.2011(N)

No.15

人はなぜだまされるのか

石川幹人  講談社ブルーバックス(定価820円+税、2011年7月初版)

 認知情報論の専門家が進化心理学を使って錯覚という心の不思議を解き明かそうとする1冊。 遺伝子に刻まれた人類共通の心のしくみが進化心理学でよくわかるというものであり、平面を立体的に見ようとするための錯視、 カニッツァの三角、有名な「パスを数えているうちに見失うゴリラ」の実験など、紹介されている内容は楽しいものばかり。 ただ、解釈が中心で実践的な利用方法は余り紹介されていず、残念である。 こういった医療への応用を考えたい方や最近出たシモンズの「錯覚の科学」を読んでもう一冊と思った方を含め、 内容評価は 、 値段は 。 お勧め度は、 とします。

Aug.2011(N)

No.14

感染症専門医テキスト第一部解説編

日本感染症学会 監修  南江堂(定価27,000円+税、2011年5月初版)

 感染症専門医のための基本的な知識を網羅された日本感染症学会監修のテキストの初版2冊の内の解説編。 学会の総力を結集した姿が内容のみならず、執筆者のリストをみてもすごいの一言です。 特にⅢ診断A臨床徴候やC7血液感染の血液培養、Ⅳ化学療法A化学療法の基礎など、すばらしい内容が続きます。 ただ惜しむらくは高価すぎてなかなか購入しにくいのではないでしょうか。 第二部のケーススタディ編と合わせると実際手が出にくいと思います。人から借りてでも、一部でも良いから読まれることをお薦めします。 従って、 内容評価は 、 値段は 。 お勧め度は、 とします。

Aug.2011(N)

No.13

フィッシュ!

スティーヴン・C・ランディン他  早川書房(定価1,200円+税、2000年12月初版)

 1日の3分の1以上を普通は個人個人が就いている職業に時間を費やしている。 仕事は基本的に楽しいわけではない。でも、楽しみたいと思っているわけです。 そこで本書はシアトルの魚市場がどのように活気に満ちたものかを紹介しています。 コツは「態度を選ぶ」「遊ぶ」「人を喜ばせる」「注意を向ける」の4つです。 10年前の少し古い本ですが、現在の病院の再建に当たって、やっぱり「元気」が欲しかった。 みなさんにも少しは元気が出れば、という書籍です。内容は副題の通り「鮮度100%ぴちぴちオフィスのつくり方」なので、 内容評価は 、 値段は 。 お勧め度は、 とします。

Aug.2011(N)

No.12

腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン

日本整形外科学会 監修  南江堂(定価2,600円+税、2011年7月初版)

 日本整形外科学会の診療ガイドラインシリーズの最新刊。 日頃より日常診療においてよく使用する疾患名の腰椎椎間板ヘルニアについての基礎知識から疫学、診断、治療方針や 各種の治療法についての現在の考え方が可能な限りエビデンスに基づき記載されている。 知識の整理のみならず、ポピュラーな疾患の現在のスタンダードを知るには大切な1冊でしょう。 整形外科を専門としないものにも、読みやすいスタイルの編集となっています。 読みやすいガイドラインという書籍のため、 内容評価は 、 値段は 。 知識を少しでも増やすために、お勧め度は、 とします。

Aug.2011(N)

No.11

精神医療に葬られた人びと

織田淳太郎  光文社新書(定価840円+税、2011年7月初版)

 精神病院において長期入院患者が「社会的入院」と変貌している実態を報告した新書の1冊。 著者はノンフィクション作家であり、自身の入院体験を通してわかり得たルポである。 福島原発事故で露呈した双葉病院問題や忘れ去られたライシャワー事件、ヨーロッパ、特にイタリアを中心とした新しい取り組みなど、 要所を押さえた内容であり、実体験からの記載は説得力があります。 日常臨床ではどうしても避けがちな部分をもう一度考えてみるには良い本でしょう。 「治療の必要のない入院者」が知るべきと思われる方を含め、 内容評価は 、 値段は 。 精神医療を再認識させられ、お勧め度は とします。

Aug.2011(N)

No.10

睡眠障害診療ガイド

日本睡眠学会 監修  文光堂(定価3,000円+税、2011年6月初版)

 日本睡眠学会が監修した「睡眠障害を専門としない実地医家の先生やコメディカルスタッフの方々に向けたガイドブックとして、 初めて刊行される」書籍です。睡眠障害は、睡眠時無呼吸症候群を中心に認知度を高め、知らない医療関係者はほぼいなくなった実地と思われます。 ただ、実地で疾患、検査を説明できるか、実際に検査を手伝えるかということになるとまだまだ無理のある状況でしょう。 実際に使える「ガイド」として読むと、この本だけではやはり難しいようです。もう少し実践的な部分があっても、という願望を含め、 内容評価は 、 値段は 。 睡眠医学の大切を知ってもらうために、お勧め度は とします。

Aug.2011(N)

No.9

アスベスト

大島秀利  岩波新書(定価760円+税、2011年7月初版)

 医療関係者であれば必ず学ぶであろうアスベストについて、基礎知識から公害としての考え方、政府の見解、世界の現状をまとめた新書です。 日常生活も脅威に曝されているというのは恐ろしいことです。個人的には病院が立地する「大阪泉南アスベスト国賠訴訟」について詳述されているのが大変参考になりました。 現在でも心配されて来院される方があるからです。結構専門的に記載されているため知識の整理にも役立ちますから、 内容評価は 、 値段は 。 アスベストについて真剣にもう一度考えてみたい方を含め、お勧め度は、 とします。

Aug.2011(N)

No.8

パーフェクト総合診療医(2)原因不明の腹痛診断ガイドブック

林田康男 監修  エクスナレッジ(定価4,200円+税、2011年3月初版)

 プライマリ・ケア医必携をうたうシリーズの第2巻。初期診療という場でのマニュアル、わかりやすい、各項目には専門医よりのコメント、 最後には練習問題付き、が特徴です。 ただ、広く浅くという紙一重の評価につながりやすく、レベルが合わないと時間の無駄になってしまうキライがあります。 胸痛編の第1巻と同様、個人的にはプライマリ・ケアに興味のある医学生に勧めたい書籍です。 第3巻を買うかどうかと、初期・後期研修医以降をターゲットと考えると、 内容評価は 、 値段は 。 一般の後期研修医クラスが読むとして、お勧め度は、 とします。

Aug.2011(N)

No.7

ウチダ式教育再生 街場の大学論

内田樹  角川文庫(定価660円+税、2010年12月初版)

 フランス文学が専門で神戸女学院大学教授である内田樹(たつる)先生のブログ日記をまとめた教育論の1冊。 最近も神戸大岩田先生との対談が雑誌JIMに掲載されていたことは記憶に新しい。 有名な「日本辺境論」でも理解される、独自・独特な視点からの考察はおよびもつかない世界に招待してくれます。 今回は身近な、でも解りにくい大学の姿を聴かせてくれます。 個人的にはFD(Faculty Development= ファカルティ・デベロップメント)の目的を再認識させられた箇所が非常に参考になりました。 ウチダ先生の世界に入るにはやや変化球かも知れませんが、 内容評価は 、 値段は 。 医療は教育と切っても切れない世界ですから、お勧め度は、 とします。

Aug.2011(N)

No.6

パーフェクト総合診療医(1)原因不明の胸痛診断ガイドブック

林田康男 監修  エクスナレッジ(定価4,200円+税、2010年12月初版)

 今はやりの総合診療医、救急医向けの書籍の1冊。初期研修医を対象にしているようですが、 内容はバランスが取れすぎ、逆にとらえどころがない、特徴がないものに見えます。 医学生が試験には役に立たないが実習では参考になる本といった位置づけでしょうか。 最後に付いている練習問題は基本的なレベルです。 何か得たい方が読む本ではなく、入門段階の知識の整理としての利用を考えている方が読むに適したものと思われます。 内容評価は 、 値段は 。 一般の後期研修医クラスが読むとして、お勧め度は、 とします。

Aug.2011(N)

No.5

ジェノサイド

高野和明  角川書店(定価1,890円+税、2011年3月初版)

 今期の直木賞を逃した作品。ちなみに受賞作は池井戸潤さんの「下町ロケット」。 いろいろな読み方ができる本ですが、基本はエンターテイメント小説です。 ただ、「肺胞硬化症」という難治性疾患の話や創薬についてのウンチクなど医療に関連した内容も多く見られます。 個人的には、タイトルのジェノサイドが示すとおり人類の未来への生命倫理的なビジョンについて語っているところに注目しました。 医療倫理の講義にも使えそうなテーマです。 詳細はミステリ要素も豊富なため記載しませんが、 医療としての内容評価は 、 値段は 。 面白い本を読みたい方へのお勧め度は、 とします。

Aug.2011(N)

No.4

笑いーその意味と仕組み

エリック・スマジャ  白水社(定価1,050円+税、2011年5月初版)

 医療に従事しているものにとって、苦しみを持って来られる方々や家族・友人の方の接する上で、 「笑い」の扱い方には気を使うものです。堅苦しい雰囲気は避けたいが、笑いが起こるような状況は時として誤解を与えクレームに繋がります。 一度はどこかで自分なりの「笑い」の意味を考えてみるには良い本でしょう。 パリの精神科医が「人はなぜ。そして何を笑うのか?」を平易に書いています。笑いを誘うテクニックやテーマにも触れられています。 でもやはり一部専門的なため、 内容評価は 、 値段は 、 この本を読んでも「笑えない」のでお勧め度は、 とします。

Aug.2011(N)

No.3

臨床医必携 全身とかゆみ

宮地良樹(編)  診断と治療社(定価3,800円+税、2011年7月初版)

 日常よく遭遇する症状であるが、今ひとつ理解しきれないかゆみ(掻痒)についての医学書籍である。 「たかがかゆみ」について最新の研究成果に基づき、理解しやすい内容が記載されている。 とはいっても、当方は皮膚科の専門医でも、基礎医学の研究員でもなく、内容はかなり高度で「やはり難しい」というのが本音である。 かゆみのメカニズム、臨床分類、抗ヒスタミン薬が効かないときの考え方や対処についてなど、役に立つ内容が満載です。
分担執筆のため、 内容評価は 、 値段は 、 かゆみがテーマなのでお勧め度は とします。

Aug.2011(N)

No.2

仏果を得ず

三浦しをん  双葉文庫

 直木賞作家の三浦さんの3年前出版されたものの文庫化。 文楽、人形浄瑠璃と青春を語っているとのオビ通りの内容です。 解説にも書かれているように、「文楽はしかし、人間の馬鹿さ加減を最終的に肯定する」し、 「今を生きる馬鹿な人間を、肯定してくれます」という本は、日頃からもっと楽な仕事があるのでは、 とか、そこまで勉強しなくても、などとときどき不安になる医療従事者としての弱気を支えてくれます。 少し、元気をもらうには良い本でしょう。文楽のウンチクがつらい方もと考えると、 内容評価は 、 値段は 。 お勧め度は、リズム感良く読みやすいため とします。

Aug.2011(N)

No.1

がん患者の呼吸器症状の緩和に関するガイドライン2011年版

日本緩和医療学会ガイドライン作成委員会 編  金原出版

 日本緩和医療学会が出しているガイドラインの1冊。以前に「がん疼痛の薬物療法」「苦痛緩和のための鎮静」の 2冊と今回同時に「消化器症状」が出版されている。 緩和医療にエビデンスは余り似合わないと感じていましたが、呼吸困難に対してのオピオイドの使用法や酸素療法の考え方など、 かなり根拠が整備されてきたようです。今の病院では最後の地を求めて転院されてくる方が予想以上に多く、 しっかりと勉強しなければ、とあらためて手にとりました。ただⅡ章の背景知識は余計な気がしたため、 内容評価は 、 値段は 。 お勧め度は、読む人を選ぶでしょうから とします。

Aug.2011(N)



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