耳鼻咽喉科・頭頸部外科
耳鼻咽喉科・頭頸部外科概要
『耳鼻科』というと、一般的には耳と鼻の病気をみる医者という印象があると思います。しかし、正確には耳鼻咽喉科・頭頸部外科といい、その名称からもお分かりになるかもしれませんが部位が多岐にわたります。
当科の特徴は、耳鼻咽喉科全般における専門医(日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会:専門医および指導医)に加えて、さらなるスペシャリティーとして、頭頸部がんに対する専門医(日本頭頸部外科学会:頭頸部がん専門医および指導医、日本がん治療認定医機構:認定医)、甲状腺に対する専門医(日本内分泌外科学会:専門医および指導医、日本甲状腺学会:専門医)が在籍しています。また、耳疾患に関しても、耳科手術指導医・専門医と連携して診療を行っております。そのため、耳、鼻・副鼻腔、口腔・唾液腺、咽喉頭、頭頸部外科領域と多岐にわたって対応が可能です。
さらに2025年4月より甲状腺機能障害も対応可能となりました!
治療に関しても、科内で毎週カンファレンスを行って治療方針を検討しており、患者さんと密に話し合ったうえでバランスの取れた医療を提供したいと考えております。
- 日本耳鼻咽喉科学会専門医研修施設
診療内容
1) 頭頸部領域における腫瘍に対する治療
頭頸部領域には、呼吸・咀嚼(噛む)・嚥下(食べ物・飲み物を飲みこむ)・発声・構音(言葉の音を作り出す)といった生活をしていく上で重要な役割を果たす臓器が多く含まれており、障害をうけるとQOL(quality of life; 生活の質)に影響を及ぼします。そのため、頭頸部がんに対する治療では、がんに対する根治性と機能温存のバランスを保つことがとても大事と考えています。
また、頭頸部領域は耳鼻咽喉科・頭頸部外科と他の科との境界領域である場所がいくつかあります。例えば、舌がんを代表とする口腔がんは口腔外科が診療を行っている施設もありますし、甲状腺腫瘍は外科が診療を行っている施設もあります。いずれの領域に対しても当院においては当科で対応しております。
驚くかもしれませんが、甲状腺腫瘍は自覚症状に乏しく、CTや超音波検査で偶発的に見つかることも非常に多いため、当院ではそのような場合は早期に介入できるように積極的に当科受診をすすめております。
甲状腺の手術を耳鼻咽喉科頭頸部外科で行うメリットとしては、手術に伴うリスクの一つである声の神経(反回神経)を術前・術後に詳しく観察できることです。また頸部の手術に慣れているということも挙げられます。
甲状腺腫瘍で初めて来られた患者さんには初診当日に、甲状腺ホルモン、超音波検査、穿刺吸引細胞診まで実施し、できるだけ早く診断するようにしています。
当科の特徴として、以前より頭頸部腫瘍の割合が多く入院症例の30%程度を占めています。治療としては、手術・放射線治療・がん薬物療法(抗がん薬)を症例に応じて行っております。
手術に関しては、術後の合併症として神経麻痺のリスクがある領域には積極的に神経刺激装置を使用しモニタリングを行い、神経麻痺を起こさないように努めています。また、最近では内視鏡の進歩に伴い、早期の咽喉頭癌が発見されることが増えています。そういった場合に、経口的にアプローチできる器具が開発され、当科も常備しており積極的に対応しております(経口的手術 TOS:TransOral Surgery)。
放射線治療は、放射線治療科と共同して治療に携わっております。頭頸部領域はがんの部位と重要臓器が近接しており、そういった場合に正常組織への影響を抑えた強度変調放射線治療(IMRT: intensity modulated radiation therapy)も行っております。
がん薬物療法(抗がん薬)においては、主治医のみならずがん化学療法看護認定看護師・がん専門薬剤師と共に治療を行い患者さんの不安の軽減に努めています。また、症例に応じて、腫瘍内科とも連携をしております。
2) のど(咽頭)の炎症・いびきなどに対する治療
扁桃腺に感染を起こした、急性扁桃炎や扁桃周囲膿瘍などの急性疾患に対しては必要に応じて切開して排膿をしながら抗菌薬など薬による治療を行っております。 また、扁桃炎を繰り返す習慣性扁桃炎(慢性扁桃炎)に対しては積極的に口蓋扁桃摘出術、アデノイド切除術などの手術を行っております。
また、そのほかの病態として、扁桃肥大(扁桃腺が大きいこと)によるいびき症や睡眠時無呼吸症候群や、扁桃病巣感染症といわれる扁桃腺が原因となり、他の臓器に二次的な病気を引き起こす疾患としてIgA腎症や掌蹠膿疱症などがあります。さらに、最近では扁桃肥大が歯科における矯正治療に影響するといわれており、慎重に適応を検討しながら同様の手術を行っております。
3) 鼻の病気(鼻・副鼻腔疾患)に対する治療
副鼻腔炎は鼻詰まりや鼻水が垂れるといった症状が出ます。急性期は抗菌薬などの薬による治療を行いますが、症状の改善が乏しい慢性副鼻腔炎には内視鏡を用いて手術を行います。また、鼻詰まりは副鼻腔炎以外に鼻の軸自体の曲がり(鼻中隔弯曲症)が原因となっていることもあり、それに対しては内視鏡下で鼻中隔矯正術や粘膜下下鼻甲介切除を積極的に行っております。また、鼻副鼻腔は脳や眼といった主要な臓器と近接しており、合併症の予防のために手術中に随時操作している位置が把握できるようにナビゲーションシステムを導入しております。また、好酸球性副鼻腔炎では手術後再発することも多く、患者さんと相談の上抗体による免疫療法を行っております。
4) 声のかすれに対する手術
声のかすれの原因となる声帯ポリープ、ポリープ様声帯等に対して喉頭直達鏡下手術を行っております。また、声帯麻痺症例に対しても本人の希望に応じて局所麻酔下に音声改善手術を行っております。
5)甲状腺機能障害に対する治療
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手術だけではなく、バセドウ病などでは内服薬で治す内科的な治療も行っています。内科的な治療も行うことによって内科と外科の両面から総合的に判断し、患者さんにとって一番良い治療方法を選択しています。バセドウ病の手術には術前の準備が必要ですが、患者さんのタイミングに合わせた日程を調整することも可能です。手術は安全、安心をモットーにしています。
当科では外科的な内分泌外科専門医と内科的な日本甲状腺学会専門医の両方の資格をもつ医師が総合的に判断して、病気の内容についてもわかりやすく説明しています。お気兼ねなくご相談ください。
6) 耳の病気に対する治療
耳手術・めまい難聴センターで対応しております。
7) その他
顔面神経麻痺に対する点滴および内服加療、鼻出血に対する止血処置など行っております。
設備・機器
外来
超音波検査とファイバースコープ
このように外来で椅子に座って超音波検査を行い穿刺吸引細胞診を行います。
術前・術後にファイバースコープで声帯の動きを確認します。
手術室
術中神経モニタリング装置
この機械を用いて術中に反回神経、上喉頭神経外枝を確認し神経の温存に心がけています。






