循環器内科
不整脈
現在、循環器分野における不整脈治療は目覚ましい発展を遂げております。特に多くの患者さんに認められる心房細動に関しては、この20年で根治まで可能となりました。また、ペースメーカーおよび植え込み型除細動器などのデバイス治療においても、テクノロジーの進歩によりよりMRIの撮像が可能となり、遠隔モニタリング(自宅において、デバイス異常などが生じた際にデータ送信するシステム)システムも確立しつつあります。
当院では、可能な限り患者さんに最先端の医療を提供すべく日々精進しております。こちらの説明は近隣のお医者さんから病名を伝えられた際に、ご理解の一助となればと考えております。
★MRI撮像に関しては条件があり、撮影できない場合もございます。
★遠隔モニタリングに関しても古い機種は対応しておりません。
患者さんの症状を緩和することや、命を守れるよう努力しております。
何かございましたら、ぜひ当院外来を受診してください。
★かかりつけ医師からの紹介していただいた方がスムーズに外来診察を行うことができますので、是非かかりつけ医に受診していただき、御相談してください。
不整脈とは
不整脈と言われるものは(頻脈)と(徐脈)に大きく分けられます。
治療に関しても、
Ⅰ:頻脈に対してはアブレーション治療【心筋焼灼術】
Ⅱ:致死的な頻脈性不整脈に対して植え込み型除細動器植え込み術
と大きく分けられます。
Ⅰ:頻脈(アブレーション治療)
アブレーションとは不整脈を起こす、心筋に対し棒状のカテーテルを用いて50度程度の熱を加える治療です。概念的には頻脈の回路または心筋の異常興奮部位を熱して電気的に遮断することです。つまり熱を用いて心筋の異常部位を焼き切り、不整脈を起こさせなくする治療です。
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心房細動
心房細動とは、心房が高頻度に無秩序に興奮してしまい、時に動悸・脳梗塞・心不全などを引き起こす病気であります。高齢者に多く、近年高齢化と共に増加している疾患です。以前は心房細動に対して、薬物療法しかございませんでしたが、現在はアブレーション治療が発展し根治自体も可能となってきております。当院でも年間130例前後(2017年現在)の心房細動アブレーションを行っており、心房細動の根治するため努力しております。
●高周波アブレーション
●クライオアブレーション
クライオアブレーションとは肺静脈に冷凍の風船を押しつけ、冷却により肺静脈を隔離する方法です。2016年4月よりクライオによるアブレーションを開始しており、現在積極的に発作性心房細動に対して使用しております。
発作性心房細動の治療法のひとつとして、Arctic Front Advance冷凍アブレーションカテーテル(バルーンカテーテル)による冷凍アブレーションを2016年5月に導入しました。心房細動に対する新しい治療法であり、当院は実施基準を満たした不整脈専門医研修施設です。
この治療法は、バルーンを肺静脈の入口部に押し当て、約マイナス60度まで冷やし、肺静脈を隔離する方法です。
従来と比較して、短時間での治療が可能であることと、合併症を引き起こす可能性が低いというメリットがあります。
(※この治療はすべての心房細動患者さんに有効ではないため、適応を見極めて実施いたします。)
クライオアブレーションの手技の流れ
バルーンカテーテルを左心房に誘導します。 | |
バルーンを拡張して肺静脈開口部に移動します。 | |
肺静脈開口部を完全に閉塞して、左房と静脈の間の血液の流れを止めます。 閉塞を確認したら、バルーンに液体冷却剤を注入します。冷却剤は気化して、バルーンと接触している肺静脈開口部の組織から、熱を奪います。 そして、心房細動を起こす電流の流れを遮断します。 |
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発作性上室性頻拍症
上室とは心房のことです。つまり、心臓の上の部屋でおきる頻拍症のことで、若年者から高齢者に生じる不整脈です。心房細動より頻度は少ないのですが、「突然始まり、突然止まる。」「1カ月に1回くらいしか起きないけど起きると、脈拍が1分間に150回位になる。」「息を止めたら止まる。」などの特徴があります(時にWPW症候群と言われている患者様もおられます)。こちらの病気に関して、薬物療法も行っておりますが、アブレーションによる根治率が90%以上ありアブレーション治療を勧めております。
X線透視を用いたアブレーションの様子
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心房頻拍 心房粗動
心房で生じる一定のリズムの速い頻脈です。症状も強く出るのが特徴です。心房細動ほどではありませんが、脳梗塞を引き起こす可能性もございますので、血液をサラサラにする必要性があります。心房頻拍・心房粗動と診断された場合は当院へご相談いただければと思います。治療は上記同様にアブレーション治療があります。3Dマッピングシステムを用いて加療いたします。
3Dマッピングシステム
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心室性期外収縮
期外収縮は一般に、予後が良好な疾患でありますが、まれに失神などを引き起こす場合もあります。動悸や心機能低下を引き起こす場合も含め、薬物療法に反応しない場合や、薬物を飲みたくない患者さんには積極的なアブレーション加療を行っております。
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心室頻拍・心室細動
心室頻拍・心室細動に関しては、下記除細動器を含めデバイス治療も選択としてあります。こちらの疾患は予後が悪くなる疾患でもありますので、アブレーション治療・薬物治療・デバイス治療を合わせて行う場合もあります。
Ⅱ:植え込み型除細動器、両心室ペーシング付き除細動器
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植え込み型除細動器
近年AEDの普及により、致死的な不整脈による死亡率が低下しております。これらの致死的な不整脈(心室頻拍症や心室細動)に関して、(発作が生じやすい人)や(一度発作が起きてしまった人)に対して、植え込み型除細動器つまり体内で致死的な不整脈を止める機械を挿入しております。植え込み型除細動器には以下のものがあります。
●経静脈的植え込み型除細動器
以前から植え込みが行われているもので、安定した治療です。心臓に直接電線の挿入するため、誤作動が少なく、ペースメーカー機能も有しております。
●皮下植え込み型除細動器
2016年より植え込みが可能となった、機械です。当院ではすでにプロクター(指導医の先生による指導)が外れ、単独植え込みが可能となっております。利点としては心臓に直接リードを植え込まないため、感染を起こしても抜去が容易であり、リードの断線の恐れが少なく、腕の動きに制限がないなどの利点があり若年者への植え込みには適しております。
★必ずしも、皮下植え込み型除細動器の適応となるとは、限りませんのでご相談ください。
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両心室ペーシング付き除細動器
両心室ペーシングとは、心不全に対する治療法の一つです。植え込み型除細動器に左室リードを1本追加し、致死的な不整脈の治療および心臓の電気の流れを改善する治療法です。重症心不全の方が適応となります。植え込み後も機械の管理と心不全治療の両方を当院でさせて頂きます。
★心電図の波形が適応とならない場合もありますので、担当医とご相談ください。
Ⅲ:ペースメーカー、遠隔モニタリング
ペースメーカー
ペースメーカーは徐脈に対する治療法です。適応となる疾患は、洞不全症候群と房室ブロックです。洞不全症候群とは(洞結節)という脈を司る部位の障害で、脈が遅くなることや、失神を引き起こす病気です。房室ブロックとは心房と心室を繋ぐ(房室結節)という部位が加齢などにより障害され、電気が途絶し、失神や心不全を来す病気です。これらに対して、図のように心房と心室にリードを挿入し、足りない脈を補う治療です。
ペースメーカー挿入後は今まで通り、日常生活が暮らせるようになります。またMRI撮影に関しても以前は禁忌でしたが、現在条件付きではありますが撮像可能となっております。
遠隔モニタリング
当院では積極的にペースメーカー・植え込み型除細動器・両心室ペーシング付き除細動器に対して遠隔モニタリングを導入しております。遠隔モニタリングとはトランスミッターを自宅に持ち帰っていただき、植え込まれたデバイスと毎日通信を行っていただき、不整脈の情報やリード、電池などの状態を確かめるシステムです。こちらのシステムの導入により、日々の異常の早期発見や来院回数を減らせる可能性があります。
Ⅳ:診断デバイス
植え込み型ループレコーダー
植え込み型フープレコーダーとは、とらえられない不整脈に対して、約3年の電池寿命を持つ機械のことです。植え込み時間は5分程度であり外来でも植え込み可能です。
★不整脈が原因と思われる重篤な失神を有し、原因が不明な患者様が適応となります。
以上のような、アブレーション治療およびデバイス治療を行い当科では患者さんの症状を緩和することや、命を守れるよう努力しております。
何かございましたら、ぜひ当院外来を受診してください。
★かかりつけ医師からの紹介していただいた方がスムーズに外来診察を行うことができますので、是非かかりつけ医に受診していただき、御相談してください。
ベルランド総合病院 不整脈グループ
不整脈責任者:坂本 祥吾