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循環器内科

TAVR ― 経カテーテル大動脈弁置換術 

TAV in SAV が当院でも可能になりました。

外科手術により大動脈弁置換術で生体弁を植込んだ場合、その耐久性は10~20年と言われ、石灰化や摩耗により徐々に劣化。そして弁が機能不全を起こすと、胸の痛みや息切れ、意識消失などを生じ、再び弁の置換が必要になることがあります。

こうした症例に対する新たな治療法として、TAVinSAVが当院でも受けられることになりました。

高齢であることや呼吸機能の低下などにより、体力的に外科手術の実施が困難な患者さんに対する治療としてTAVIがありますが、TAVinSAVは機能不全を起こした外科生体弁に対し、TAVIと同じくカテーテルで新たな生体弁を植込む治療法です。

 

TAVRとは

 

 TAVRとは、「経カテーテル大動脈弁植え込み術( transcatheter aortic valve replacement)」の略語であり、胸を開かずに、心臓を止めることなく、人工弁を患者さんの心臓に植え込む治療です。

 2002年にヨーロッパで始められ、世界では ヨーロッパと北米を中心に、これまで10万人以上の患者さんが治療を受けられ、術後30日以内の生存率:93~95%、術後1年間の生存率:70~85%という報告があります。日本においても、2010年から2012年にかけて臨床治験が行われ、2013年10月より 保険償還が得られたことで TAVIによる治療が可能となりました。

 

 

TAVRの対象疾患(大動脈弁狭窄症)

 TAVRの対象疾患は重症の大動脈弁狭窄症です。大動脈弁狭窄症とは、心臓の左心室と大動脈を隔てている弁(大動脈弁)の動きが悪くなり、全身に血液を送り出しにくくなる疾患をいいます。

 大動脈弁狭窄症は軽度なものでは症状が現れにくく、他の病気の検査などで見つかる場合がほとんどです。重症になってから発見されることも多く、重症になると狭心症(胸の痛み)、失神、心不全症状(息切れなど)が現れ、治療を行わない場合、狭心症が現れると5年、失神が現れると3年、そして心不全の場合は2年で死亡する可能性があります。

大動脈弁狭窄症

TAVRの対象患者さん

重症の大動脈弁狭窄症で手術が必要となった方で手術のリスクが高い方がTAVRの対象となります。

これまでは、心臓外科手術が必要となった患者さんの手術リスクが高い場合(高齢の方、心臓の開心手術を過去に行った事がある方、全身状態が良くない方、体力の低下を認める方、呼吸機能が低下した方)、手術による治療を断念するケースが少なくありませんでした。
このような、心臓外科手術が困難な患者さんがTAVR治療の対象となります。

● 大動脈弁狭窄症の外科的治療についてはこちら

 

治療法の比較

重度の大動脈弁狭窄症の治療は手術によって大動脈弁を人工弁に置き換える方法(大動脈弁置換術)で行われますが、手術のために大きな傷をつくること・心臓を止めて人工心肺装置を使うことなどが体への大きな負担となるので、高齢の方や他の病気を患っている方では手術が無理だと判断される場合が多くありました。TAVIはそのような状態にある方々に向けた新しい治療法です。

 

 

 

外科治療

TAVR(経心尖アプローチ)

TAVR(経大腿アプローチ)

平均手術時間

5~6時間

3~4時間

2~3時間

平均入院期間

約2週間

約1~2週間

約1週間

人工弁の耐久性

生体弁:10~20年
機械弁:20~30年(半永久的)

長期耐久性の臨床データは現在のところなし

抗凝固療法

生体弁:治療後2~3ヶ月間程度

機械弁:生涯にわたり必要

なし

抗血小板療法

なし

治療後半年間は2剤

その後は1剤を医師の指示の下に応じて内服

 

当院の体制

 TAVRを施行するにあたり、ベルランド総合病院ではハートチームを結成しています。当院の循環器内科、心臓血管外科、麻酔科を中心に、手術室・カテーテル室の看護師、臨床工学技士、放射線技師を含め総勢20名前後で一人の患者さんに対して治療を行っております。患者さん個々で状態が全く違いますので、それぞれの患者さんにとって最善の治療法を提供するため、毎週ハートチームで話し合いの場を設けています。

 

ハイブリッド手術室

 2016年6月に、手術中に血管造影も可能な高性能の放射線投影装置を設置したハイブリット手術室の運用を開始しています。これにより精度の高いカテーテル治療が安全に行えるようになり、不測の事態にも迅速に外科的手術へ移行することが可能です。

TAVIの費用

2013年10月よりTAVRが健康保険適用となりました。また、高額療養費制度をご利用する場合、費用の負担をさらに減らすことが可能です。

健康保険を使用される場合

高額療養費制度を利用される場合

70歳未満 約1,800,000円

70歳未満 約140,000円

70歳以上 約44,400円

70歳以上 約44,400円

※上記はあくまでも概算です。消費税は含まれていません。

 

その他のQ&A

 

Q 希望すればTAVRを受けることができるのですか?

A 手術リスクの高い患者さんであれば、TAVRを受けることが可能です。

TAVRは高齢のために体力が低下している患者さんや、その他の疾患を持つ患者さん等が対象の治療法です。治療の基本は外科手術であるため、ただ単に「手術が嫌だ」と言う理由では治療を受ける事が出来ません。TAVR 治療の必要性につきましては、当院の専門のハートチームで判断致します。

 

Q TAVRの相談をしたい場合はどうしたらよいですか?

A 心臓弁膜症に関するご質問・お問い合わせにつきましては、地域医療連携室等にてご連絡をお受けし、診療科担当医師の外来予約をとるシステムをとっております。かかりつけの医師にご相談ください。

 

Q TAVRが受けられない症例はありますか。

A 以下に該当する患者さんの場合、現時点ではTAVR治療が受けられません。患者さんの状態によってはバルーンカテーテルのみによる大動脈弁カテーテル治療(バルーン大動脈弁拡張術:BAV ※)や手術が可能な場合もあります。

・透析を受けている患者さん(※)
・先天的に大動脈弁が二尖弁の患者さん
・以前に手術を受けた際の人工弁(生体弁)が機能不全の患者さん

※BAVは一般的には局所麻酔で行うため、より重症の患者さんでも治療が可能です。
 但し治療効果は限定的ですので、一度当院までお問い合わせください。
※国内に於いて 、透析を受けている患者さんへの保険適応はされておりません。(2014年2月現在)

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